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コラム

不動産の共有名義人が死亡したらどうなる?配偶者・親・兄弟・第三者のパターン別に手続と注意点を弁護士が解説

2026.03.17

自宅や相続した不動産を誰かと共有名義で持っている場合、片方の共有者が亡くなると、その持分は亡くなった人の相続人に引き継がれます。共有名義の不動産は、売却や共有物に変更を加える場面などで、他の共有者との協議や同意が必要になるため、権利関係を放置すると将来的に大きなトラブルを招くおそれがあります。本記事では、共有者別に、発生しうる問題と適切な手続について、弁護士が実務の視点から整理します。

第1章 共有名義の一方が死亡した際に生じる持分のゆくえと基本原則

1-1 亡くなった共有者の持分は相続人が承継する

不動産を複数人で共有している場合、共有者の一人が亡くなると、その人が持っていた持分(所有権の割合)は消滅するわけではありません。亡くなった共有者に配偶者や子どもなどの相続人がいる場合、その持分は相続財産として相続人に引き継がれます。
もし亡くなった人に相続人が一人もおらず、特別縁故者(生前に身の回りの世話をしていた人など)への分与も行われない場合には、最終的にその持分が他の共有者に帰属することがありますが、これは極めて限定的なケースといえます。実務上は、亡くなった共有者の親族が新たな共有者として加わると考えるのが一般的です。

1-2 共有状態を放置すると共有者が増え、権利関係が複雑になりやすい

共有名義の不動産で相続が発生したのに、名義変更をせずにそのまま放置すると、後の相続で権利関係が複雑になることがあります。時間の経過とともに、共有名義を引き継いだ相続人も亡くなり、次の相続が発生すると、不動産の共有者が連鎖的に増えていく「権利の細分化」が起こるためです。
このような状態になると、誰が現在の共有者なのかを確認するだけでも相当な手間がかかり、全員の所在を突き止めるだけで膨大な時間と費用がかかる事態も想定されます。
共有不動産の問題は、放置している間に自然に解決することは通常なく、むしろ時間が経てば経つほど処理が重くなってしまいます。

1-3 不動産の売却や活用には共有者全員の同意が必要

不動産が共有状態にある場合、その扱いは法律によって制限されます。建物の修繕などの保存行為は各共有者が単独で行えますが、不動産全体の売却や共有物に変更を加える行為には、原則として共有者全員の同意が必要になります。また、不動産を賃貸に出そうとする際も、その内容や期間によって必要な同意の範囲が異なるため個別に確認する必要があります。
自分一人が売りたい・賃貸に出したいと考えても、他の共有者が反対したり、あるいは連絡が取れなかったりすれば、不動産を活用することも現金化することもできない事態も想定されるのです。そのため、共有者の一人が亡くなったタイミングで、不安定な共有関係を解消するための法的整理を検討することが望ましいといえます。

第2章 【パターン①:配偶者】自宅が夫婦共有名義で夫や妻が亡くなった場合

2-1 夫婦共有の自宅では、残された配偶者が持分を取得する形で整理することが多い

夫婦で資金を出し合って自宅を購入し、共有名義にしている場合、一方が亡くなると、その持分が相続の対象になります。相続人が残された配偶者と子どもだけであれば、遺産分割協議の結果として、残された配偶者が亡くなった人の持分を取得し、単独名義にまとめるケースが一般的です。なぜなら、単独名義にしておくと、将来、自宅の売却や建替えを検討する際に、複数の共有者間の調整が不要なく、扱いやすくなるからです。
もっとも、残された配偶者が必ず持分を取得しなければならないと法律で決められているわけではありません。他の相続財産との兼ね合いや、相続人間の意向によっては、子どもが持分を取得することもあります。自宅に住み続ける必要性、資金状況、他の相続財産の有無を踏まえて整理することが大切です。

2-2 子どもがいない場合に注意すべき義父母や義兄弟との共有

注意が必要なのは、夫婦の間に子どもがいないケースです。
この場合、亡くなった配偶者の親(義父母)や、親が既に亡くなっている場合は兄弟姉妹(義兄弟)が法定相続人となることがあります。そのため、相続人が子どもである場合(2-1のケース)ほどスムーズに自宅の持分を取得できるとは限りません。遺言がなく、遺産分割協議でも調整ができない場合は、残された配偶者と義父母や義兄弟が自宅を共有する状態になることもあり得ます。
そのため、子どもがいない夫婦の場合には、残された配偶者は遺産分割協議の段階で亡くなった人の持分を自分が取得できるよう他の相続人と調整することが重要です。場合によっては、代償金の支払いによって持分を取得する方法なども含めて、共有状態にならない形で整理することが望ましいといえます。

2-3 住宅ローンが残っている場合は団信と名義の問題を分けて確認する

住宅ローンの返済中に共有者が亡くなった場合、団体信用生命保険(団信)の適用有無を確認する必要があります。ペアローンや連帯債務の形式で借り入れている場合、亡くなった方の債務分については保険金で完済されるケースがありますが、生存している側の債務はそのまま残る場合もあります。
団信によってローンの一部または全部が完済された場合でも、不動産の名義(持分)は自動的には変わりません。法務局で抵当権の抹消手続を行うとともに、亡くなった方の持分を相続人へ移転する相続登記手続を並行して進める必要があります。

第3章 【パターン②:親】親子の共有名義で親が亡くなった場合

3-1 二世帯住宅や実家の持分を引き継ぐ際の遺産分割協議

親が所有していた土地に子が建物を建てたり、二世帯住宅を親子で共有したりしている場合、親の死亡によってその持分が相続の対象となります。同居していた子どもがそのまま住み続けることを希望する場合、親の持分をその子が相続する形で名義を集約させるのが理想的です。持分を集約できれば、その後の管理や処分が整理しやすくなるためです。
しかし、不動産を共有している子の他にも子供がいる場合においては、対象の子に持分を集約させることで、他の兄弟姉妹との間で不公平感が生じやすくなり、遺産分割協議が難航することも想定されます(次のパートで説明します)。

3-2 他に相続人(兄弟姉妹)がいる場合の持分調整と代償金

親に自分以外の複数の子(兄弟姉妹)がいる場合、親の持分は兄弟姉妹全員が相続人として関与することになります。もっとも、実際にはその不動産に住み続ける予定のある人や管理を担っている人が、親の持分をまとめて取得したいと考えることが少なくありません。その場合には、他の兄弟姉妹との間で、どのように公平を図るかが問題になります。たとえば、特定のひとりが不動産の持分をすべて引き継ぐ代わりに、他の兄弟姉妹に対して金銭を支払って調整する方法があり、これを代償分割といいます。不動産を維持しつつ共有関係を整理しやすい方法ですが、取得する側には資金の負担が生じます。
代償金の額で他の兄弟姉妹と折り合いがつかないと、不動産全体を売却して金銭で分ける換価分割を求められたり、やむを得ず兄弟全員での共有名義になったりする場合もあります。
親子共有の不動産は、住んでいる人と住んでいない人で利害がずれやすいため、感覚的な主張だけで進めず、その後の利用方法や不動産評価も踏まえて話し合うことが重要です。

第4章 【パターン③:兄弟】兄弟姉妹の共有名義で一方が亡くなった場合

4-1 甥や姪が相続人になることでコミュニケーションが困難になるリスク

親から相続した不動産を兄弟姉妹で共有し続けているケースでは、一方が亡くなると、その兄弟姉妹の配偶者や子ども(自分から見た甥・姪)が新たな共有者となる可能性が高いです。
兄弟姉妹間であれば話し合えたことも、世代や立場が変わることで意見がまとまりにくくなることがあります。特に、住んでいる人は維持を希望し、相続した側は換価(売却して現金化)を希望する場合に対立するケースが少なくありません。
また、兄弟間では曖昧なルールで処理していた問題が、相続を機に表面化することもあります。たとえば、被相続人が「長男だから」といった理由で管理費や固定資産税などを負担していた場合、相続によって共有者が甥や姪に変わるとそのような負担のあり方が見直され、相続人全員で分担するよう求められるなど、従来の管理方法が変更されるケースも考えられます。

4-2 兄弟共有では、持分の買い取りによる整理が現実的な選択肢になることが多い

兄弟共有の不動産では、生存している共有者が亡くなった人の持分を買い取る形で共有を解消することがあります。相手方にとっては現金化ができ、取得する側にとっては単独での管理や処分がしやすくなるため、実務上は検討されやすい方法です。
もっとも、価格をどのように決めるかが争点になりやすいため、当事者の感覚だけで金額を決めるのは避けた方がよいでしょう。不動産会社の査定、必要に応じて鑑定評価なども踏まえて、客観的な資料を前提に協議を進める方が紛争を防ぎやすくなります。

第5章 【パターン④:親族以外の第三者】親族以外の共有名義人が亡くなった場合

5-1 面識のない相続人と共有関係が生じることがある

ビジネス上の関係者や知人など、親族以外の第三者と不動産を共有していた場合、その共有者が亡くなると、その持分は相続財産として相続人に引き継がれます。その結果、これまで面識のなかった相続人が新たな共有者となることがあります。
このようなケースでは、相続人にとって当該不動産に居住や利用の予定がないことも多く、不動産を共同で管理・利用するよりも、持分を売却して現金化することを希望する場合があります。そのため、残された共有者に対して持分の買い取りを求めたり、共有関係の解消に向けた協議を求められたりすることがあります。
しかし、当事者同士にこれまでの関係性がない場合、不動産の利用状況や今後の扱いについて認識を共有すること自体が容易ではありません。その結果、話し合いがまとまらず、共有関係の整理が進まないまま、不動産の管理や処分の判断が難しくなることがあります。

5-2 投資用物件や賃貸不動産で生じる賃料管理と費用負担の問題

投資用不動産や賃貸物件を共有している場合には、相続後に誰が賃料を受け取るのか、修繕費や固定資産税を誰がどのように負担するのかといった管理面の整理が必要になります。特に、相続人が確定していない段階や、相続人同士の協議がまとまっていない段階では、賃料の支払先や協議の相手方をどのように扱うかが問題となることがあります。
また、土地の利用関係が複雑な物件では、境界の確定や分筆の可否、既存の賃貸借契約の扱いなど、共有関係とは別の論点についても同時に調整を進める必要が生じます。
このように、親族以外の第三者との共有不動産では、感情的な対立よりも、利害関係の調整そのものが難しくなる傾向があり、管理や処分の方針を整理するまでに時間を要するケースも少なくありません。

5-3 相続人がいない場合に問題となる特別縁故者と持分の帰属

第三者の共有者に相続人がいない可能性がある場合、持分の帰属がすぐには確定しないことがあります。このような場合、亡くなった共有者の持分は自動的に他の共有者へ移るわけではなく、まずは家庭裁判所の手続を通じて相続財産の整理が行われます。通常は、家庭裁判所が相続財産清算人を選任し、相続人の有無の調査や財産の整理が進められることになります。
その過程で、亡くなった人と生前に特別な関係があった人がいる場合には、「特別縁故者」として財産の分与を受けられる可能性があります。特別縁故者とは、被相続人の療養看護に努めた人や、生計を共にしていた人など、特別な関係にあったと家庭裁判所が認めた人を指します。
特別縁故者への分与が行われず、最終的に相続人も特別縁故者も存在しないと判断された場合には、亡くなった共有者の持分は他の共有者に帰属することがあります。ただし、このような結論に至るまでには公告や調査など複数の手続を経る必要があり、ある程度の時間がかかることが一般的です。

第6章 共有名義の不動産で相続が起きたときの進め方

共有名義の不動産では、共有者の一人が亡くなると、その持分が相続の対象となり、新たな共有関係が生じることがあります。これまで見てきたように、共有者との関係性(配偶者・親・兄弟・第三者)によって起こりやすい問題は異なりますが、いずれの場合でも行うべき手続の流れは共通しています。最後に共有名義の不動産で相続が発生した際に、実務上どのような順序で整理を進めていくべきかを整理します。

6-1 まず確認すべき持分割合と相続人

最初に確認すべきなのは、不動産の共有持分の割合と、亡くなった共有者の相続人です。
登記簿謄本を確認すれば、不動産の名義人と持分割合は把握できますが、相続人については戸籍で調査する必要があります。
特に、親族関係が複雑な場合や、長期間相続手続が行われていない不動産では、想定していなかった相続人が判明することもあります。まずは誰が現在の共有者になるのかを正確に把握することから始めましょう。
なお、親族以外の第三者と共有している場合にはご自身で相続人調査を直接行うことは難しいので、相続人側からの情報提供を受けるか、専門家を通じて状況を確認する等の手段が必要です。

6-2 共有状態を解消するかどうかを検討する

不動産の共有者が亡くなり、その持分が相続の対象となった場合、共有者としてその不動産を今後どのように扱うのかを検討する必要があります。
自分が相続人の一人である場合は、その持分を取得して単独名義にまとめることができれば(代償分割)、その後の管理や処分を比較的進めやすくなります。しかし、資金面などの事情から単独名義にできない場合は、他の相続人と共有状態のまま不動産を保有することになり、管理や処分の判断が難しくなることがあります。この段階では、自分の単独名義にするのか、実際にそれが可能なのか、しない場合は自分の持分をどうするのか、といった点を整理しておくことが重要です。

6-3 遺産分割協議で持分の帰属を決める

亡くなった共有者の持分は、相続人による遺産分割協議によって誰が取得するのかが決まります。
先の通り、残された共有者がその持分を取得し、単独名義の形で整理するのが理想的といえます。しかし、資金不足などの事情から持分を取得できない場合や、相続人の意向が一致しない場合には、残された共有者と相続人全員が一つの不動産の共有名義になることもあります。
このような場合には、不動産を売却して売却益を相続人間で分け合うなど、具体的な整理方法を検討していくことになります。
なお、親族以外の第三者と共有していた場合には、自身は相続人ではないため遺産分割協議自体には参加ができません。その場合には、相続人による遺産分割の結果を踏まえたうえで、持分の買い取りや売却について相続人と協議していくことになります。

6-4 相続登記による名義変更を行う

遺産分割の内容が決まった後は、不動産の名義を変更する相続登記を行います。
相続登記は2024年4月から義務化されており、原則として、自己のために相続が開始したことと、不動産を相続で取得したことを知った日から3年以内に申請する必要があります。
共有名義の不動産でもこの義務は同様に適用されるため、遺産分割がまとまった後は速やかに登記手続を進めることが重要です。

6-5 弁護士など専門家へ相談するメリット

共有名義の不動産の相続では、相続人調査、遺産分割協議、不動産評価、相続登記、持分整理など、複数の手続が相互に関係しています。また、共有者との関係性によっては利害が対立しやすく、当事者同士の話し合いだけでは整理が難しい場面が生じることもあります。
このような場合には、弁護士に相談することで、遺産分割の進め方や共有関係の整理方法について法的観点から状況を整理することができます。必要に応じて、協議の進め方について助言を受けたり、当事者間の調整をサポートしてもらったりすることも可能です。
共有不動産の問題は、初期の対応によってその後の手続の進めやすさが大きく変わることもあります。手続の進め方に迷う場面では、早い段階で専門家に状況を整理してもらい、全体の方向性を確認しておくことが一つの有効な方法といえるでしょう。

第7章 共有名義不動産の相続問題を適切に整理するために

共有名義の不動産では、共有者の一人が亡くなると、その持分が相続の対象となり、新たな共有関係が生じることがあります。本記事で見てきたように、共有者が配偶者なのか、親なのか、兄弟姉妹なのか、あるいは親族以外の第三者なのかによって、起こりやすい問題は異なります。しかし、いずれの場合でも重要になるのは、亡くなった共有者の持分を誰が取得するのかを整理し、将来の共有関係をどのように扱うのかを早い段階で検討することです。
私たちNexill&Partners(ネクシル&パートナーズ)グループでは、弁護士だけでなく、司法書士や税理士などの専門家が連携し、相続人調査、遺産分割協議のサポート、不動産の相続登記、相続税申告までをワンストップで対応する体制を整えています。共有名義の不動産で共有者が亡くなり、今後どのように手続を進めればよいのか迷われている場合には、どうぞお気軽にご相談ください。
 

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監修者:後藤 祐太郎
弁護士後藤 祐太郎

弁護士法人Nexill&Partners

弁護士後藤 祐太郎

  • 2010年
    日本大学法学部 卒業
  • 2012年
    慶應義塾大学大学院法務研究科 修了
  • 2014年
    竹口・堀法律事務所 入所
  • 2016年
    現:弁護士法人Nexill&Partners 入所 那珂川オフィス支店長 就任

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