平成30年7月に相続法が大きく改正され、この改正の1つとして自筆証書遺言を法務局で保管する制度が新設されました。
これまで、自筆証書遺言は遺言者が自宅で保管するのが一般的でしたが、この制度により自筆証書遺言を法務局で保管することが可能となり、自筆証書遺言の保管方法に関しての問題点が大きく改善されました。
遺言書は、相続をめぐって相続人間で問題が発生してしまうのを防止するために非常に有用な手段です。
そして、自筆証書遺言は、自筆できれば遺言者本人のみで作成することができ、公正証書遺言と違って作成費用もかからないため、最も手軽で簡単な方法といえます。
しかし、一般的には遺言者本人が自宅で保管することが多いため、作成後に紛失してしまったり、相続人が改竄又は隠蔽されたりしてしまうおそれもあります。また、遺産分割の終了後に自筆証書遺言が発見され、相続人の間で紛争が長引いてしまう原因になることもあります。
遺言者が公正証書遺言を作成した場合、公正証書遺言は公証役場において厳重に保管されます。
また、作成時に公証人が遺言書の法的有効性について確認を行うため、遺言者の死後に家庭裁判所で検認手続きを行う必要もありません。
このように、公正証書遺言は安全性非常に高い一方で、作成費用が高いこと、手続きに時間がかかること、作成にあたって証人を用意する必要があること等のデメリットがあります。
そこで、自筆証書遺言のメリットを損なうことなく、保管方法に関しての問題点を解消するための取り組みとして、法務局における自筆証書遺言保管制度が創設され、2020年7月10日から施行されました(平成30年法律第73号)。
本制度によって、自筆証書遺言を法務局で保管し、検認手続きを不要にするとともに、相続人が被相続人の死亡後速やかに自筆証書遺言の存在を認識し、内容を確認することができるようになりました。