大切な家族が亡くなった後、悲しみに暮れる間もなく始まるのが相続手続きです。役所への届け出、金融機関での預貯金解約、不動産の名義変更など、数の多さや煩雑な手続きに「何から手をつければいいか分からない」「忙しくて時間が取れない」という悩みを抱える方は少なくありません。こうした負担を解消する選択肢の一つが、弁護士法人などの専門家に依頼する方法です。本記事では、専門家に任せることができる手続きの範囲、費用の目安、納得感のある依頼先選びのポイントを弁護士が分かりやすく解説します。
第1章 相続手続きの「丸投げ」とは?
1-1 自分で行うべきことと、専門家に代行してもらえる業務
手続きを「丸投げする」といっても、文字通りすべての作業を任せられるわけではありません。前提として、依頼者が行うべきことと専門家が代行できることを切り分けて考える必要があります。
代行を依頼できるのは主に以下のようなものです。
専門家に代行してもらえる業務の例
- 戸籍謄本の収集(相続人の確定調査)
- 財産目録の作成(不動産、預貯金、株式等の調査)
- 遺産分割協議書の作成
- 預貯金の解約手続きおよび払い戻し
- 不動産の名義変更(相続登記)
- 相続税の申告 など
一方で、依頼者自身でなければ行うことができないこともあります。
たとえば、印鑑証明書の取得など、本人の身分を証明する特定の書類については、多くの業務を専門家に依頼している場合でも、セキュリティの観点から自身での取得をお願いされるのが一般的です。
さらに、最終的な意思決定ももちろん依頼者自身の判断です。「どの遺産を誰が継ぐのか」を決めるのは相続人本人であり、専門家はその判断を仰ぎながら実務を代行します。
1-2 役所・銀行・法務局など、複雑な外部機関とのやり取りを一任
相続手続きが大変な理由の一つは、機関ごとにルールが異なり、求められる書類が膨大である点です。
たとえば銀行の場合、被相続人の死亡によって凍結された口座を解除するには、被相続人の出生から亡くなるまでの戸籍謄本や相続人全員の印鑑証明書などの書類提示を求められます。書類に不備があれば再提出となり、その修正に手間取っている間に他の書類の有効期限が切れてしまうことも珍しくありません。そうなれば、また平日の昼間に役所へ足を運ぶなどして、必要な書類を再度取得しなくてはなりません。
こうした地道な作業を被相続人が口座を有するすべての金融機関等で行わねばならず、仕事や日常生活と並行して完遂するのは、想像以上に心身を消耗させるものといえます。
1-3 「専門家への丸投げ」を検討する具体的な理由とシチュエーション
安くない費用を払ってまで多くの人が専門家に相続手続きの一括サポートを依頼する理由は何なのでしょうか。実務の現場でよく耳にするのは大きく3つです。
手続きの多さと複雑さへの疲弊
まずは、先述の通り手続きの多さと複雑さへの疲弊です。特に高齢の方が配偶者を亡くされた場合、ご自身で動き回るのを負担に感じる傾向があります。
親族間の心理的な壁
2つ目は、親族間の心理的な壁です。お金の話を身内でするのは気まずいものですが、専門家が第三者として介入し、手続きを進めることで、感情的な対立が深刻化するのを抑えられる可能性があります。
法的なミスを防ぐ
3つ目は、法的なミスを防ぐためです。特に近年は不動産の相続登記が義務化されるなど、制度が厳格化の傾向にあります。「知らなかった」では済まされないペナルティを回避するために、プロの力を借りるという判断をする方も少なくありません。
第2章 相続手続きを丸投げする場合の費用の目安
相続手続きの費用は、主に「専門家への報酬」と「実費」の2段構造になっています。
2-1 手続き代行費用の一般的な算出方法
専門家に支払う報酬の決め方は、大きく分けて2つのパターンがあります。
定額制
不動産の名義変更のみ、預貯金口座の解約のみ、など比較的シンプルな手続きの場合に採用されることが多い形式です。「1件あたり◯◯円」と決まっているため、予算が立てやすいといえます。
遺産額比例制
いわゆる「丸投げ」パッケージで採用されやすい形式です。
遺産総額の0.5%〜2%といった形で設定されます。料率は遺産の種類の多さや相続人の人数の多さなど、複雑さに応じて変動するのが一般的です。例えば、遺産が5,000万円で料率が1%の場合、報酬は50万円(税別)といったイメージです。
一見すると高額に感じるかもしれませんが、何十時間分もの事務作業の代行と、法的な正確性を担保するための責任料が含まれた金額といえます。
2-2 報酬以外に発生する「実費」:登録免許税や戸籍謄本代の見通し
見積書を見る際に注意が必要なのが、この「実費」です。これは専門家の取り分ではなく、国や役所に支払う立て替え金のようなものです。
相続手続き代行にかかわる実費の具体的な例
戸籍謄本の取得手数料
1通数百円程度だが、数が多いと数千円〜数万円になる場合もある
登録免許税
不動産の名義変更時にかかる税金。相続登記では固定資産税評価額の0.4%が基本
郵送代
役所等から書類を取り寄せるための往復の切手代、レターパック代など
交通費
各種窓口へ出向くための電車代など
残高証明書の発行手数料
金融機関に支払うもの
これらは遺産の状況によって大きく変わるため、事前に「大体いくらくらいになりそうか」を確認しておくことが、後々のトラブルを防ぐポイントといえます。
2-3 費用を適切に抑えるための考え方と、格安プランの注意点
一任できるのは助かる反面、費用を抑えたいと考えるのも当然のことです。たとえば、「戸籍謄本の収集だけは自分で行う」といった具合に作業の一部を自身で行うことで報酬の減額を検討してくれる事務所もあります。
しかし、安易に格安をうたうプランは慎重な検討が必要です。一見、安く見えても、実際には「銀行口座の解約は1口座につき追加◯◯円」「複雑な事案なので加算」といった具合に、最終的に支払額が高額になるケースもあるからです。
費用を比較する際は、単に表面上の金額を見るのではなく、「どこからどこまでが含まれた金額なのか」を詳細に確認することが、最終的な納得につながるといえます。
第3章 相続手続きの代行を依頼する専門家の種類とそれぞれの得意分野
相続といえば弁護士というイメージが強いかもしれませんが、実際には内容によって適切な相談先が異なります。丸投げを検討する場合、各専門家の得意分野を知っておくことで回り道を避けることができます。
3-1 法律トラブルや遺産分割協議の調整が必要な場合は弁護士
相続人同士の意見が食い違っている、あるいは特定の人が遺産を独占しようとしている。こうした争いの気配がある場合の専門家は弁護士です。
他の士業(税理士や司法書士)は、相続人の間で利害対立がある場合に、その代理人として交渉や調整を行うことは弁護士法上認められていません。弁護士であれば、万が一、調停や裁判になった場合も一貫して対応することができます。また、相続人調査や財産調査などの実務も、専門家として高いレベルで行ってくれる安心感があるといえます。
3-2 相続税申告や財産評価の正確性を期す場合は税理士
遺産額が基礎控除(3,000万円+600万円×法定相続人の数)を超える可能性がある場合は、税理士が頼りになります。
税理士は税金のプロであり、特例を適用して納税額を抑える方法などについても精通しています。相続税の申告は、やり方を間違えると後から追徴課税が課されるリスクがあるため、正確な財産評価が求められる場面では、税理士のサポートをおすすめします。
3-3 不動産の名義変更(相続登記)を円滑に進めたい場合は司法書士
遺産の中に自宅や土地が含まれている場合、必ず発生するのが「相続登記」です。この名義変更手続きの専門が司法書士です。
法務局への申請書類作成やオンライン申請を迅速に行うことができ、不動産周りの手続きだけであれば費用面でも納得度が高い場合が多いといえます。
3-4 複数の専門家がかかわる場合は連携が重要
ここまで読んで「結局、誰に頼めばいいのか」と思った方もいるのではないでしょうか。揉め事は弁護士に依頼し、税金は税理士を探して、登記は司法書士に……これでは、自分で行う手間を減らすために丸投げしたはずが、かえって各専門家との連絡調整という新たな負担を生んでしまいます。
実際は、すべての専門家を自分で探し出すというケースは稀です。基本的には、最初に相談した弁護士などの専門家が、必要に応じて提携している他の士業を紹介し、連携して進めていくのが一般的です。ただし、こうした複数の士業がかかわる場合に重要となるのが、士業間の連携です。依頼者が何度も同じ説明を繰り返さなくても情報が共有され、各種の手続きがスムーズに運ぶかは、窓口となる専門家を軸としたチームワークにかかっているといえます。
第4章 依頼から完了までの具体的なステップと期間の目安
4-1 初回相談で確認しておきたい委任範囲と見積もり
まずは無料相談などを利用して、専門家とのヒアリングを行います。この段階で「何を、いつまでに、いくらで」やってくれるのかを確認しておきましょう。
- 一括代行の対象となる財産の範囲(預貯金すべてか、特定の不動産も含むか)
- 提示された報酬額に実費は含まれているか
- 追加料金が発生するのはどのような場合か
これらを口頭だけでなく、書面(見積書)として受け取れるかも確認しておくとよいでしょう。
4-2 初回の相談で準備しておくとよい資料リスト
専門家に依頼する場合も、初回の相談時に手元にある情報を整理しておくことで、専門家の理解を助け、その後の手続きをスムーズに始動させることができます。完璧に揃える必要はないので、現時点で手に入る範囲のものを準備しましょう。
一般的には、以下のような書類があると、より具体的なアドバイスを受けられます。
初回相談時に持参すると役立つ資料の例
亡くなった方の除籍謄本や戸籍謄本
もし手元にあれば
相続人の関係図
手書きの簡単なものでOK
預貯金や不動産など財産の状況がわかるもの
通帳、固定資産評価証明書など
これらが揃っていると、専門家も「誰が相続人か」「財産総額はどの程度か」「相続税申告の必要性があるか」といった全体像を把握しやすく、手続きのスタートを早めることができます。
4-3 相続手続き完了までの標準的なスケジュール感
一般的な相続手続き(紛争がなく、税申告が必要なケース)の場合、完了までの目安は半年から10ヶ月程度となるのが一般的です。
1〜2ヶ月目
相続人の確定、財産調査
3〜5ヶ月目
遺産分割協議、協議書の作成
6〜10ヶ月目
各名義変更、相続税申告
※上記はあくまで一般的な目安であり、相続人の人数や遺産の種類、親族間の協議状況によっては1年以上の期間を要する場合もあります。
相続税の申告期限は「亡くなってから10ヶ月」と決まっているため、これを逆算して動く必要があります。丸投げを検討しているなら、なるべく早めに相談を開始するのがベストといえます。
第5章 信頼できる専門家を選ぶには
相続手続きは、数ヶ月にわたって大切な財産を預ける重要な契約です。「どこでも同じだろう」と安易に決めてしまうと、後で不信感を抱くことになりかねません。選択する際は以下のようなポイントに注目してみましょう。
5-1 相続実務の経験値:過去の取り扱い事例や専門性の確認
資格を持っていれば誰でも同じようにスムーズな手続きができるわけではありません。医師に内科や外科があるように、弁護士や税理士にも得意分野があります。
離婚や交通事故の案件を豊富に取り扱っている弁護士事務所と比べると、相続の相談を重点的に受けている事務所の方が、弁護士はもちろんスタッフにもノウハウが蓄積されており、スムーズな問題解決が期待できるといえます。WEBサイトの実績紹介などを参考に、その事務所が相続にどれだけ注力しているかを確認してみるといいでしょう。
5-2 透明性のある料金体系:追加費用の可能性の説明があるか
信頼できる専門家は、費用の話を濁しません。「やってみないと分からない」ではなく、「こういうケースならいくら、こうなった場合はいくら追加」と、ある程度の概算を説明してくれるはずです。
特に一括で依頼する場合、どこまでが基本料金に含まれるのか、なぜその金額なのかをしっかり説明してくれる事務所を選びましょう。
5-3 コミュニケーション:進捗状況を丁寧に報告してくれるか
依頼者にとって、「今どうなっているのか分からない」という状態は不安に感じるはずです。こまめに進捗メールをくれたり、電話での問い合わせに迅速に対応してくれたり、説明においては専門用語を多用せず分かりやすい言葉で説明してくれたりといった配慮あるコミュニケーションがあることで余計なストレスを避けられます。
初回相談の際には、聞き取りの姿勢をよく見ておきましょう。こちらの話を遮らずに最後まで聞いてくれるか、という点も重要なチェックポイントといえます。
5-4 リスク管理:トラブルを未然に防ぐための提案があるか
言われた手続きをこなすだけでなく、トラブルを防ぐ提案をしてくれる姿勢も重要です。
たとえば、「この分割案では将来の二次相続で税金が高くなる可能性がある」「この不動産は売却しやすいように今のうちに測量しておく方法もある」というように一歩先の提案をしてくれる専門家は信頼がおけるといえます。自分では気づけないリスクを指摘してくれるプロの視点を味方につけたいものです。
第6章 専門家への一括依頼が向いているケースとは
6-1 遺産に不動産が多く含まれ、登記制度への対応を検討している
2024年から相続登記が義務化されました。正当な理由なく放置すると過料(金銭的なペナルティ)が科される可能性があり、以前よりも明確に管理することが求められています。
古い名義のまま放置されていた土地があるなど、権利関係が複雑な場合は、個人で解決するのは非常に難しいといえます。不動産が絡む相続は、プロの手を借りることをおすすめします。
6-2 相続人が遠方に居住しており、物理的に集まることが困難
兄弟が全国に散らばっている、あるいは海外に住んでいる相続人がいる場合、書類に印鑑をもらうだけでも膨大な手間がかかります。専門家が間に入り、郵送でのやり取りやオンラインでの意向確認を調整することで、物理的な距離の壁をスムーズに乗り越えることが期待できます。
6-3 仕事や介護で多忙を極め、手続きの期限が不安
相続手続きは、必要書類の取り寄せや連絡など「平日の昼間」にしかできない作業が想像以上に多いものです。フルタイムで働いている、自身も高齢で親の介護をしているといった方にとっては簡単ではありません。時間を「買う」という感覚で相続手続きを依頼することで、自身の心身の健康につながるはずです。
第7章 相続手続きを専門家に任せる際の注意点
7-1 「何もしなくていい」わけではない?依頼者が担う役割
丸投げをしたとしても、依頼者の役割がゼロになるわけではありません。先述の通り、必要な書類の取り寄せや、遺産の分け方を決める判断はあなたにしかできません。
また、専門家から「この書類が必要なので署名をお願いします」と言われた際に、迅速に対応することも重要です。この協力関係がスムーズであるほど、手続きも滞りなく進めることができます。
7-2 依頼後に生じる可能性がある追加費用のパターン
手続きの途中で、当初は把握していなかった新たな遺産や面識のない相続人が見つかることもあります。こうした予期せぬ事態には追加費用が発生するのが一般的ですが、大切なのは、費用が膨らむ可能性に気づいた時点で、依頼者としてまずは現状の説明と、概算の見積もりを求めることです。
追加費用が発生する場面では、専門家から「ここから先は追加の工数がかかるため、別途報酬が必要になりますが、進めてよろしいでしょうか?」という確認があるのが本来の姿です。もし説明が曖昧なまま手続きが進みそうな場合は、遠慮せずに「その作業にはいくらかかるのか」「なぜ必要なのか」を確認するようにしましょう。
あらかじめ追加費用の算出ルール(例:遺産が1つ増えるごとに○万円など)を契約時に聞いておくと、急な事態にも落ち着いて対応できるようになります。
7-3 無資格者や不透明な紹介サイトを経由する際のリスクについて
最近では「相続コンサルタント」などと名乗り、安価に手続きを請け負う業者も存在しますが、法的資格のない者が報酬を得て、相続に関する法律判断を伴う書類作成や、相続人間の交渉・調整を行うことは法律で禁じられています。また、高額な紹介料を士業から受け取っている紹介サイトなどもあり、最終的なコストが跳ね上がるケースもあります。
提示された費用が一見安く見えるからといって安易に選んだり、逆に「専門家は高そう」という先入観だけで選択肢から外したりするのは得策とはいえません。法的な資格に基づいた確かな実務を提供できる士業の専門家に任せることが、結果としてトラブルを回避し、時間と費用の両面で納得感のある解決につながるといえます。
第8章 手続きの負担を軽減し、安心を取り戻すために
相続手続きの「丸投げ」は、単なる事務作業の代行ではありません。ご家族が悲しみを乗り越えて新しい生活へと進むための時間の確保であり、安心の確保でもあるからです。
もし今、あなたが「何から手をつければいいのか分からない」「手続きが重荷で不安を感じている」という状態にあるなら、まずは一歩踏み出してみましょう。財産目録ができていなくても、親族で話がまとまっていなくても大丈夫です。今の状況を専門家にありのままに話すことで解決の糸口が見えてくるはずです。
私たちNexill&Partners(ネクシル・アンド・パートナーズ)グループには、弁護士・税理士・司法書士などの士業の専門家が所属し、相続のあらゆる手続きをワンストップでサポートする体制を整えています。相続のご相談は初回無料ですので、どうぞお気軽にご相談ください。
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