「遺言書を書いたのはいいものの、どのように保管すれば安全なのだろうか」「自宅にしまっておいて紛失しないか、改ざんされないか心配」遺言書を作成した方からは、こうした声がよく寄せられます。実際、遺言書を適切に保管していなかったことにより、せっかくの遺言書が死後に見つからなかったり、不測の事態で遺言書が消失してしまったりすることもあります。
もくじ
なぜ「遺言書の保管方法」が重要なのか
保管を誤ると起こりうるトラブル
遺言書は、被相続人の生前の意思を表す非常に大切な書類です。しかし、保管場所や保管方法を誤ると、死後に見つからなかったり、第三者に改ざん・破棄されたりして、結果的に遺言が形骸化してしまうリスクがあります。
実際の相談事例から学ぶリスク
当事務所でも「父が亡くなってから遺言書があるはずだと聞いていたが見つからない」「遺言書が出てきたけれど書き直されているような形跡がある」などの相談が寄せられます。遺言書を紛失してしまった場合、または遺言書が改ざんされているという判断になった場合は、遺言書自体が無効となってしまいます。
死後に遺言書が見つからない!?よくあるトラブル事例
1. 親族が存在を知らず廃棄してしまうケース
「実は遺言書があったが、子どもがそれと気づかず捨ててしまった」という相談は意外に多いです。特に古い書類の束の中に紛れていたりすると、よく確認せずにまとめて処分してしまうようなケースが少なくありません。
2. 改ざんや破棄、隠匿をされてしまうケース
相続トラブルが予想されるような家庭環境では、一部の相続人がこっそり遺言書を隠してしまうケースも報告されています。公正証書遺言や法務局で保管されていればこうしたリスクを大幅に抑えられるでしょう。
3. どこに保管されたか分からないまま放置してしまうケース
遺言書が存在するらしいという話は聞いていたが、場所や形式を本人に聞かずに不明なままにしており、結果、相続の際に使えなかったという状況も考えられます。日頃から「遺言書を書いたら保管場所を家族や信頼できる人に伝える」工夫が欠かせません。
安全な保管を実現するポイント
1. 「誰に、いつ、どのように」遺言書の所在を伝えるか
遺言書の存在を完全に秘密にすると、死後に発見されないおそれが高くなります。かといって全相続人に詳細を知らせると、改ざんや破棄のリスクが上がる場合もあります。信頼できる専門家や特定の親族だけに場所を伝え、その人が死後に取り出せるよう準備するのが一つの方法です。
2. 定期的な内容の確認と修正(ライフイベント後の更新)
遺言書を書いても、家族状況や財産内容が変われば内容もアップデートが必要になるかもしれません。保管場所を変えることを含めて、より安全な方法に切り替えたいと考える場合もあるでしょう。ライフイベント(結婚・離婚・再婚・相続人となる人が増えるなど)のたびに内容を確認し、必要に応じて書き直すことが大切です。
3. 遺言執行者の選定と保管の関係性
遺言書を作成するときに、その遺言内容を実行する役割を持つ人を決めておくことができますが(これを遺言執行者と呼びます。)、遺言執行者を弁護士など専門家に依頼すれば、その専門家が遺言の保管を併せて行う場合もあります。執行者があらかじめ遺言書の存在を把握していれば、相続発生時にすぐに動き出せるメリットがありますし、改ざんや紛失の危険も下がります。
遺言書別の保管方法にはどんな形式がある?保管時の注意点も解説
1. 公正証書遺言の場合
公証役場での原本保管
公正証書遺言は作成時点で公証役場に原本が保管されるため、消失や改ざんのリスクが非常に低いのが特徴です。作成する際は、手数料負担のほかに、証人2名が必要となるなどの手間があるものの、一度作ってしまえば保管面での不安はほぼ解消できるほか、作成した遺言書の検認手続も不要となるため相続手続の実務面での手間も大幅に軽減されます。
自宅や当事務所で写しを保管する意義
公正証書遺言は、原本が公証役場にある一方、本人が受け取る正本や謄本をどこにしまうかも考えましょう。自宅の金庫に入れておくのか、貸金庫等に預けるのか、弁護士を遺言執行者にしている場合は弁護士に預けるなど、安全性や紛失リスクを考えて保管場所を決めておきましょう。
関連情報:公正証書遺言の原本、正本、謄本の違い
- 原本・・公証役場で署名・押印する公正証書で外部に持ち出しされないものを指します。
- 正本・・原本と同じ効力を持った公正証書。相続手続のときは正本を使用します。
- 謄本・・原本の写しで、原本と同じ効力は持たない。主に控え・内容確認の目的で使用します。
2. 自筆証書遺言の場合
自筆証書遺言は簡単に作成でき、費用がかからない半面、保管場所をどうするかが課題となります。以下、代表的な保管方法を5つ挙げ、それぞれのメリット・デメリットをご説明します。
自宅での保管
最も手軽なのが自宅の金庫やタンスなどに保管する方法です。家族に場所を明示しておけば見つけてもらいやすい一方、火災や自然災害での消失や、同居親族が意図的に破棄する可能性が高くなることが否定できません。
金融機関の貸金庫での保管
利用料は発生しますが、自宅よりも安全性が高く、消失・破棄リスクも低いことから、銀行の貸金庫を保管に利用する選択肢もあります。ただし、貸金庫自体が相続人に知られていないと死後に開けられないケースもあるため、事前の周知は必要となります。
親族・知人に預ける
遺言書を信頼できる親族や友人に保管してもらう方法です。悪意による改ざんや破棄のリスクは避けられますが、預け先の方が急逝したり、遠方に転居したりなどで適切な保管が難しくなった場合の考慮が必要なほか、消失や紛失のリスクは依然として残ることから、あまりお勧めはできません。
弁護士など専門家に預ける
遺言執行者に弁護士を就けている場合などは、そのまま弁護士事務所に保管してもらうことが後々の遺言執行時にもスムーズですし、安全性や隠匿・改ざんのリスク面でも良いでしょう。
法務局での保管
2019年の法改正でスタートした「自筆証書遺言保管制度」を利用して、法務局で保管する方法です。公正証書遺言と同じく改ざんや紛失のリスクがほぼなくなることに加え、遺言書の検認手続も不要になりますので、相続発生時に速やかに相続手続を進めることができます。ただし、公正証書と違い、法務局では遺言内容の確認は行わないため、遺言書の形式不備は自力で防止する必要があります。
弁護士の立場としては、紛失・改ざんのリスクを可能な限り下げるためにも、自筆証書遺言を作成される際は、弁護士などの専門家もしくは法務局で保管をしたうえで、遺言書の在りかを家族に伝えておくことがよいといえるでしょう。
3. 秘密証書遺言の場合
秘密証書遺言は、内容を伏せたまま封をして公証人の前で「存在証明」だけを受ける形式です。遺言書の存在自体は公証人が証明してくれるため、信頼性は自筆証書より多少増すものの、封書を破られた時点で秘密性が崩れ、改ざんリスクが高まるため、実際には自筆証書遺言と同様の保管方法を考える必要があります。
公正証書遺言と比べて大きなメリットが少なく、秘密を保持したいなら自筆証書遺言を封書にして保管すれば類似の効果が得られるという考え方もあり、秘密証書遺言を選ぶ人は相対的に少ないです。
5. よくある質問Q&A
Q. 「法務局保管制度」は誰でも利用できる?
自筆証書遺言を作成した方であれば、原則として年齢などの制限なく利用できます。ただし、すでに亡くなった方の遺言書を保管する制度ではなく、あくまで「生前に書いた自筆証書遺言を法務局に預ける」ための手続なので、事前に仕組みを理解しておきましょう。
Q. 公正証書遺言でも、家族に何も知らせずに大丈夫?
原本は公証人役場に保管されるので紛失のリスクこそ少ないですが、死後に相続人が遺言書の存在を知らなければ開示されない可能性もあります。信頼できる人に「公正証書遺言を作った」という事実だけでも伝えておくのが望ましいでしょう。
Q. 遺言書が見つからないとき、どうすれば?
自筆証書遺言なら、ご自宅や、貸金庫など遺言書が保管されていそうな場所を手当たり次第に探すしかない場合が多いです。公正証書遺言なら、公証役場に照会をかけると遺言書作成の記録をもとに確認できます。法務局での保管制度を利用している場合は、相続人が法務局で検索手続きを行えます。
Q. 保管先を何度も変更してもいいの?
もちろん変更自体は自由ですし、保管先を変えることで遺言書の内容や形式に影響はありません。ただし、保管先を動かすたびに紛失リスクは生じるのと、変更したあとも相続人に周知しておかないと、死後に見つからない恐れがありますので注意しておきましょう。
まとめ:適切な保管こそ、遺言書を活かすカギ
遺言書は「書けばそれで終わり」ではなく、正しい保管によって、将来の相続の際に効果を発揮します。せっかく遺言書を準備していたのに、それをきちんと使ってもらえなければ非常に惜しいことです。
後々のトラブルを回避し、残されたご家族に負担をかけないためにも、早めにご準備を進めてみてはいかがでしょうか。
当事務所では、弁護士・税理士・司法書士が在籍する総合法律事務所として、「遺言書の作成」から「適切な保管方法の提案」「将来の遺言執行」まで相続全般について一貫してサポートを行っています。もし「遺言書をどこに預けるべきか迷っている」「法務局保管制度ってどう使うの?」などの疑問をお持ちなら、ぜひ初回無料相談をご活用ください。弁護士がご事情を詳しく伺い、最適な遺言書の種類と保管方法をご提案します。