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コラム

被相続人の海外資産に日本の相続税はかかる?相続人の居住地や国籍による課税範囲など国際相続について弁護士がわかりやすく解説

2026.03.27

相続が発生した際、被相続人の資産に海外の預金や不動産が含まれていると、日本の相続税の対象になるのか判断に迷う場面が生じます。特に、相続人が海外に住んでいたり、外国籍であったりする場合には、どの範囲まで課税されるのかが直感的に分かりにくいところです。本記事では、国籍や居住地といった要素によって課税範囲がどのように変わるのかを整理し、海外資産を含む相続で押さえておくべき判断の枠組みを解説します。

第1章 海外資産は日本の相続税の対象になるのか

1-1 「海外の資産だから非課税」という誤解

海外にある預金や不動産は、日本の相続税とは無関係であると考えられがちですが、それは誤解です。日本の相続税法では、被相続人の資産が日本以外の国外に所在している場合も、原則として相続税の課税対象とする仕組みがとられています。
また、資産が所在する国で、日本の相続税にあたる税金を納めれば日本では不要という認識も正確ではありません。後述する二重課税調整の仕組みはありますが、まずは、被相続人の海外資産についても日本国内の資産と同じように相続税の計算に含める必要があるという前提を理解しておかなくてはなりません。

1-2 相続税の課税範囲は「相続人の住所」で決まるのが原則

日本の相続税の課税範囲は、被相続人の国籍や資産が所在する国ではなく、その資産を受け取る人(相続人)の住所が国内であることや過去の日本での居住状況によって決まります。
基本的な考え方としては、相続人が日本に住所を有している場合には、海外資産も含めて、被相続人のすべての資産が日本の相続税の課税対象となります。一方で、相続人が海外に居住している場合には、すべての資産が日本の相続税の課税対象になるとは限りません。
このように、日本の相続税では原則として、「被相続人の資産がどこにあるか」よりも「相続人がどこに住んでいるか」という点が、課税範囲を判断するうえで重要なポイントとなります。

1-3 資産の所在を特定する基準(預金・不動産・株式)

その資産が「海外資産」に該当するかどうかは、資産の種類ごとに法律上の判断基準が定められています。主な基準は次のとおりです。

預金・不動産・株式の判断基準
資産の種類 所在地の判断基準
預金 預け入れている金融機関の支店の所在地
不動産 その不動産が所在する場所
株式 発行会社の本店所在地
投資信託 運用会社などの主たる事務所の所在地

たとえば、銀行など金融機関の海外支店に預けている預金は海外資産として扱われます。一方で、海外の証券会社を通じて保有している株式であっても、その株式を発行している会社が日本企業であれば国内資産と判断される場合があります。
投資信託についても、保有している口座の所在地ではなく、商品を組成・運用している会社の主たる所在地などを基準に判断されるため、株式と同様に国内財産と評価されるケースがあります。
このように、どこに口座があるか、どの国のサービスを利用しているかといった外形だけでは判断できないケースも少なくありません。課税対象の範囲を正確に把握するためには、資産ごとの判定基準に基づいて個別に整理することが重要です。

第2章 課税範囲を決定する「居住地」の判断基準

2-1 課税範囲の整理と外国籍等が関係する場合の考え方

日本の相続税の課税範囲は、まず相続人が日本に居住しているかどうかで大きく決まります。
相続人が「日本に居住」している場合には、被相続人の居住地や資産の所在にかかわらず、海外資産も含めて課税対象となります。一方、相続人が「海外に居住」している場合には、すべての資産が課税対象になるとは限らず、相続開始前10年以内の日本での居住歴などによって課税範囲が変わります。
主な関係を整理すると、次のとおりです。

相続人 被相続人 課税対象となる相続財産
日本居住 居住国は問わない 国内+海外すべて
現在は海外居住だが、10年以内に日本居住歴あり 居住国は問わない 国内+海外すべて
海外居住(10年以上) 海外居住(10年以上) 国内のみ
海外居住(10年以上) 日本居住(死亡時は海外だが過去10年以内に日本居住歴ありを含む) 国内+海外すべて

※表内の「10年以内および10年以上」とは相続開始があった日を起点とする

よくあるケースを以下で詳しくみていきます。

2-2 相続人が日本居住の場合は海外資産も課税対象となる

相続税の課税範囲を考えるうえで、まず確認すべきなのは、相続人が日本に住所を有しているかどうかです。
先述の通り、相続人が日本に住所を有している場合には、被相続人の居住地や資産の所在国にかかわらず、相続した資産は原則としてすべて相続税の課税対象となります。
つまり、被相続人が海外に居住していて、海外の預金や不動産を保有していたとしても、日本に住んでいる相続人がそれを取得する場合には、原則として日本で相続税の申告が必要となります。

2-3 相続人が海外に住んでいても課税対象が広がるケース

相続人が海外に居住している場合には、海外の資産に関しては日本の相続税の対象外になることがあります。ただし、これが適用されるには、相続人と被相続人の両方が、相続開始があった日から10年以上、海外に住んでいることが条件となります。
たとえば、相続人が現在は海外に住んでいても、相続開始前10年以内に日本に住所を有していた場合は、海外資産も日本の相続税の課税対象になることがあります。
この10年ルールは、相続税の負担を回避するために短期間だけ海外へ移住することを防ぐためのものです。そのため、現在どこに住んでいるかだけでなく、過去の居住状況も含めた確認が必要です。

第3章 相続人・被相続人が外国籍の場合の考え方

3-1 外国籍であっても日本の相続税と無関係ではない

被相続人や相続人が外国籍である場合でも、それだけで日本の相続税がかからなくなるわけではありません。相続税の課税範囲は、国籍ではなく、住所や居住関係によって判断されます。したがって、外国籍であるかどうかだけで相続した資産が課税対象になるかどうかを判断することはできません。

3-2 被相続人が外国籍の場合の課税関係

被相続人が外国籍であっても、相続人が日本に住所を有している場合には、海外にある財産も含めて相続税の課税対象となります。
たとえば、被相続人が外国籍で海外に居住しており、その資産が海外の預金や不動産だったとしても、それらを日本に住んでいる相続人が取得する場合には、日本で相続税の申告が必要です。(2-1表の①に該当)

3-3 相続人が外国籍の場合の課税関係

相続人が外国籍である場合も考え方は同じです。日本に住所を有している場合には、相続した海外資産も含めて日本の相続税の課税対象となります。
たとえば、外国籍の人が日本に居住しているときに、海外にある預金や不動産を相続した場合には、日本の相続税の対象となります。(2-1表の①に該当)
さらに、相続人が外国籍であり、かつ現在は海外に居住している場合であっても、相続開始前の10年以内に日本に住所を有していた場合には、海外資産も日本の相続税の課税対象に含まれることがあります。(2-1表の②に該当)

第4章 海外資産の相続で生じる二重課税と外国税額控除

4-1 海外と日本の両方で課税されることがある

海外にある資産を相続した場合、その資産が所在する国でも相続税のような税金が課されることがあります。その資産が日本でも相続税の課税対象となる場合には、同じ資産に対して日本と海外の両方で税金がかかることになります。このように、一つの財産に対して複数の国で課税される状態を「二重課税」といいます。

4-2 二重課税を調整する「外国税額控除」の仕組み

日本では、この二重課税を調整するために「外国税額控除」という制度が設けられています。
これは、海外で支払った相続税に相当する金額を、日本の相続税から差し引くことができる制度です。
たとえば、海外の不動産について現地で税金を支払っている場合、その分を日本の相続税から控除することで、同じ財産に対する税負担が過度に重くならないように調整されます。

控除は自動では適用されない

ただし、外国税額控除は自動的に適用されるものではありません。
相続税の申告において、海外で税金を支払った事実や金額を証明する書類を提出し、適用を受ける必要があります。そのため、現地での納税証明書や課税明細などの資料を適切に取得し、日本の申告に反映させることが重要です。

支払った税額のすべてが控除されるとは限らない

また、外国税額控除には上限があり、海外で支払った税額のすべてがそのまま控除されるとは限りません。控除できる金額は、日本の相続税額のうち、国外財産に対応する部分を基準として計算されます。

4-3 二重課税の有無は事前に確認しておくことが重要

海外資産が含まれる相続では、どの国でどのような税金が課されるのかを事前に確認しておくことが重要です。
国によっては相続税としてではなく他の税金として課される場合や、課税のタイミングや評価方法が日本と異なるケースも少なくありません。日本だけでなく現地の税制も踏まえて全体の税負担を把握し、必要に応じて外国税額控除の適用を前提とした申告を行うことが必要です。

第5章 海外資産の申告漏れと税務調査のポイント

5-1 海外資産も把握される可能性がある

海外にある資産であっても、日本の税務当局に把握されないとは限りません。
現在は、各国の税務当局が金融口座情報を自動的に交換する仕組み(CRS)が導入されており、日本の居住者が海外の金融機関に保有する口座情報は、日本の税務当局にも提供されることがあります。
そのため、海外の口座であれば申告しなくても分からないという前提で考えるのは適切ではありません。

5-2 資金の動きから把握されるケースもある

海外資産に関する情報は、資金の動きから把握されることもあります。
たとえば、海外から日本への送金や、日本から海外への送金については、一定額を超える場合に金融機関から税務当局へ情報が提供される仕組みがあります。
また、相続後に海外資産を売却して日本に資金を移した場合などにも、資金の流れを通じて課税関係が確認されることがあります。

5-3 申告漏れには加算税や延滞税が生じることがある

海外資産を相続したにもかかわらず申告をしていなかった場合や、申告内容に漏れがあった場合には、本来の税額に加えて加算税や延滞税が課されることがあります。
さらに、意図的に財産を申告していないと判断された場合には、より重い重加算税が課される可能性もあります。
海外資産については確認や資料収集に時間がかかることも多く、結果として申告期限に間に合わないケースも見受けられます。そのため、相続が発生した段階で、海外資産の有無や所在をできるだけ早く確認することが重要です。

第6章 海外資産がある相続では早期の整理が重要

海外資産がある相続では、資産の所在だけで課税の全容を判断することはできません。相続人の居住地や過去の居住歴、被相続人との関係などを踏まえて、日本の相続税の対象となる範囲を整理する必要があります。
また、海外の税制との関係で二重課税が生じる可能性があるほか、外国税額控除の適用や資料の収集など、国内の相続に比べて検討すべき事項がさらに煩雑になる傾向があります。判断に迷う場合には、専門家に相談しながら進めることも選択肢の一つです。
私たちNexill&Partners(ネクシル&パートナーズ)グループでは、弁護士・税理士などの専門家が連携し、海外資産を含む相続について、課税関係の整理から申告・手続まで一体的に対応しています。海外資産の相続で不安がある場合には、お気軽にご相談ください。

 

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監修者:菰田 泰隆
代表弁護士・税理士・社会保険労務士・行政書士菰田 泰隆

弁護士法人Nexill&Partners

代表弁護士・税理士・社会保険労務士・行政書士菰田 泰隆

  • 2002年
    修猷館高等学校 卒業
  • 2007年
    九州大学法学部 卒業
  • 2010年
    早稲田大学大学院法務研究科 修了
  • 2012年
    弁護士登録
  • 2013年
    菰田法律事務所(現:弁護士法人Nexill&Partners) 開業
  • 2016年
    社労士登録・開業(現:社会保険労務士法人Nexill&Partners)
  • 2016年
    税理士登録・開業(現:税理士法人Nexill&Partners)

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