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コラム

相続登記は弁護士にも依頼できる?司法書士との違いや弁護士に相談すべきケースをわかりやすく解説

2025.11.28

相続が発生したとき、不動産を相続するには「相続登記」が必要です。
相続登記というと司法書士に依頼するイメージが強いかもしれませんが、相続人間で争いがある場合や、分割方法が複雑な場合には、弁護士に相談・依頼すべきケースも少なくありません。
この記事では、相続登記を弁護士に依頼できるのか、司法書士との役割の違いは何か、そしてどのような状況で弁護士に相談すべきかについて、実務的な視点から詳しく解説します。

1. 相続登記とは何か?まずは基本を押さえよう

相続登記とは、被相続人(亡くなった方)名義の不動産を、相続人の名義へ変更するための手続きです。
この登記が済んでいないと、相続人がその不動産を正式に売却したり、担保に入れたりすることができず、実質的には“名義が宙に浮いた状態”になってしまいます。

1-1. 相続登記の目的と必要性(義務化の背景)

相続登記の最大の目的は、不動産の名義人を現実の権利者(=相続人)へ正しく更新することです。
たとえ相続人全員が「この不動産は長男が継ぐ」と合意していたとしても、登記がなされなければ、その合意は対外的には通用しません。
また、2024年4月からは、相続登記が法改正によって義務化されました。
相続開始を知ってから3年以内に登記をしない場合、10万円以下の過料(ペナルティ)が科される可能性があります。
この背景には、相続登記が放置され、何代にもわたって権利関係が複雑化した「所有者不明土地」の問題が深刻化している現実があります。

1-2. 相続登記の基本的な流れ

相続登記の基本的な流れは以下のとおりです。

1. 戸籍や住民票などの必要書類の収集
2. 遺産分割協議の実施(協議が必要な場合)
3. 協議書の作成と相続人全員の実印押印
4. 法務局へ相続登記の申請(登録免許税を納付)
5. 登記完了後、不動産の名義が新しい相続人へ変更される

これらの手続きは、相続人だけでも進められますが、実務的には司法書士への依頼が一般的です。
とはいえ、実はこの過程で弁護士の関与が必要になる場面も少なくありません。
次章以降では、「そもそも弁護士は相続登記に関われるのか?」という点から解説していきます。

2. 弁護士も相続登記に対応できるのか?

相続登記といえば「司法書士に頼むもの」というイメージが一般的かもしれませんが、弁護士も法律上、相続登記の代理を行うことができます。
ただし、司法書士と弁護士では、手続の取り扱い範囲や主たる業務領域に違いがあるため、目的や事案の性質によって依頼先を選ぶことが大切です。

2-1. 弁護士が相続登記に関与できる法的根拠

弁護士は、弁護士法第3条により、「法律事務を取り扱うことができる」と定められており、登記申請代理もその一部として認められています。
したがって、相続登記に限らず、所有権移転登記などを含む登記全般を弁護士が代理して行うことは、法律上問題なく認められています。
ただし、実務上は登記手続を専門的・集中的に扱っているのは司法書士であることから、「登記だけを速やかに処理してほしい」ケースでは、司法書士が多く選ばれているという側面があります。

3. 相続登記で弁護士に相談すべき典型的なケース

相続登記を進めるには、原則として「誰がどの財産を相続するのか」を確定させたうえで、相続人全員の合意に基づいた遺産分割協議書を作成する必要があります。
つまり、遺産分割協議が成立していなければ、そもそも登記を行うことができません。
そのため、以下のように遺産分割協議が成立しない、あるいは成立させられない事情がある場合には、司法書士では対応できず、まずは弁護士への相談が不可欠になります。

3-1. 相続人間で意見が対立し、協議がまとまらない

最もよくある弁護士関与のパターンが、相続人間で遺産の分け方について合意が取れないケースです。
このような場合、登記の前提となる「遺産分割協議書」が作成できないため、相続登記そのものを進めることができません。
つまり、司法書士に登記を依頼しようとしても、「登記に必要な協議が整っていないので受任できない」と断られることになります。
さらに、相続人間で意見が対立している場合、第三者である司法書士は法的アドバイスや交渉、調整を行うことができません。
そのため、代理人として調整や法的主張の整理ができる弁護士の関与が必要となります。

3-2. 相続人の中に意思能力に問題がある人がいる

認知症などにより、遺産分割協議内容を理解・判断できない相続人がいる場合も、協議そのものが進められないので、相続登記もできません。
この場合、家庭裁判所において成年後見人や特別代理人の選任をしたうえで遺産分割を行わなければならないため、主に弁護士の対応領域となってきます。

3-3. 遺言の有効性が争われている(または争われそう)

遺言が存在していても、それが実際に有効であるかどうかに争いがある場合、遺言に基づいた単独相続による登記は危険です。

よくある例
  • 遺言書作成時に被相続人に意思能力がなかったという疑問が生じている
  • 他の相続人が偽造・強要を主張している

このような場合には、弁護士に相談の上で、まずは遺言の有効・無効を確定させる必要があります。

4. トラブルがなくても、弁護士に相談した方がよいケース

相続人間に対立はないものの、「不動産を誰がどのように取得すべきか」で迷っているケースでは、司法書士に登記を依頼する前に、弁護士に分割方針の妥当性やリスクを相談しておくのが安心です。

例えば
  • 誰か1人に不動産を集中させたい(共有を避けたい)
  • 相続税や将来の売却を見越して、最も合理的な登記方針を知りたい
  • 特別受益や寄与分など、法的な調整要素が絡んでいる

このような場面では、登記申請前に方針の法的チェックを受けておくことが有効です。

5. 弁護士と司法書士をどう使い分ければよいのか?

5-1. 登記手続がメインで、協議も争いもない場合 → 司法書士へ

登記申請の準備が整っていて、遺産分割協議もスムーズにまとまっている場合は、そのまま司法書士に依頼してもよいでしょう。

たとえば
  • 相続人が全員同意し、協議書の内容も確定済み
  • 不動産の評価や分割内容に争いがない
  • 単純な名義変更として登記するのみ

5-2. 法的判断や交渉・裁判所対応が絡む場合 → 弁護士へ

一方で、次のような要素が1つでも含まれる場合は、弁護士の関与が必要になります。

  • 相続人間で分割内容に意見の相違がある
  • 法的な争点(遺言の有効性、遺留分や寄与分など)を含む
  • 家庭裁判所での調停・審判対応が必要
  • 成年後見や不在者財産管理人の選任など、申立てを伴う

司法書士は原則として当事者間の代理交渉や調停対応、裁判代理ができないため、争いが生じている、または生じる可能性がある場合には、弁護士が適任です。

5-3. 税金の影響も考慮したいとき → 弁護士+税理士との連携体制を

相続登記において、不動産の取得方法や分割内容によって、相続税や贈与税、将来の譲渡所得税に大きな影響が出ることがあります。
そのため、次のような視点が必要な場合には、税理士との連携が不可欠です。

  • 代償分割や共有解消により課税関係が生じる
  • 遺産分割方法により納税資金や特例適用の有無が変わる
  • 不動産売却や二次相続まで見据えた設計が必要

当事務所のように弁護士・税理士が連携している法律事務所もありますので、税金について疑問や相談がある場合は、税務面のフォローができるような事務所を選ばれるとよりスムーズでしょう。

5-4. 判断に迷った場合のおすすめの順番

相談先に迷ったときは、以下のような判断フローを参考にしてください。

1. トラブルや争点が一切ない

司法書士へ

2. トラブルはないが、制度や税務に不安がある

弁護士に予防相談

3. すでに揉めている or 家庭裁判所対応が必要

弁護士へ

4. 税金や二次相続、売却を視野に入れている

弁護士、税理士に相談

当事務所では、弁護士・司法書士・税理士が連携した相続ワンストップ体制により、相続登記だけでなく、相続全体の設計とその先の対策までを総合的に支援しています。
まずは一度ご相談ください。

 

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監修者:池本 稔洋
弁護士池本 稔洋

弁護士法人Nexill&Partners

弁護士池本 稔洋

  • 2017年3月
    兵庫県立星陵高等学校 卒業
  • 2021年3月
    神戸大学法学部 法律学科 卒業
  • 2023年3月
    神戸大学法科大学院 修了
  • 2025年4月
    弁護士法人Nexill&Partners 入所

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