| 年齡 | 50代 |
|---|---|
| ご相談者様の状況 | 相続人本人 |
| 遺産の種類 | 不動産・未上場株・現金・預貯金 |
| ご相談分野 | 遺産分割 |
| 担当弁護士 | 國丸 知宏 |
| 解決までの期間 | 約8ヵ月 |
ご相談時の状況
被相続人であるお父様は、長年にわたり複数の会社を経営してこられた方で、非上場株式や不動産、預貯金のほか、数多くの車両、ゴルフ会員権、未払いの役員報酬など、多岐にわたる財産をお持ちでした。
相続人は、ご姉妹と、会社の経営に深く関わっていた長男の3名という構成でした。
お父様の逝去後、会社側の顧問税理士や長男側の弁護士を通じて「遺産目録」や各種資料が提示されましたが、ご姉妹から見ると、生前の生活ぶりや会社の規模に比べて、目録上の財産額が本当に妥当なのか、非上場株式や保有車両などの評価がどのように計算されているのか、会社と個人の財産が混在していないかといった点に強い不安がありました。
また、ご姉妹ご自身やそのご家族も、父の会社との取引や勤務を通じて一定の関わりがあったことから、「発言や働き方によって将来の仕事に影響が出ないか」という心理的な負担も抱えておられました。
「感情的な争いは避けたいが、相続人として正当な取り分をきちんと確保したい」という思いから、ご姉妹は当事務所に遺産分割交渉の代理を依頼されました。
当事務所の対応
当事務所では、まず被相続人の財産の全体像をできる限り正確に把握することを最優先としました。
長男側の弁護士・税理士が作成した遺産目録や決算書、財産評価明細書などを取り寄せ、非上場株式の評価方法や不動産・車両・ゴルフ会員権などの評価がどのように行われているかを詳細に確認しました。特に、会社の株式については、決算内容や将来の収益見通しが評価額に直結するため、当事務所グループ内の税理士・会計の専門家とも連携しながら慎重に検討を進めました。
その過程で、ゴルフ会員権、入院保険金・特約還付金、未払いの取締役報酬など、いくつかの財産が漏れていることが発見され、追加で計上されることになりました。これにより遺産総額は数百万円単位で増額され、最終的な評価額も見直しがなされました。
一方で、ご姉妹としては、長男がすべての事業用資産と会社を承継し、今後も事業を継続していくこと自体については一定の理解を示しておられました。そのため、会社や事業に関わる株式・不動産・車両などはご長男が取得し、ご姉妹には、代償金として相応の金額を支払うという「代償分割」の形で解決を目指すことになりました。
交渉の中では、当初提示されていた代償金額から、非上場株式の再評価や仮決算の内容を踏まえて増額の余地がないかを粘り強く協議しました。その結果、遺産総額の増加分も考慮され、ご姉妹それぞれが受け取る代償金は、当初提案より数千万円引き上げられた金額で最終合意に至りました。
解決にあたってのポイント
今回の案件では、「事業承継を伴う大規模な相続」という性質上、単に遺産を三等分するという発想ではなく、「誰が事業を引き継ぐのか」「その代わりに他の相続人にどの程度の代償金を支払うのか」というバランスのとれた解決が重要となりました。
長男側としては、会社経営を続けるために株式や事業用資産を集中させる必要がありますが、その一方で、ご姉妹にも相続人としての正当な取り分があります。当事務所は、相手方の資料や評価方法を一つ一つ検証しつつ、「この金額であれば、ご姉妹としても納得して将来に踏み出せる」と感じられる水準を探りました。
また、ご姉妹にとっては、「本当に全ての財産が目録に載っているのか」「自分たちに不利な評価になっていないか」という不安が非常に大きかったため、専門家と連携して評価の根拠を丁寧に説明し、交渉の経過も逐一ご報告しました。そのうえで、代償金の増額や目録の修正が実現したことで、最終的にはご本人たちも「できる限りのことをしたうえで納得できる形に落ち着いた」と感じていただくことができました。
まとめ
会社を経営されていた方の相続では、今回のように会社の株式や事業用不動産、車両などが遺産に含まれることが多く、その評価や分け方は非常に複雑になります。特に、事業を承継する相続人と、それ以外の相続人との間で「どこまでが会社のものなのか」「個人財産としてどれくらいの価値があるのか」という認識が食い違うと、大きな紛争に発展しかねません。
当事務所では、このような事業承継が絡む相続案件について、弁護士だけでなく税理士とも連携しながら、財産調査から遺産分割協議、相続税申告まで一貫してサポートしています。
「会社や事業が絡む相続で、何から手をつけてよいか分からない」という方は、ぜひ一度ご相談ください。相続人それぞれの立場と将来の生活を見据えた解決策をご提案いたします。