「遺言書を書きたいけど、どの形式を選べばいいのだろうか?」「公正証書、自筆証書、秘密証書ってどう違うの?」──こんな疑問を抱えてはいませんか。遺言書は相続を円滑に進めるうえで重要な役割を果たしますが、その書き方や保管方法は実はさまざま。選ぶ形式によって手間や費用、リスク面に大きな違いが生まれます。本記事では、当事務所の弁護士がそれぞれの遺言書の特徴を解説しながら、自分に合った遺言書を選ぶポイントをわかりやすく整理していきます。
もくじ
遺言書はなぜ必要?その意義と役割
遺言書のメリット
遺言書は、相続が発生した際に「誰に、どの財産を、どれくらい分けるか」を明確に示すだけでなく、残された家族が遺産分割協議で揉める事態を防いでくれる大きな効果があります。特に財産が複数あり、相続人同士の意見が合わないと調整が難航しがちですが、遺言書があれば被相続人の意思として尊重されるため、協議がスムーズに進む可能性が高くなるでしょう。
また、相続人以外の方(たとえば生前にお世話になった知人や介護施設など)に財産を渡したい場合も、遺言書がなければ実現は困難です。遺言書は、ときに「自分の想いを形に残す」ツールとしても大きな役割を持ちます。
遺言書がない場合のリスク
一方、遺言書を作らずに相続が発生した場合、法定相続分に基づいて遺産分割協議を進めることになります。複数の相続人がいるケースで、意見の衝突が起きることは珍しくありません。紛争がこじれると、家庭裁判所での調停や訴訟に発展する可能性もあり、多大な時間と費用、精神的負担がかかるでしょう。こうしたトラブルを回避するためにも、遺言書を準備しておく意味は非常に大きいです。
遺言書の種類:公正証書・自筆証書・秘密証書
まずは、大きく分けて3つある遺言書の形式を簡単に概観しましょう。それぞれ保管方法や作成手続きが異なり、メリット・デメリットもさまざまです。
1. 公正証書遺言
公証人役場で作成する遺言書です。公証人が書式をチェックし、原本を公証役場で保管するため、無効リスクや紛失の心配がほぼありません。費用はかかるものの、最も安全性の高い形式といえるでしょう。
2. 自筆証書遺言
本人が紙とペンを用意し、全文を手書きで作成する方式です。費用や証人を要さない一方、書式不備による遺言自体の無効リスクや紛失・改ざんリスクが大きいのが難点。最近は法務局で自筆証書遺言を保管してくれる制度が始まり、多少安全性が高まりました。
3. 秘密証書遺言
内容を秘密に保ちながら、公証人の前でその遺言書の存在だけを証明してもらう方式です。自筆証書遺言と似ていますが、公正証書ほどの保管保証はなく、結局は自分で書式や保管に気を配る必要があります。
公正証書遺言:内容含めて最も確実な方法
作成手順と費用
公正証書遺言を作成するには、以下のようなステップを踏みます。
必要書類の準備
遺言書を作成する本人の本人確認書類や相続人との関係性が分かる戸籍、固定資産税評価証明書や預貯金残高証明などの財産を特定できる書類など、必要書類を揃えます。
公証人との事前やり取り
公証人に遺言内容を伝え、遺言内容が法的に問題ないかを確認してもらいながら遺言書の内容を確定します。
公証役場での遺言書作成
確定した遺言内容にて、証人2名以上を確保して公証役場で公正証書遺言を作成します。
メリット:形式不備の心配がほぼないこと
公正証書遺言最大の利点は、遺言無効リスクが極めて低いことです。公証人が法律に則った書式をチェックし、原本を公証役場で保管するため、改ざんや紛失の恐れもほぼありません。将来、遺言執行するときに家庭裁判所の検認も不要なので、手続きがスムーズに進みやすいです。
デメリット:手数料と証人確保の手間がかかること
公正証書遺言を作成するには、遺言によって相続させる財産の額に応じた公正証書作成手数料が必要です。また、証人2名の立会いが求められるため、証人がいなければ作成できない点に注意しましょう。証人をどう確保するか、費用をどう賄うかが作成時の大きな課題となります。(適当な証人が見当たらない場合は公証役場側で紹介をしてもらうことも可能ではあります。)
自筆証書遺言:費用ゼロで作れるがリスクも
自筆証書遺言の基本と作成ルール
自筆証書遺言は、遺言内容の全文を手書きし、日付や署名、押印を法的に正しい形で記載する必要があります。パソコンで作成した文章を一部貼り付けるなどは無効となるほか、ほんの些細な書式ミスでも遺言書自体が無効となるため、形式不備には細心の注意を払う必要があります。
法務局保管制度の活用
2019年の制度改正により、自筆証書遺言を法務局で保管してもらえるようになりました。これにより、紛失や改ざんのリスクを大幅に減らせるうえ、相続発生時の検認手続が不要となります。とはいえ、内容の書式チェックは行われないため、自力で方式不備を防がなければならない点には変わりありません。
書式の不備と検認手続の注意点
法務局で保管しない場合、自筆証書遺言は「検認」という手続きを受けなければ効力を発揮しません。この検認手続は必ず家庭裁判所で行う必要があり、一定の時間を要するため相続発生後には速やかに検認申立手続きを行いましょう。
秘密証書遺言:内容を隠して公証人が立ち合う形式
特徴と作成手順
秘密証書遺言は、自筆証書と同様に内容を本人が自由に書く方式ですが、署名押印したうえで封印し、その状態で公証人と証人に「遺言書が存在する」事実を証明してもらいます。こうして公正証書をつけ加えることで、存在証明はできるものの、中身を公証人が確認しないため、方式不備はチェックされません。
公正証書ほど安全ではない?
内容を秘密に保ちたいというニーズがある反面、秘密証書遺言は公正証書ほどの安全性はありません。封を破られれば改ざんの可能性があり、相続発生時には検認手続も必要になります。結果として自筆証書と同レベルのリスクが残るため、実務では利用例があまり多くないのが現状です。
どんな人に適しているか
「公正証書ほど費用や手間はかけたくないが、内容を第三者に知られたくない」という方が選ぶ傾向にあります。ただし、無効リスクや紛失リスクは依然として残るため、その辺りを比較検討したうえで選択することが大切です。
自分に合った遺言書の選び方
財産規模・相続人の状況
資産が多かったり、不動産が複数あったりすると、相続で揉めやすい傾向があります。こうした場合は公正証書遺言で安全策をとるのが主流です。逆に、比較的シンプルな財産内容で費用を抑えたいのであれば、自筆証書遺言や秘密証書遺言も検討できます。
紛失・改ざんリスクへの考え方
「自宅で保管するのは不安」「死後に見つからず、無効になるのが怖い」という場合は、公証人役場での保管制度や法務局の保管を活用しましょう。紙のままタンスなどに入れておくのは、改ざんリスクや自然災害含めて紛失リスクが高いです。
費用や手間、自由度の比較
上記でお伝えさせていただいたメリット・デメリットをまとめると、以下のようになります。ご自身で重視されたいポイントを踏まえて、自分に合った遺言書の作成方法を検討してください。
また、上記を踏まえて作成方法に悩まれている場合には、専門家の無料相談をご活用されることもおすすめします。
■費用重視→自筆証書や秘密証書
■安全性重視→公正証書
■自由度重視→何度でも書き換え可能な自筆証書
■工数重視→手間を削減できる公正証書
遺言書を作るうえで気を付けておきたい実務的なポイント
財産・相続人調査の重要性
遺言書を作る前には、どの程度の財産があり、相続人は何人いるのかを正確に把握しましょう。不動産や銀行口座の情報はもちろん、生命保険や貸金庫の有無など、漏れがあると遺言内容にも影響がでるため正確な把握が不可欠です。
遺言執行者の指定をどうするか
遺言書には「遺言執行者」を明記しておくと、将来の執行手続が円滑になります。遺言執行者とは、遺言書の内容に沿って相続手続を実行する役割と権限を持つ人のことです。弁護士など専門家を指定することもでき、一定の費用は見込まれますが相続人の手間と紛争リスクが大きく減らせるメリットがあります。
遺言書の見直し・変更のタイミング
遺言書は一度作ったら終わりではなく、ライフイベント(結婚、離婚、相続人の増減、財産の大幅な変動)ごとに内容を見直すことが重要です。なお、遺言書を作り替えた際は、過去の遺言書は間違いなく廃棄をしておくことが必要です(後々、どれが有効かの争いになる可能性があります。)
遺言書についてのよくある質問Q&A
Q. 遺言書はいつ書くのがベスト?
判断能力がしっかりしているうちであれば、早いうちに作っておくのがベストです。病気や高齢化で判断能力が低下してからでは、遺言書の作成ができなくなるほか、判断能力に疑問が生じた時期に作成した遺言書については無効とされるリスクが高まります。
Q. 複数の遺言書が出てきたらどうなる?
通常は一番新しい日付の遺言書が優先されます。古い遺言を完全に撤回する旨を新しい遺言に明記しておかないと紛争の原因になることもありますので、2通目以降の遺言書を作成する際はその旨を明記したうえで、古い遺言書は破棄をしておきましょう。
Q. 遺言執行者の費用は高い?
遺言執行費用は相続財産の内容や価額によって変動します。弁護士や司法書士に依頼する場合は、財産評価額に比例して報酬が算定されることが多いですが、その分専門家ならトラブル予防や手続きの効率化が期待できるでしょう。
Q. 家族信託と遺言書はどちらを優先してやるべき?
家族信託は財産管理の側面が強く、受託者へ財産を移したうえで運用・管理を行う仕組みです。一方、遺言書は死後の財産分配を決めるもの。両者を併用する場合も多く、信託で補完しつつ遺言書で最終的な相続の意志を示す形が適しています。
Q. 遺留分は遺言書で無視できるのか?
基本的に、遺留分は法律で最低限保証された取り分なので、遺言書で完全に無視することはできません。遺留分が侵害されている相続人は、遺留分侵害額請求にて最低限の相続分を請求することができます。紛争リスクを下げたいなら、遺留分を考慮したうえで財産分配を検討するか、遺留分を放棄してもらう手続きを生前に行う必要があります。
まとめ:早めの遺言書作成が安心と家族の負担軽減につながる
遺言書は、公正証書・自筆証書・秘密証書という3つの形式から選べ、それぞれにメリットとデメリットが存在します。財産や相続人の状況に応じて、最適な遺言書を作成することが、紛争回避や家族の負担軽減につながるでしょう。また、認知症リスクを視野に入れて早い段階から準備することで、法定後見制度の利用や遺言執行者の指定もスムーズに行えます。
当事務所(弁護士法人Nexill&Partners)グループでは、弁護士・税理士・司法書士によるワンストップでの対応を行っており、遺言書作成のほかにも遺言執行、相続税申告、成年後見など、相続にまつわるあらゆる手続きを一括サポートしております。
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