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コラム

NISA口座の遺産相続手続きはどうなる?相続税申告の注意点や非課税枠の取り扱いを弁護士が解説

2026.01.10

遺産相続の中で、「父が運用していたNISAはどうなる?」「非課税のまま家族が引き継げる?」といった相談が増えています。老後資金の形成として利用者が急増しているNISA(ニーサ/少額投資非課税制度)ですが、持ち主が亡くなった後のルールについては意外と知られていません。結論からいうと、NISAの「非課税」は、持ち主が亡くなった後は止まり、そのまま放置していると思わぬ手間が発生したり、税金面で損をしたりする可能性もあります。本記事では、NISA口座の遺産相続における基本ルールから、具体的な手続きや注意点を弁護士の視点から分かりやすく解説します。

第1章 NISAの相続で知っておきたい2つの基本

1-1 NISAの資産も遺産として相続税の対象になる

「NISAは国が推奨している制度だから、相続税はかからないのでは?」という誤解をしている方もいらっしゃいますが、それは明確な間違いです。NISA口座内にある株式や投資信託も、現預金や不動産と同じく相続財産(遺産)です。したがって、他の財産と合算して基礎控除額(3,000万円+法定相続人の数×600万円)を超える場合には、相続税の申告が必要になります。

1-2 名義人が亡くなったら非課税の扱いは終了

NISA口座の名義人が亡くなると、そのNISA口座は制度上廃止され、非課税の扱いは終了します。つまり、亡くなった日以降に発生する配当金や、値上がりによって得られた利益については、株式や投資信託など一般的な運用益と同様に、原則として約20%の税金がかかる対象になります。「NISAだからずっと税金がかからない」と思い込んでいると、想定外の税金が発生する可能性があるため注意が必要です。

第2章 手続きをしないとどうなる?放置するリスク

2-1 売却したくてもできない「口座凍結」の仕組み

金融機関が口座名義人の逝去を把握すると、その口座は「凍結」されます。これは遺産が不正に引き出されたり、処分されたりするのを防ぐため金融機関が約款などに基づいて行う取り扱いです。
NISA口座も例外ではなく、凍結されると相続人であっても自由に売却して現金化することができなくなります。株価は日々変動します。「高いから今売りたい」と思っても、正式な相続手続きが完了するまでは何もできません。手続きを後回しにしている間に株価が暴落し、相続したときには価値が半分になっていた、という失敗を避けるためにも迅速な対応が必要といえます。

2-2 配当金や分配金が受け取れなくなる可能性

NISAで高配当株や分配金が出る投資信託を保有していた場合、亡くなった後も配当が発生し続けます。しかし、口座が凍結されている間、これらの配当金は受け取ることができず、証券会社側で留保されることになります。これらを受け取るためには、やはり相続手続きを済ませて、相続人の口座へ名義を書き換える必要があります。また、前述の通り、亡くなった後に発生した配当金には税金がかかります。これらを放置して溜め込んでしまうと、後からまとめて税金の処理が必要になり、手続きがさらに複雑化してしまいます。

2-3 本来かからないはずの「税金」が増えてしまうリスク

NISA口座の資産は、亡くなった日の価格で一度「精算」されたとみなされます。その後、その口座を放置している間に株や投資信託が値上がりした場合、その値上がり分の利益に対しては約20%の税金がかかります。速やかに移管手続きを行い、相続人自身のNISA枠を活用して資産を買い直すなどの対策をしていれば、課税を抑えられた可能性があるので、相続手続の遅れによって発生してしまうプラスの税金といえます。

第3章 【これを見れば安心】NISA相続手続きの5ステップ

3-1 ①証券会社へ連絡して「口座の有無」を確認する

まずは、亡くなった方がどの証券会社でNISAを利用していたかを特定し、連絡を入れます。通帳がないネット証券の場合は、登録されているメールアドレスや、自宅に届いている年間取引報告書、あるいはスマートフォンのアプリなどを手がかりに探すことになります。もしどこの会社かわからない場合は、証券保管振替機構(ほふり)に対して「登録済加入者情報の開示請求」を行うことで、口座がある証券会社を一覧で確認することができます。

3-2 ②亡くなった日の時価(価格)を証明する書類をもらう

証券会社に連絡をしたら、相続手続きのための書類一式とともに「残高証明書」を請求します。この際、必ず「亡くなった日(死亡日)」時点での残高と時価を証明するように依頼しましょう。これが相続税の計算や、遺産分割の話し合いの根拠となる重要な書類になります。NISA口座だけでなく、同じ証券会社に特定口座などがある場合は、まとめて発行してもらうとスムーズです。

3-3 ③家族の誰が引き継ぐか話し合って決める

次に、NISAの資産を誰が相続するのかを家族で話し合います(遺産分割協議)。「株に詳しい長男が引き継ぐ」「売却して現金化し、兄弟で等分する」など方針を決めます。決まった内容は「遺産分割協議書」として書面に残す必要があります。この協議書に基づいて証券会社は名義変更の手続きを行います。

3-4 ④引き継ぐ人は自分の「証券口座」を用意する

亡くなった方の株を引き継ぐ場合、引き継ぐ相続人は同じ証券会社に自分名義の口座を持っている必要があります。他社の口座しか持っていない、あるいは証券口座を持っていない場合は、引き継ぎをする証券会社で口座開設の手続きを行いましょう。ネット証券であればオンラインで完結しますが、高齢の相続人の方にとっては、この口座開設の作業自体が大きな心理的・事務的負担になることも多いといえます。

3-5 ⑤書類を提出して名義変更(移管)を完了させる

すべての準備が整ったら、証券会社に必要書類を郵送します。
主な書類は、遺産分割協議書、亡くなった方の出生から死亡までの戸籍謄本、相続人全員の印鑑登録証明書などです。必要書類の詳細は証券会社ごとに異なるため、事前に確認した方が安心です。
提出書類に不備がなければ、通常数週間から1ヶ月程度で、亡くなった方の口座から相続人の口座へ資産が移し替えられます(移管手続き)。移管手続きが完了すると、相続人が自由に株を売却したり、そのまま運用を続けたりできるようになります。

第4章 税金と評価額の数え方

4-1 税金の計算に使うのは「亡くなった日の価格」

相続税を計算する際、NISA内の資産をいくらとして計上するかは法律で決まっています。株式市場は変動が激しいため、一時的な急騰で税金が高くなりすぎないよう以下の4つの金額のうち、最も低い金額で評価されます。

以下のうち最も低い金額で評価を行う
① 相続開始日の終値
② 相続開始日の当月の終値の月平均額
③ 相続開始日の前月の終値の月平均額
④ 相続開始日の前々月の終値の月平均額

この選択によって相続税額が変わる可能性もあるため、税理士など専門家によるサポートをおすすめします。

4-2 買ったときより値下がりしている場合の注意点

もし、亡くなった方が100万円で買った株が、亡くなった時に60万円に値下がりしていた場合、相続税上の評価は「60万円」となります。株式など通常の投資の場合、損失した40万円を他の利益と相殺する損益通算によって税金対策ができますが、NISA口座では損益通算はできません。こうしたNISA特有の税務上のルールを理解する必要があります。
※損益通算…複数の所得がある場合に、ある所得で生じた損失を他の所得の利益から相殺する計算方法

4-3 投資信託と株で計算の仕方が少し違う?

上場株式の場合は株価を追いますが、投資信託(つみたてNISAなどで主流)の場合は、少し計算が異なります。投資信託は「解約したらいくら戻ってくるか」という基準価額(解約価額)をもとに相続税の計算を行います。
なお、解約時にかかる手数料(信託財産留保額)など、相続税申告の際に控除できるものもあるため、申告時は気にしておきましょう。

第5章 こんな時どうする?NISA相続でよくある疑問

5-1 相続人が証券口座を持っていない場合は?

「NISA口座を持っていない」という方も少なくありません。しかし、名義変更の手続き上、被相続人名義の口座から相続人名義の口座に資産を移す必要(移管手続き)があります。投資を続けたくないとしても、原則として、まずは移管手続きを行い、それが完了した後で売却し、現金として自分の銀行口座に出金するという流れになります。

5-2 複数の証券会社に口座がある時はどう探せばいい?

最近は「米国株はA社、つみたてNISAはB社」と使い分けている方も多いです。
相続人が把握していない被相続人の口座を探すには、まずは確定申告の控えを確認しましょう。e-Taxを利用していれば、送信データの履歴から金融機関名が判明することもあります。また、銀行口座の履歴を見て、証券会社への入出金がないかを確認するのも有効な手段です。それでも見つからない場合は、先述の証券保管振替機構(ほふり)への照会が確実といえます。

5-3 新NISAになってから何か変わったことはある?

新NISAも、相続に関する基本的なルール(非課税は引き継げない、亡くなった時の時価で評価する等)は同じです。ただし、新NISAは投資枠が大幅に拡大され、無期限で保有できるようになったため、将来的に相続する金額が以前よりも大きくなることが予想されます。資産額が大きくなればなるほど、遺産分割で揉めやすくなるほか、相続税の負担が増すため、これまで以上に生前からの対策が重要になるといえます。

5-4 銀行でNISAをしている場合も手続きは同じ?

NISAは証券会社だけでなく、銀行窓口で投資信託を購入して利用しているケースもあります。この場合も手続きの流れは証券会社と同じです。まずは銀行へ死亡連絡を行い、投資信託を相続する人の投資信託口座を同じ銀行で作る必要があります。銀行の場合、預金口座の相続手続きと一緒に案内されることが多いですが、投資信託の手続きは預金とは別部署が担当することが多く、必要書類が追加になることもあるので注意が必要です。

第6章 まとめ:NISAの相続は早めの行動が大切です

本記事では、NISA口座の遺産相続について解説しました。最後に重要なポイントを振り返ってみましょう。

  • NISAの非課税メリットは、持ち主が亡くなった時点で終了する
  • 相続手続きが完了するまで、資産は「凍結」され売却もできない
  • 相続人は、原則として同じ金融機関に自分名義の口座を作る必要がある
  • NISA資産も相続税の対象であり、亡くなった日を起点とする価格で評価される

NISAの相続手続きは、単に書類を出すだけの作業ではありません。戸籍の収集から始まり、金融機関との煩雑なやり取り、親族間での遺産分割協議書の作成、専門的な知識を要する税務申告まで、想像以上に多大な手間と時間がかかります。特にネット証券などは手続きがデジタル化されている一方で、不備があると何度もやり直しになり、その間に株価が変動してしまうリスクも無視できません。こうした複雑な手続きを、ご自身だけで正確に進めるのは心理的にも大きな負担となるはずです。
私たちNexill&Partners(ネクシル・アンド・パートナーズ)グループでは、弁護士、税理士、司法書士が緊密に連携するワンストップ体制で、お客様の相続をトータルにサポートしています。「何から手を付ければいいかわからない」「複数の窓口に相談に行く時間がない」という方もどうぞご安心ください。窓口を一つに絞ることで、お客様の状況をチーム全員が共有し、無駄のないスムーズな解決をお約束します。相続についてお悩みがある方は、まずは一度お気軽にご相談ください。
 

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監修者:後藤 祐太郎
弁護士後藤 祐太郎

弁護士法人Nexill&Partners

弁護士後藤 祐太郎

  • 2010年
    日本大学法学部 卒業
  • 2012年
    慶應義塾大学大学院法務研究科 修了
  • 2014年
    竹口・堀法律事務所 入所
  • 2016年
    現:弁護士法人Nexill&Partners 入所 那珂川オフィス支店長 就任

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