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コラム

相続・生前贈与で家の名義変更をするときにかかる税金は?手続きの流れや費用、どっちがお得かを専門家が徹底解説

2026.01.19

家の名義を親から子へ変更する際は「相続」と「生前贈与」のどちらが望ましいのでしょうか。相続であれば相続税、生前贈与であれば贈与税が課税されますが、それぞれ控除額や税率、手続きにかかる登録免許税などの諸費用が異なります。本記事では、相続と生前贈与それぞれのケースにおける税金の仕組みやメリット・デメリット、登記手続きのポイントについて専門的な視点からわかりやすく解説します。

第1章 「相続」と「贈与」の名義変更の基礎知識

1-1 被相続人が亡くなったことによる「相続」

家を所有していた方(被相続人)が亡くなった場合、その家は相続人に引き継がれます。このときに行う名義変更を相続登記と呼びます。相続は人の死によって自動的に発生するものですが、登記の手続き自体は自動では行われません。誰がその家を引き継ぐのかを話し合う遺産分割協議を経て、初めて名義を書き換えることが可能になります。

相続登記を放置することの法的・実務的リスク

「手続きが面倒だから」「費用がかかるから」といった理由で相続登記を放置していると、困った事態を招くおそれがあります。例えば、名義人が亡くなった後にさらにその相続人が亡くなる「数次(すうじ)相続」が発生すると、相続の関係者が膨大になり、遺産分割・登記手続などの相続手続が難航する原因となってしまいます。
また、2024年4月からは相続登記が法律で義務化されており、正当な理由なく放置すると過料(行政上の義務違反に対する金銭的なペナルティ)の対象となる可能性もあります。

1-2 生前に親から子などへ譲り渡す「生前贈与」

持ち主が存命のうちに、無償で財産を譲り渡すのが生前贈与です。相続とは異なり、贈与者(あげる人)と受贈者(もらう人)の合意があれば、いつでも好きなタイミングで名義を変更できるのが特徴です。ただし、対価を支払わずに不動産を譲り受けるため、後述する贈与税の負担が重くなる可能性がある点には注意が必要です。

第2章 相続で家の名義変更(相続登記)をする際にかかる費用の基礎知識

相続によって家を引き継ぐ場合、国に納める税金は大きく分けて「相続税」と「登録免許税」の2種類があります。

2-1 相続税の仕組み:基礎控除と課税対象の計算

相続税は、亡くなった人の全財産が一定の基準(基礎控除額)を超える場合に課税される税金です。基礎控除額は「3,000万円 +(600万円×法定相続人の数)」という計算式で求められます。例えば、相続人が子ども2人の場合、基礎控除額は4,200万円となります。
家の評価額や預貯金の合計がこの金額を超えない限り、相続税は発生しません。

居住用不動産の評価を最大80%減額できる「小規模宅地等の特例」

家を相続する際、効果的な節税策となるのが「小規模宅地等の特例」です。これは、被相続人が住んでいた自宅の土地について、一定の要件を満たす相続人が引き継ぐ場合、330平方メートルまでの部分について土地の評価額を80%減額できるという制度です。
例えば土地の評価額が5,000万円であっても、この特例が適用されれば1,000万円として計算されます。ただし、同居していた親族であることや、相続後も住み続けることなど、細かな適用要件が定められているため、特例を使用するかは慎重に判断する必要があります。

配偶者の税額軽減:1億6,000万円まで非課税になる仕組み

亡くなった方の配偶者が遺産を相続する場合、「配偶者の税額軽減」という制度を利用できます。これにより、配偶者が取得した遺産額が「1億6,000万円」または「配偶者の法定相続分」のどちらか多い金額までであれば、配偶者に相続税はかかりません。
ただし、この制度は一次相続(父の死など)で配偶者が多く引き継ぎすぎると、その配偶者が亡くなった時の二次相続(母の死など)で、子どもたちの税負担が重くなる可能性があるため、長期的な視点でのシミュレーションが必要といえます。

2-2 相続における登録免許税:名義変更時に法務局へ納める印紙代の計算

名義変更の手続き(登記)そのものにかかる税金が「登録免許税」です。相続による名義変更の場合、税率は固定資産評価額の0.4%と定められています。計算例として、固定資産税評価額が2,500万円の戸建て住宅の場合、「2,500万円×0.004=10万円」となります。

2-3 相続登記義務化への対応:2024年4月からの新ルール

税金のほか、相続登記を放置することで過料が生じる可能性も無視できません。
2024年4月1日から相続登記が義務化されました。これにより、相続(遺言を含む)によって不動産を取得したことを知った日から3年以内に登記申請をしなければなりません。正当な理由なく放置した場合には、10万円以下の過料が科される可能性があります。また、この義務化は、過去に発生した相続についても対象となります。施行日(2024年4月1日)より前に相続が発生していた不動産については、2027年3月31日までが猶予期間です。「親の名義のまま長年放置している」という不動産がある場合は、速やかに手続きを進めることをおすすめします。

第3章 生前贈与で家の名義変更をする際にかかる税金の基礎知識

生前に名義を変更する場合は、相続税ではなく贈与税の課税対象となります。一般的に贈与税は相続税よりも高い税率が設定されているため、生前贈与の方法を取る場合は税額が高くなる可能性もあるため注意が必要です。

3-1 贈与税:基礎控除・特例活用も要確認

不動産は評価額が数百万円から数千万円になることが多いため、一度に名義を変更すると多額の贈与税が発生します。例えば、評価額2,000万円の土地を子どもに贈与した場合、年間110万の基礎控除や特例税率を適用しても500万円近い贈与税がかかる可能性があります。
そのため、以下のような制度や特例の活用も同時に検討されるのが一般的です。

早期に家を譲りたい場合に有効な「相続時精算課税制度」の活用

「相続時精算課税制度」とは、生前贈与された財産を、贈与者が亡くなった時の相続財産に加算(持ち戻し)して、相続税として精算する制度です。
この制度を選択すると、累計2,500万円までの贈与については贈与税がかかりません。これを超える部分については一律20%の贈与税をいったん納めることになりますが、この税金は将来の相続時に相続税の一部として充当されます。もし相続税の計算結果が支払った贈与税よりも少なければ、差額の還付(返金)を受けることも可能です。
また、2024年1月の法改正により、この制度に年間110万円の「基礎控除」が新設されました。この110万円分については、2,500万円の特別控除枠を減らすことなく非課税で贈与でき、将来の相続財産への加算も不要なため、以前に増して柔軟な資産承継に活用しやすくなったといえます。

相続時精算課税制度の注意点

ただし、一度この制度を選択すると、その贈与者からの贈与については「暦年課税(年間110万円までの基礎控除がある一般的な贈与)」に戻すことができないという重要な注意点があります。そのため適用にあたっては、将来の相続税額をシミュレーションした上での慎重な判断が必要です。

夫婦間での居住用不動産の贈与に関する特例(おしどり贈与)

婚姻期間が20年以上の夫婦間で、居住用不動産(またはその購入資金)を贈与する場合、基礎控除110万円に加えて最高2,000万円までが非課税となる特例があります(贈与税の配偶者控除)。これを利用すれば、配偶者に自宅の名義を移す際の税負担を大幅に軽減できます。
ただし、同じ配偶者からは一度しか利用できない点や、贈与を受けた翌年以降もその家に住み続ける必要があるなどの要件が設けられています。

3-2 不動産取得税:相続ではかからず贈与ではかかる税金

不動産取得税とは、不動産を手に入れた際、一度だけ都道府県に納める税金です。
相続で取得した場合は原則としてかかりませんが、贈与の場合は課税されます(一定の軽減措置や例外が適用されるケースもあります)。
税率は原則4%(現在は軽減措置で土地と住宅は3%を適用)ですが、評価額が大きい不動産では数十万円単位の出費になることもあるため、資金計画に含めておく必要があるといえます。

3-3 贈与における登録免許税:相続時との税率の違い

贈与による名義変更の登録免許税は、固定資産評価額の「2.0%」です。相続の0.4%と比較すると実に5倍の税率です。
先ほど、相続の登録免許税で例にあげた2,500万円の家で計算すると、相続なら10万円で済むところが、贈与なら50万円かかる計算になります。
このように、登記にかかる実費だけをみても、一般的に贈与の方が負担が重くなる傾向にあることを理解しておきましょう。

第4章 「相続」と「生前贈与」はどちらがいい?メリット・デメリットを比較

相続と贈与のどちらの方法を選択すべきかは、単に税金の多さだけでなく、家族の状況や目的によって変わります。

4-1 相続税と贈与税の比較:どちらが安くなるか

一般論としては、多くの場合で相続の方がトータルの税負担が軽くなる傾向があります。
これは、相続税の基礎控除額が贈与税よりも大きく、小規模宅地等の特例などの減税措置が活用できるからです。しかし、将来的に不動産の価格が急騰することが予想される場合や、収益物件(アパートなど)から生じる家賃収入を早めに次世代に移したい場合などは、あえて贈与を行い、将来の相続財産の膨らみを抑えるという方法をとることも相続対策としては有効といえます。

4-2 その他の税金の比較:登録免許税や不動産取得税の差

前述の通り、登録免許税の税率は相続が0.4%、贈与が2.0%です。また、不動産取得税も相続では非課税、贈与は課税です。
純粋な名義変更にかかる諸費用だけを比較すれば、一般的には相続の方が低コストで済むケースが多いといえます。

4-3 紛争リスクの比較:遺産分割協議と生前契約の確実性

相続の場合、複数の相続人がいると誰が家を継ぐかで意見が食い違い、争いに発展することがあります。遺産分割協議がまとまらなければ、名義変更の手続きを進めることはできません。
一方、生前贈与は、親(贈与者)と子(受贈者)の二人の合意があれば名義を移すことができます。特定の子どもに確実に家を残したい場合は、生前贈与の方が意思を反映しやすい手段といえます。ただし、他の兄弟の遺留分を侵害しないよう、バランスを考えることは必要です。

4-4 将来負担の比較:二次相続まで見据えた名義変更のタイミング

例えば、父が亡くなった際に、配偶者である母が自宅を相続するとします。そのときは税金がかからず得をしたように見えますが、後に母が亡くなった際(二次相続)には、子どもたちが母の固有財産と合わせて自宅を相続することになり、結果として一次相続時よりも高額な相続税が課せられるケースは少なくありません。
一方で、一次相続の段階であえて子どもが相続したり、あるいは生前贈与を組み合わせて将来の財産膨張を防いだりすることで、トータルの納税額を抑えられる場合もあります。目先の比較だけでなく、2手先、3手先まで含めた家族全体の資産の推移として、相続と贈与のどちらが最適かをシミュレーションする必要があるといえます。

第5章 税務トラブルを回避するために知っておきたい「みなし贈与」と「空き家の問題」

家の名義変更を検討する際は、形式上の手続きだけでなく、その背後にある実質的なお金の流れも重要です。書類上の名義を変えただけで安心していると、後から予期せぬ税金の通知が届く場合もあります。

5-1 安易な名義変更が「みなし贈与」と判定されるリスク

贈与という言葉を使わずに名義を変更したとしても、実態が贈与と同じであれば、税務署はそれを贈与とみなして課税します。これは「みなし贈与」と呼ばれ、本人が意図していなくても贈与税が課されることになります。たとえば、次のようなケースです。

対価が低すぎる売買や、名義貸しと疑われるケース

親が所有する家を子どもに格安で売却した場合、みなし贈与となる場合があります。たとえば、時価が3,000万円の不動産を500万円で売却した場合、その差額である2,500万円分は「親から子へ利益を与えた」とみなされ、贈与税の対象となる可能性が高いといえます。
ほか、実際には親がお金を出して買った家でありながら、名義だけを子どもにしている名義貸しの状態もリスクが高いケースといえます。

税務署は不動産取得の資金源をチェックしている

税務署は不動産の登記情報を把握しており、特に対価が発生する名義変更の場合、「その資金をどこから捻出したのか」を注視しています。そのため、収入に見合わない高額な不動産を子どもが取得した場合、親からの資金援助(贈与)があったのではないかと疑われることになります。
正当な理由や特例を利用して名義変更を行うのであれば、専門家のサポートなども得ながら適正に申告することが、後々の税務調査等のリスクを軽減し、円滑な手続きを実現するための有効策といえます。

5-2 空き家にする場合の「リスク」と「売却時の特例」

名義変更をした後、その家をどう活用するかによっても税金は変わります。特に、相続や贈与を受けた後に誰も住まずに空き家として放置してしまうと、維持コストがかかるだけでなく、将来売却する際の税負担にも影響を及ぼします。

空き家放置による固定資産税の増税リスク

不動産を所有していると毎年固定資産税がかかります。通常、住宅が建っている土地には住宅用地の特例が適用され、税額が最大6分の1に軽減されています。しかし、適切に管理されていない空き家が特定空家や管理不全空家に指定され、自治体から改善の勧告を受けた場合、この特例の適用が解除され、固定資産税が実質的に跳ね上がってしまうリスクがあります。
名義変更をして所有者となった後は、ただ持っているだけでなく、管理責任と税負担がセットで発生することを理解しておく必要があります。

売却益を控除できる「空き家の3,000万円特別控除」の活用

相続した家(空き家)を売却した際に、売却益から最大3,000万円まで控除できる「空き家の3,000万円特別控除」という制度があります。この特例を適用できれば、売却にかかる所得税を抑えることができます。ただし、適用には「昭和56年5月31日以前に建築されたものであること」「一定の耐震基準を満たすか、更地にして売却すること」など、詳細な要件があります。名義変更の段階で、将来この特例が使える物件かどうかを確認しておくことは重要といえます。

第6章 名義変更の際のチェックポイント

6-1 住宅ローンの残債がある場合の金融機関への確認

住宅ローンが残っている家を勝手に名義変更することは、銀行との契約違反になるおそれがあります。ローンが残っている場合は、必ず事前に金融機関へ相談しましょう。相続の場合は、亡くなった方のローンの残債を相続人が引き継ぐための免責的債務引受といった、銀行との契約手続きが必要になることがあります。

6-2 物件の未登記や土地の境界の確認

古い家の場合、離れや物置が増築されていても登記されていないことがあります。また、土地の境界が隣人と合意できていないケースも少なくありません。名義変更を機に、これらの状態を整理しておくことは、将来の売却や次世代へのスムーズな承継のために有益といえます。

6-3 相続人の確認:予期せぬ相続人はいないか?

親戚付き合いがないから関係ないと思っていても、戸籍をたどると被相続人の認知した子や、養子縁組をしていた親族が見つかることが少なくありません。すべての相続人を確定させずに進めた名義変更は、後から無効を主張されるリスクがあるため、調査は徹底して行う必要があります。

第7章 早めに専門家へ相談を

家の名義変更は、単なる事務手続きではなく、大切な資産を守り、次の世代へ繋ぐための重要な法律行為です。
ご自身で手続きを進めることも不可能ではありませんが、不動産の評価や税務申告の要件判断は非常に複雑です。また、戸籍収集や協議書の作成には正確性が求められます。これらを誤ると、余計な税金を支払うことになったり、親族間で感情的な対立を生んでしまったりすることにもなりかねません。
Nexill&Partners(ネクシル&パートナーズ)グループでは、弁護士・税理士・司法書士が連携し、こうした複雑な問題を一つの窓口で解決するワンストップ体制を整えています。法的な紛争回避から、節税を考慮した税務申告、確実な登記手続きまで、専門家がチームとなってサポートいたします。「具体的に自分の場合はいくら税金がかかるのか」「どの方法が一番いいのか」とお悩みの方はお気軽にご相談ください。

 

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監修者:菰田 泰隆
代表弁護士・税理士・社会保険労務士・行政書士菰田 泰隆

弁護士法人Nexill&Partners

代表弁護士・税理士・社会保険労務士・行政書士菰田 泰隆

  • 2002年
    修猷館高等学校 卒業
  • 2007年
    九州大学法学部 卒業
  • 2010年
    早稲田大学大学院法務研究科 修了
  • 2012年
    弁護士登録
  • 2013年
    菰田法律事務所(現:弁護士法人Nexill&Partners) 開業
  • 2016年
    社労士登録・開業(現:社会保険労務士法人Nexill&Partners)
  • 2016年
    税理士登録・開業(現:税理士法人Nexill&Partners)

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