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コラム

未婚の子が死亡した際の相続手続はどう進める?相続人の範囲や財産調査、兄弟姉妹の関与について弁護士が解説

2026.03.05

未婚で子どものいない方が親より先に亡くなると、両親が法定相続人になります。深い悲しみの中にありながら、銀行口座の凍結や相続人の確定、兄弟姉妹の関与など、現実的な相続手続に向き合う必要が発生します。本記事では「誰が相続人になるのか」「財産や借金の状況があるか分からない」といった様々な問題の解決方法を弁護士が整理して解説します。
※本記事は、法律上の配偶者がおらず、子(認知した子・養子を含む)もいないケースを前提に説明します。

第1章 未婚の子が死亡した場合の法定相続人と遺産分割の基本ルール

1-1 第一順位(子)がいない場合の相続人は「親」

法律上、亡くなった人(被相続人)に子どもや孫などの直系卑属(ちょっけいひぞく)がいない場合、相続権は第二順位である直系尊属(ちょっけいそんぞく)、つまり、両親に移ります。
両親がともに健在であれば、二人で2分の1ずつ相続することになります。
もし、両親のどちらかが既に亡くなっている場合は、存命の親がすべての遺産を相続します。この段階では、まだ被相続人の兄弟姉妹に相続権は発生しません。

1-2 兄弟姉妹はどの段階で相続人になるのか

「未婚の子に兄弟姉妹がいる場合、彼らも相続人になるのか」という点は、よく受ける質問です。結論から申し上げますと、両親(または祖父母)が一人でも存命である限り、兄弟姉妹は法定相続人にはなりません。
兄弟姉妹が相続人になるのは、両親および祖父母が全員、既に亡くなられている場合に限られます。これを第三順位の相続と呼びます。
もし、両親が存命のうちに相続手続を進めるのであれば、基本的には兄弟姉妹の同意は不要です。ただし、両親が高齢で判断能力に不安がある場合などは、「任意後見」や「法定後見」といった制度の利用を検討しなければならないケースもあり、その際には親族間の協力が不可欠となるでしょう。

1-3 遺言書がない場合の遺産分割協議の進め方

亡くなった子が遺言書を残していなかった場合、相続人全員で「誰が、何を、どのくらい受け継ぐか」を話し合う遺産分割協議を行う必要があります。相続人が両親二人のみであれば、話し合いは比較的スムーズに進むことが多いですが、それでも後々のトラブルや金融機関での手続のために遺産分割協議書を作成しておくことが推奨されます。

第2章 亡くなった子の財産が分からない場合の調査方法

2-1 凍結された銀行口座の有無と残高を調べる

離れて暮らしていた場合、被相続人(子)がどの銀行に口座を持っていたのか、正確に把握できていないことが多々あります。
まずは、自宅に残された通帳やキャッシュカード、金融機関からの郵便物、スマートフォンのアプリやメール履歴などを確認し、どの金融機関と取引があったのかを特定することが重要です。利用していた可能性のある金融機関が判明したら、各金融機関に対し残高証明書の発行を依頼します。これにより、死亡日時点の預貯金残高を正確に把握することができます。
なお、全店照会に対応している金融機関であれば、本店や一支店だけでなく、その銀行の全支店における口座の有無を一括で確認することが可能です。一方、ネット銀行の場合は郵送やオンラインでの手続が必要になることもあるため、各金融機関の相続専用窓口の案内に従って進めましょう。

2-2 不動産の所有状況を漏れなく把握する「名寄帳」の取得

被相続人がマンションを購入していたり、投資用の不動産を持っていたりする場合、その全容を把握するのは容易ではありません。
特に固定資産税の納税通知書が見当たらない場合は注意が必要です。
こうしたケースでは、市区町村役場で「名寄帳(なよせちょう)」を取得します。名寄帳には、その自治体内の不動産(非課税の私道なども含む)が一覧で記載されています。これにより、把握していなかった物件の特定が可能になります。

2-3 証券口座や暗号資産(仮想通貨)の見落としを防ぐ

近年、デジタル資産の相続が大きな課題となっています。ネット証券の口座やビットコインなどの暗号資産(仮想通貨)は、紙の通知が届かないことが多く、気づかないまま放置されるリスクが高いからです。
以下のポイントをチェックしてみてください。

  • スマートフォンのアプリや、パソコンのお気に入り(ブックマーク)に金融機関のサイトがないか
  • メールの受信履歴に、証券会社や取引所からのログイン通知、約定通知が届いていないか
  • 銀行口座の振替履歴に、証券会社への入金記録がないか

デジタル遺産の調査は専門的な知識を要するため、判明しない場合は早めに弁護士など専門家に相談することをおすすめします。

第3章 「マイナスの財産」への対処と相続放棄の判断基準

3-1 借金や未払金があるかを確認する信用情報機関の照会

相続はプラスの財産だけではありません。ローン、クレジットカードのキャッシング、さらには他人の保証人になっているといった「マイナスの財産」もすべて引き継ぐことになります。
借金の有無が不明な場合は、信用情報機関(JICC、CIC、全国銀行個人信用情報センター)に対して情報の開示請求を行うことができます。
これらの開示請求は、相続人が複数いる場合でも他の相続人の同意書などは原則として必要ありませんので、親自身が単独で行うことが可能です。
請求にあたっては、主に次のような書類が必要となります。

情報開示請求に必要な主な書類
① 本人が亡くなったことがわかる書類

除籍謄本や死亡診断書のコピーなど

② 請求者が相続人(親)であることがわかる書類

請求者の戸籍謄本など(※子との続柄が確認できるもの)

③ 親自身の本人確認書類

運転免許証やマイナンバーカードのコピーなど

3つの信用情報機関(JICC:消費者金融系、CIC:クレジット系、全銀協:銀行系)はそれぞれ独立しているため、網羅的に調べるには3箇所すべてに個別に請求する必要があります。
また、スマホアプリでの開示は「本人の生前の端末やパスワード」が必要になるなどハードルが高いため、相続人による請求は「郵送」で行う方が可能性が高いといえます。各機関の公式サイトから「法定相続人用」の申込書をダウンロードして進めましょう。

3-2 「相続放棄」を選択する場合の3か月という期限の注意点

調査の結果、借金がプラスの財産を明らかに上回っている場合は「相続放棄」を検討します。相続放棄をすれば、最初から相続人ではなかったことになり、借金を返済する義務もなくなります。
ここで注意すべきなのは期限です。相続放棄は「自己のために相続の開始があったことを知った時(通常は子が亡くなったことを知った時)」から「3か月以内」に、家庭裁判所へ申述しなければなりません。
この期間を過ぎてしまうと、原則として全ての借金を背負う単純承認をしたとみなされます。調査に時間がかかりそうな場合は、期限の延長(期間伸長の申立)もできるため、判断に不安がある場合は早めに弁護士に相談しましょう。

3-3 プラスの財産の範囲内で借金を返す「限定承認」の検討

借金はありそうだが、自宅などの守りたい財産もあるという場合に検討されるのが「限定承認」です。これは、相続したプラスの財産の範囲内でのみ、マイナスの財産(借金)を支払うという条件付きの相続方法です。
限定承認は、相続人全員(両親が相続人であれば二人とも)で行う必要があります。手続が複雑で、税務上の「みなし譲渡所得税」の申告が必要になるなど専門的な判断が求められるため、これも検討する場合は専門家に判断を仰ぐ方が安心といえます。

第4章 銀行・不動産などの具体的な相続手続の流れ

4-1 預貯金の解約・払戻手続に必要となる書類一覧

銀行口座の凍結を解除し、解約・払戻を行うためには、一般的に以下の書類が必要となります。

  • 被相続人(亡くなった子)の出生から死亡までの一連の戸籍謄本
  • 相続人(両親)の戸籍謄本および印鑑証明書
  • 遺産分割協議書(または銀行指定の払戻依頼書)
  • 通帳・キャッシュカード

特に「出生から死亡までの戸籍」の収集は、転籍(籍を移すこと)が多い場合、全国の役所から取り寄せる必要がある点に注意が必要です。

4-2 子どもが所有していた不動産がある場合の「相続登記」の義務化

2024年4月から、不動産の相続登記が法律で義務化されました。原則として、不動産を相続等で取得したことを知った日から3年以内に申請が必要となり、登記をしなかった場合、過料(行政に支払う罰金のようなもの)が科される可能性があります。
相続登記には、戸籍書類のほかに不動産の評価証明書や登記事項証明書などが必要です。義務化によって、放置することのリスクが高まっている点に注意してください。

4-3 自動車や保険金、未支給年金などの細かな諸手続

銀行や不動産以外にも、以下のような手続を忘れてはいけません。

自動車の名義変更・売却

運輸支局での手続が必要です。

生命保険金の請求

受取人になっていた場合、請求権が発生します。

未支給年金の請求

亡くなった当月分までの年金を遺族が受け取れる場合があります。

これらは放置すると時効にかかってしまうものもあるため、リスト化して計画的に進める必要があります。当事務所は社会保険労務士事務所もグループ内に擁しているため、年金関連の手続についてもワンストップで対応が可能です。

4-4 賃貸マンションの解約と敷金・火災保険の手続

亡くなった子が賃貸物件に住んでいた場合、その「賃借権」も相続の対象となります。

① 解約の手続

親が相続人として解約を申し入れる必要があります

② 敷金の返還

原状回復費用を差し引いた敷金は、相続財産として親が受け取ります

③ 火災保険の解約

火災保険や家財保険も忘れずに解約し、未経過期間分の保険料(返戻金)を請求しましょう

第5章 未婚の子の相続における税務のポイント

5-1 相続税の基礎控除額と申告が必要になるボーダーライン

一定以上の財産があった場合、相続税の申告が必要になります。相続税には「基礎控除」があり、遺産の総額が「3,000万円 +(600万円 × 法定相続人の数)」を超えなければ、原則として申告も納税も不要です。
例えば、法定相続人が両親二人の場合、基礎控除額は4,200万円となります。これを超える可能性がある場合は、亡くなった日から10か月以内に税務署へ申告しなければなりません。

5-2 「死亡保険金」や「死亡退職金」にかかる税金の仕組み

亡くなった子が勤務先でかけていた生命保険や、会社から支払われる死亡退職金は、法律上の「相続財産」ではありませんが、税務上は「みなし相続財産」として相続税の対象となります。
ただし、これらには「500万円 × 法定相続人の数」という独自の非課税枠が設けられています。受取金額がこの枠内であれば非課税となりますが、他の財産と合算して基礎控除を超えるかどうかの判定が必要です。

第6章 【FAQ】未婚の子の相続でよくある疑問と注意点

Q1. 子が賃貸マンションに住んでいた場合、すぐに解約しても良いですか?

A1. 親が相続人として解約できますが、荷物撤去には注意が必要です。

子が賃貸住宅に住んでいた場合、その賃借権も相続の対象となります。親が解約手続を行いますが、注意したいのは「遺品整理」のタイミングです。もし借金の有無が不明な段階で、形見分けの範囲を超えて家具や家電を処分・売却してしまうと、相続を認めたとみなされ(法定単純承認)、借金を相続してしまうリスクがあります。まずは大家や管理会社に事情を説明し、相続放棄の検討期間であることを伝えた上で、支払いの発生を最小限に抑える交渉をしましょう。敷金の返還請求や火災保険の解約返戻金の受け取りも、相続人である親の権利として行えます。

Q2. 遺産分割が決まらないまま、相続登記の期限が迫ったら?

A2. 「相続人申告登記」で義務に対応できます。

2024年4月から始まった相続登記の義務化では、相続を知った日から3年以内に名義変更を行わなければなりませんが、親同士で話し合いがまとまらないケースも想定されます。そのような場合は、法務局に対して「自分が相続人であること」を申し出る「相続人申告登記」を行えば、期限内に義務に対応したものとして扱われます。この制度は相続人が単独で申出ができ、持分割合を確定させる必要もありません。
あくまで期限対応のための手続のため、最終的には遺産分割の内容に応じた本登記が必要になりますが、まずは過料リスクを避けるための実務上の選択肢として活用できます。

Q3. 葬儀費用は子の銀行口座や手元の現金から支払っても問題ないですか?

A3. 社会通念上、相当な範囲であれば、遺産から支払っても相続放棄は可能です。

子が手元に持っていた現金(タンス預金など)から葬儀費用を出すことは、実務上よくあります。この場合、身分相応で妥当な金額であれば、遺産を使ったとしても「相続を承認した(相続放棄ができなくなる)」とはみなされない傾向にあります。
銀行口座については、金融機関が死亡を知った時点で凍結されますが、現在は預貯金の払戻制度(仮払い制度)を利用すれば、遺産分割協議が整う前でも、葬儀費用等の支払いのために一定額まで引き出すことが可能です。
ただし、引き出したお金を葬儀費用以外(自分の生活費など)に充ててしまうと、相続放棄ができなくなるリスクが生じます。必ず全ての領収書を保管し、何にいくら使ったのかを明確に証明できるようにしておくことが重要です。

Q4. 死亡した年の所得税はどうなりますか?親が代わりに申告すべきですか?

A4. 死亡から4か月以内に「準確定申告」が必要になる場合があります。

子が会社員で年末調整を受けていない場合や、個人事業主だった場合、あるいは給与以外の所得があった場合には、親(法定相続人)が代わって所得税の申告を行う「準確定申告」が必要です。申告期限が「亡くなった日を起点に4か月以内」と短い点に注意が必要です。医療費控除を受けられる場合などは、還付金が戻ってくることもあります。還付金も相続財産の一部となるため、遺産分割協議の対象に含めるのを忘れないようにしましょう。

Q5. SNSアカウントやスマホの課金サービスはどう整理すれば良いですか?

A5. 放置せず、各社のガイドラインに従ってアカウントを残すか削除かを選びます。

デジタル遺産の整理は、まずスマホの利用明細やメールを確認し、月額課金(サブスクリプション)の有無を特定することから始めます。SNSについては、相続人であることを証明する書類を提出すれば、運営側でアカウントの停止や削除に応じてくれます。
また、SNSの中には、アカウントを完全に削除するのではなく、追悼アカウント(メモリアルアカウント)として残すことができるサービスもあります。これは、故人の投稿を残しつつ、新たなログインや投稿を制限する仕組みです。親族が申請することで追悼設定に変更できる場合があります。

第7章 お子様の相続でお困りの方はお早めにご相談ください

未婚のお子様の相続では、ご両親が中心となって手続を行うことになりますが、複雑な法的・税務的手続をご自身だけで進めるのは、精神的にも肉体的にも大きな負担となることが予測されます。戸籍の収集から財産調査、銀行・不動産の手続、そして相続税の申告まで、クリアすべき課題は山積みです。
私たちNexill&Partners(ネクシル&パートナーズ)グループは、弁護士だけでなく、税理士、司法書士、社会保険労務士、行政書士が一体となったワンストップ体制を整えています。窓口一つで、各種の相続手続から不動産登記、税務申告まで解決できるため、ご自身で各士業と個別にやり取りをする負担を大幅に軽減できます。「何から手を付ければいいか分からない」「借金があるかもしれない」と不安を感じている方は、まずはお気軽にお問合せください。

監修者:池本 稔洋
弁護士池本 稔洋

弁護士法人Nexill&Partners

弁護士池本 稔洋

  • 2017年3月
    兵庫県立星陵高等学校 卒業
  • 2021年3月
    神戸大学法学部 法律学科 卒業
  • 2023年3月
    神戸大学法科大学院 修了
  • 2025年4月
    弁護士法人Nexill&Partners 入所

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