相続人の中に未成年者がいる場合
亡くなった本人のお子さんがまだ未成年者であるなど、相続人の中に未成年者がいる場合は、遺産分割を行う際にその人を代理する人間が必要になります。
※令和4年の民法改正により、成人の年齢が20歳から18歳に変更になりました。ここでいう未成年者というのは、18歳未満の人を指しています。
未成年者だと一人では遺産分割に参加できません
未成年者は、あくまで自分一人では法律行為が完全にできない人達なので、遺産分割協議書を作ろうとなった場合は、代わりに法定代理人が署名押印をしなければいけません。
同じ法律行為の中でも、たとえば携帯電話の契約など、外部との契約行為は親が署名押印すればいいのですが、相続だとそうはいきません。
具体的な例で、考えてみましょう。
・母
・未成年者の長男
・未成年者の長女
上記のような場合、2人のお子さんの法定代理人は母親ということになり、母親は自分が相続人であるという立場と、長男の法定代理人でもあるし、長女の法定代理人でもあるという3つの立場を持っていることになります。
それでは遺産分割協議書を作るときには、長男・長女に代わって母親が法定代理人としてそれぞれ母親の名前で署名押印すればいいのかなと考えてしまいそうですが、これは法律上認められません。
これが認められると、子どもの取り分を減らせば母親の取り分が増えるといういわゆる利益相反が生まれてしまい、母親が自分の利益を追求できる状態になってしまいます。
その点を考慮し、母親自身も相続人である以上、あくまで自身の署名押印しかできないようになっているのです。
そうなると、長男も長女も母親が代わりに署名押印ができない以上、法定代理人に署名押印をしてもらえなくなってしまいますので、じゃあ誰に署名押印してもらえばいいのか?となりますよね。
このような場合は、母親に代わって、遺産分割の時だけ代わりに署名押印をしてもらうための「特別代理人」という人を長男・長女それぞれに就けなければいけません。
(同じ人が2人分の特別代理人にはなれないためそれぞれ別の人でないといけません。)
分け方が決まらないと特別代理人の選任ができない
特別代理人は、法定代理人に代わり、未成年者の法律行為の代理を行います。
一般的には祖父母や叔父、叔母など親族の中で選ぶケースが圧倒的に多いです。
手続の進め方としては、誰を特別代理人にするかを決めたうえで、家庭裁判所に申し立てを行い、選任してもらうという流れになります。
しかしその際に、どんな内容の遺産分割協議書を結ぶつもりなのかというのが決まっていないと、特別代理人の選任はできないことになっています。
そのため、単に裁判所に対して「未成年者なので特別代理人をお願いします」というだけではだめです。
申立ては、具体的に「母親、長男、長女で、具体的にこういう分け方をして、こういう内容の遺産分割協議書を作るので、この内容に特別代理人として押印させたいんですけどいいですか?」という形でないといけません。
選任の時点で、遺産分割を済ませたうえで遺産分割協議書まで完成させておく必要があります。
具体的にどう遺産分割をしていくのかという点をしっかりと詰めてからでないと申立てができないことから、法的な専門知識が必要な部分になってきますので、ご本人達だけで手続きを進めていくというのは中々難しいことです。
遺産の分け方にもルールがあるので注意が必要
そして、1つ気を付けないといけないこととして、特別代理人を立てるときの遺産分割協議書の内容は、子どもたちにも法定相続分を確保した内容でないと、裁判所が認めてくれません。
例えば、お父さんが亡くなりました、子どもたちはまだ5歳と3歳なので、お母さんが100%遺産を貰います、子どもたちは貰いません、というのは普通だったらそうしたいと思われるでしょうが、この内容だと裁判所からはノーと言われます。
あくまで子ども達には法定相続分が4分の1ずつあるので、子どもの年齢には関係なく、1円単位で相続分が確保できているということが申立てを行う上での要件となります。
そうなってくると、具体的にいくら渡せばその要件を満たすのか?という点を考えながら遺産分割を行う必要がありますが、預貯金だと単に割り算して分ければいいものの、例えば財産の中に不動産がありましたという場合は、じゃあこの不動産の評価額をいくらと見るのか?など、細かい部分を含めて様々な問題がでてくるので、なかなか簡単に裁判所からのOKは貰えません。
1円単位で相続分を確保するというのは、案外大変な作業になってくるのです。
事前準備から遺産分割協議までサポート
当事務所で特別代理人の申し立てを行う際は、事前準備の部分である遺産分割協議や遺産分割協議書の作成部分から、一貫してサポートを行うことがほとんどです。
1円単位で遺産をどう分けていくかというのを考え、遺産分割協議書を作っていく作業は、やはり専門的な知識が必要になってきますし、ご自身でそこを進めていかれるのは非常に困難で大変です。
相続人の中に未成年者の方がいらっしゃる場合の手続きは、全て弁護士にお任せいただければと思いますので、まずはご相談にいらしてください。