| 年齡 | 70代 |
|---|---|
| ご相談者様の状況 | 相続人本人 |
| 遺産の種類 | 現金・預貯金 |
| ご相談分野 | 遺産分割 |
| 担当弁護士 | 國丸 知宏 |
| 解決までの期間 | 約1年 |
ご相談時の状況
依頼者様は、お母様が亡くなられ、相続人間での話し合いを進める必要があるものの、どのように協議を進めればよいのか分からず、不安を感じておられました。遺産の中心は預貯金であり、分配自体は可能な状況でしたが、生前に誰がどの程度管理・出金をしていたのかについて、相続人間で認識の違いがありました。
相手方は、被相続人の生前に行われた出金や管理について説明を求める一方、依頼者様としては、日常的な生活費や必要経費として支出してきたものであり、相続分の調整対象とすべきかどうかに疑問を感じていました。この点について双方の考え方が食い違い、話し合いが停滞している状況でした。
当事務所の対応
当事務所では、まず被相続人の預金の動きについて、相続開始前後の出金状況を時系列で整理しました。そのうえで、出金の目的が生活費や医療費など被相続人のための支出であるのか、相続人個人の取得と評価され得るのかを切り分けて検討しました。
その結果、相手方が問題視していた出金の多くは、被相続人の生活維持のために必要な支出であり、遺産の先取りや不当取得と評価するのは難しいことが資料から読み取れました。一方で、協議を円滑に進める観点から、当方でも説明可能な範囲の資料整理を行い、相手方に対して出金の趣旨と経緯を丁寧に説明しました。
また、分割方法については、細かな精算を巡って対立を深めるよりも、最終的な取得額が公平になる形で調整する方が現実的であるとの整理を行い、具体的な分配案を提示しました。将来的に調停へ移行した場合の時間的・精神的負担についても説明し、協議による解決のメリットを共有しました。
その結果、相手方も当事務所の説明を踏まえて理解を示し、提示した分割案に合意が得られ、ご相談から1か月という短期間で遺産分割協議書を作成することができました。
解決のポイント
本件のポイントは、出金の事実そのものではなく、その性質をどう評価するかという点にありました。感情的に「使った・使っていない」という議論に終始するのではなく、資料をもとに支出の目的を整理し、法的に問題となる点とならない点を切り分けたことで、協議が前に進みました。
また、すべてを白黒つけようとせず、最終的な分配額のバランスに着目した提案を行ったことで、相続人全員が納得できる形で協議をまとめることができました。
まとめ
相続の協議では、金額の大小よりも、生前の管理や支出をめぐる認識の違いが対立の原因になることが少なくありません。本件のように、事実関係を整理し、法的な評価と現実的な解決策を丁寧に示すことで、調停に進まず協議で解決できるケースもあります。
当事務所では、相続人間の意見の食い違いを整理し、感情論に流されない形で解決へ導くサポートを行っています。話し合いが進まずお困りの方も、ぜひ一度ご相談ください。