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相続税法改正で課税期間が『7年』に拡大!? 生前贈与についての注意点を専門家が解説

2021.01.15

「生前贈与を活用して相続税を減らせる」という話を耳にしたことはありませんか?

法改正により、令和6年1月1日以降の贈与からは「亡くなる前3年だけでなく、7年以内の贈与まで相続税に加算される見込み」になり、今後はこれまで以上に慎重な検討が必要になりそうです。
本記事では、生前贈与加算の仕組みに加え、令和6年からの法改正との関係、そして具体的にどんなケースが対象となるのかについて、弁護士の視点から解説します。加えて、生前贈与が相続税対策として本当に有効なのか、法定相続人以外(孫など)への贈与のポイントも取り上げながら、対策を考えるうえでの注意点をまとめました。当事務所では、弁護士だけでなく税理士・司法書士も連携し、法的・税務的な観点から生前贈与や相続税対策を総合的にサポート可能です。ぜひ最後までご覧いただき、相続税対策に役立ててください。

1.法改正でどう変わった?相続税の生前贈与加算の概要

相続税には、「生前贈与加算」と呼ばれる仕組みが存在し、被相続人(亡くなった方)が相続開始前の一定期間内に贈与した財産は、受贈者が相続人である場合、相続税計算において課税価格に加算されることになっています。

元々この期間は3年だったのですが、法改正により、令和6年1月1日以降は、従来の「相続開始前3年以内の贈与」だけでなく、「相続開始前7年以内の贈与」について加算されるようになりました。

なお、この法改正には経過措置があり、令和6年1月1日以降に開始する相続・遺贈から段階的に適用されることになっています。

  • 令和5年12月31日以前の相続開始:3年以内の贈与に対して加算
  • 令和6年1月1日~令和8年12月31日の相続開始:3年以内の贈与に対して加算
  • 令和9年1月1日~令和12年12月31日の相続開始:令和6年1月1日~相続開始日以内の贈与に対して加算
  • 令和13年1月1日以降の相続開始:7年以内の贈与に対して加算

生前贈与加算は、亡くなる直前に大量の財産を贈与して、相続税の計算から外すことを防ぐための制度ですので、今回の法改正により、より長い期間さかのぼって贈与の事実を把握できるようになります。
実際にどの程度の贈与が加算されるかは、相続税法第19条などによって規定されており、生前贈与の有無をしっかり確認しないと、想定外の相続税が課せられる可能性があります。

この仕組みを知らずに、生前に贈与した財産がそのまま相続税から外れると考えてしまう方も少なくありませんので、加算対象があるかどうかをきちんとチェックする必要があります。

2.具体的な対象者と対象財産について

2-1.どんな相続人が対象になるのか

「相続(または遺贈)により財産を取得した人」で、かつ被相続人から3年(令和6年以降は7年)以内に贈与を受けた人が加算の対象です。

たとえば、長男や長女、配偶者(一定の特例あり)など、法定相続人と認められる人が贈与を受けていた場合に加算されることが多いです。
ただし、受贈者が法定相続人に該当しない(例:知人や遠い親戚)の場合は加算の対象とならないことがあります。事前に「誰が相続人になり得るか」の確認が重要です。

2-2.現金・不動産など、贈与対象財産の種類

加算の対象となる財産は、原則として金銭や不動産、株式など贈与されたあらゆる資産が該当します。現金だけでなく、土地や建物などの不動産、あるいは有価証券なども、対象財産として相続税に加算される可能性があるため注意してください。

3.7年以内の贈与が相続税に加算されるケース

3-1.遺言書と贈与が同時に考えられている場合

被相続人が生前に「遺言書を作成しているが、同時に生前贈与も行っていた」というケースは少なくありません。たとえば「この子には自宅を相続させ、長男には現金を贈与しておく」などの状況です。遺言書の内容と生前贈与の整合性をきちんと確認せずに贈与を行うと、結果として相続税の計算が複雑になったり、他の相続人とのトラブルが生じたりする場合があります。

3-2.名義預金や名義株に注意

生前贈与の形をとっていても、実質的に被相続人が管理していた預金・株式の場合は「名義預金」「名義株」とみなされ、贈与が有効と認められない可能性があります。名義だけを相続人に変えても、被相続人本人が自由に引き出し・管理をしていると判断されると、課税対象として扱われることがあるので、十分な注意が必要です。

4.孫への贈与は有利なの?相続税法第19条の解説ポイント

1.相続税法19条(相続開始前7年以内の贈与加算)

相続税法第19条においては、次のように規定されています。

[相続又は遺贈により財産を取得した者が当該相続の開始前七年以内に当該相続に係る被相続人から贈与により財産を取得したことがある場合においては、その者については、当該贈与により取得した財産の価額を相続税の課税価格に加算した価額を相続税の課税価格とみなし、第十五条から前条までの規定を適用して算出した金額をもつて、その納付すべき相続税額とする。(括弧内省略)]

少し分かりづらいので、噛み砕いてみましょう。

[相続または遺贈により財産を取得した人が、その相続の開始前7年以内にその相続に係る被相続人から財産を贈与によって取得したことがある場合には、その贈与により取得した財産の価額を相続税の課税価格に加算した価額を、相続税の課税価格とみなして、第十五条から前条までの規定を適用して算出した金額が、その納付相続税額とする。]

2.世間の誤解として

条文はさておき「要は7年以内にされた贈与についてはなかったものとして相続財産に足し戻すのね」と解釈される方が多いです。
財産をもらう人が妻であっても子であっても孫であっても・・・・。
ちょっとお待ちください。もう一度上記1の条文をご覧ください。

3.条文をよく読んでみると

条文の出だしですが、「相続または遺贈により財産を取得した人が・・」となっております。
ポイントは、「相続または遺贈により・・」のところです。
仮にある被相続人(お亡くなりになられた方)の親族関係が下記のような場合、7年以内加算はどうなるのでしょうか。

【例】

  • ①夫(被相続人)
  • ②妻(法定相続人)
  • ③長男(法定相続人)
  • ④孫(長男の子:法定相続人以外)
  • (※注)遺言書なし

    この場合、相続開始前7年以内に法定相続人に対してなされた贈与は加算の対象となりますが、④孫については、法定相続人でないため7年以内加算の対象外になります。
    よく相続セミナーや雑誌等で、「孫への贈与は有利である」というのは、たとえ3年以内の贈与であっても加算の対象とならず相続財産を減らすことができるところにあります。
    ポイントは、法定相続人以外の贈与であるため、長男のお嫁さんに対する贈与も7年以内贈与加算の対象外になります。

    4.孫への贈与は無条件に7年以内贈与加算の対象外??

    ここまで読まれた方は、「孫への贈与は3年贈与加算の対象外!」ということにつきご理解いただけたかと思います。
    ただ、お孫さんへの贈与であっても、法定相続人と同様に7年以内加算の対象となることがあります。

    5.孫でも7年以内贈与加算の対象となる場合

    一つは、遺言書で孫に財産を遺贈すると記載されている場合です。
    条文での「相続または遺贈により財産を・・」の「遺贈により」に該当するため加算の対象となります。
    もう一つは、死亡保険金の受取人が孫になっている場合です。
    法定相続人以外が、死亡保険金の受取人となっている場合には、「みなし遺贈」となりこれもまた7年以内加算の対象となります。

    また、先ほどご説明したとおり、名義預金であると判断された場合は課税対象になってしまいますので、孫への贈与が名義預金とみなされないように、きちんと贈与の要件に当てはまっているかの確認も重要となります。

    5.贈与加算の例外となる場合

    5-1.結婚・子育て資金の一括贈与など特例制度

    国の制度として、結婚・子育て資金の一括贈与や教育資金の一括贈与に関する非課税特例などが存在します。これらの制度を使う場合、一定の要件を満たせば「生前贈与加算」の対象外となるケースもあります。ただし、制度ごとにさまざまな制限や手続きがあるため、必ず事前に最新の情報を確認しましょう。

    5-2.贈与加算が及ばない範囲

    たとえば相続発生前の7年を超える期間に贈与された財産は、原則として加算されません。また、前述の通り相続人以外へ贈与した財産については加算対象にならないのが基本です。ただし実際には、上記の名義預金・名義株問題や実質的な管理権がどこにあったかなど、詳細に検討が必要となる場面もあるため、不安なときは専門家へ相談しましょう。

    6.生前贈与と組み合わせたい相続税対策の考え方

    6-1.小規模宅地等の特例や相続時精算課税制度

    相続税の負担を軽減する方法としては、小規模宅地等の特例を活用して自宅敷地や事業用宅地に係る課税評価額を大幅に圧縮する方法や、相続時精算課税制度を活用して一度に2,500万円までの贈与を非課税扱いとし、最終的に相続時にまとめて精算する手続きなどがあります。生前贈与加算とは別枠の概念として設けられているため、組み合わせて使うことで効果的な節税が可能になるケースもあります。

    6-2.生命保険活用など、他の節税策との組み合わせ

    生命保険金の非課税枠を利用して、受取人1人あたり「500万円×法定相続人の数」が非課税になる特例も有名です。生前贈与だけに頼らず、ほかの節税策とバランスよく組み合わせることで、より最適な相続税対策を立案できます。資産の内容や家族構成によって最適解は異なるため、まずは弁護士や税理士といった専門家への相談が望ましいでしょう。

    6-3.生前贈与の減税メリットは完全に失われるわけではない

    加算対象期間が7年に延びても、完全に生前贈与メリットが消えるわけではありません。遺産そのものの評価額をどう圧縮するか、贈与税の非課税枠をどう活用するかなど、ほかの優遇策や特例制度との組み合わせで、十分に相続税の軽減が可能な場面もあります。ただし、改正内容を誤解してしまうと、想定以上に相続税が増えるリスクがあります。必ず専門家へ相談して、最新の法令や経過措置を踏まえたうえで生前贈与のプランを作成しましょう。

    7.当事務所に相談するメリット

    当事務所では相続に特化した弁護士を中心に、税理士・司法書士も一緒に業務に当たっており、このようなワンストップでのサポート体制には下記のようなメリットがあります。

    (1)法務と税務の両面から検討できる
    単に生前贈与を行うかどうかだけでなく、その後の相続全体のスキーム、遺言書の作成要否、相続時の税負担など多角的に検討が可能です。

    (2)税申告や不動産登記までカバー
    税理士法人や司法書士法人も併設しているため、贈与税申告や贈与登記関連の手続きも一括で進められます。

    一方で、贈与計画相続税対策は状況によっては複雑になりがちです。さらに、名義預金や遺留分に関する問題など、専門家のチェックを要する要素も多く含まれます。誤った手法や独断での贈与は、後から「加算」が発生して相続税額が高くなったり、親族内で予期せぬ争いが起きたりするリスクがあります。ぜひ早めにご相談いただき、慎重なプランニングを進めていただくことをお勧めします。

    8.まとめ:7年以内の生前贈与を正しく理解し、早めに専門家へ相談を

    安易に「生前贈与をすれば税金が安くなる」と考えてしまうと、思わぬ落とし穴となり得ます。一方で、的確に贈与のタイミングや方法を選べば、有効な相続税対策につながるのも事実です。

    当事務所では、相続・生前贈与に強い弁護士が税理士・司法書士と協力してサポートを行います。「どの程度の財産をいつ贈与するのがベストか」「名義預金扱いにならないか」「相続開始後の親族間トラブルをどう回避すればいいか」など、不安や疑問をお持ちの方は、お気軽にご相談ください。

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