遺言による贈与には、条件や期限を付けることができます。
今回は、少し特殊な遺贈についてお話ししていきます。
まず、条件付遺言には、一定の条件の成就を効力発生要件とする停止条件付遺言があります。
通常の遺贈は、遺言者の死亡と同時に効力が発生します。
これに対して、停止条件付遺言は、遺言者によって定められた条件が成就した時に効力が発生します。つまり、条件が成就しない限り、遺言の効力は発生しません。
例えば、「孫が大学に合格したら預貯金を遺贈する」との遺言がなされた場合、孫が大学に合格するという条件が成就した時にはじめて遺贈の効力が発生します。
また、「Aに甲土地を遺贈する。もしAが遺贈を放棄した場合には、Bに甲土地を遺贈する」といった遺言も、Aにとっては単純な遺贈にあたりますが、Bにとっては停止条件付遺贈にあたります。
ただし、不法行為を行うこともしくは不法行為をやめることを条件とすることは認められません。
また、一定の条件が成就するまでは効力が生じる解除条件も付けることができます。
この解除条件付遺贈の場合には、遺言者の死後、解除条件が成就するまでの間は遺言の効力が生じますが、解除条件が成就した時にその効力が失われることになります。
例えば、「孫に預貯金を遺贈するが、大学を退学した時は遺贈は失効する」との遺言がなされた場合、孫が大学を退学しなければ遺贈は有効に生じますが、退学したらその時に遺贈の効力は失われることになります。
次に、期限付遺贈とは、将来確実に到来する時期を遺贈の効力発生時期(始期付遺贈)もしくは効力消滅時期(終期付遺贈)として定めた遺言による贈与のことをいいます。
始期付遺言の場合には、特定の時期が到来した時に遺贈の効力が発生します。一方、終期付遺贈の場合には、特定の時期が到来した時に遺贈の効力が消滅します。
例えば、「私の死亡後、1周忌が来たら、子に土地を遺贈する」という遺言がなされると、特定の時期の到来時に遺言の効力が発生することから始期付遺贈となります。
条件と期限の違いについては、将来発生するか否かが不確実な事項が条件にあたり、将来到来するのが確実な事項が期限にあたります。
例えば、「大学に合格したら」「結婚したら」等は将来確実に実現するか否かが不確実である以上、条件にあたります。一方、「月末に」「3年後に」等は確実に将来到来することから期限にあたります。
もっとも、「出世払い」については、出世するか否かは不確実であるため、条件にあたるようにも見えますが、条件とは解されていません。判例は出世払いを不確定期限として、出世できないことが明らかになった時には期限が到来したものと判断しています。
また、受遺者が条件の成就又は期限の到来前に亡くなった場合には、遺贈の効力は消滅することになります。その結果、遺言のうち当該受遺者に対する遺贈部分のみが無効となり、遺贈予定だった遺産は原則通り法定相続となります。
このように、遺言者は、遺贈に条件や期限を定めることで、遺言を希望通りに活用することができます。
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