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遺産相続コラム

共同遺言の禁止

2016.05.24

遺言書の作成には、厳格な要式がいくつかあります。これらの要式に誤りがあれば、遺言の効力が生じないことから、各要式について知っておく必要があります。
今回はそのうちの一つ、共同遺言の禁止について解説していきます。

共同遺言とは、2人以上の者が同一の証書で遺言をすることをいいます。共同遺言は、民法975条によって禁止されています。共同遺言が認められてしまうと、一方の遺言者の意思内容や撤回の自由が他方の意思によって制約されるおそれがあり、遺言自由の原則に反することとなり得るからです。また、一方の遺言が失効した場合に他方の遺言の効力に疑義が生じる可能性もあります。

共同遺言として禁止されているものは、以下の3つの種類があります。
① 単純共同遺言
2人以上の者が同一の用紙を用いた別個の遺言
例:夫婦が同一の用紙にそれぞれ独立した内容の財産の処分について書いた場合
② 双方的共同遺言
2人以上の者が同一の用紙を用いて、互いに遺贈し合う旨の遺言
例;夫婦が同一の用紙に先に死亡した方の財産を他方が取得する旨書いた場合
③ 相関的共同遺言
2人以上の者が同一の用紙を用いて、互いに他方の遺言を自らの遺言の条件とする旨の遺言
例:夫婦が同一の用紙に他方の遺言が失効すれば自らの遺言も失効する旨書いた場合

もっとも、一見共同遺言に見える遺言書であっても、共同遺言にあたらない場合もあります。
判例によると、同一の証書であっても、それが容易に切り離すことができる場合には、共同遺言にあたらないとされています。
具体的には、Aさんの遺言書2枚とBさんの遺言書2枚を合わせて同一の証書としてまとめている場合であっても、Aさんの遺言書とBさんの遺言書を容易に切り離すことができれば、共同遺言にあたらず遺言は有効となります。
また、同一の証書に連名で遺言が書かれており、形式的には共同遺言にあたる場合であっても、その内容が実質的に単独遺言であると評価できる場合には、共同遺言にあたらないと解する判例もあります。

ただし、同一の証書に記された遺言のうち、一方に方式不備がある場合には、共同遺言として扱い、方式を備えている他方の遺言についても効力が生じないものと解されています。そのため、別個の遺言であると解し得る場合であっても、一方の方式不備によって両方とも無効とされる可能性があることから、遺言の方式には十分に気を付ける必要があります。


このように、夫婦で共に遺言書を作成するにあたっては、共同遺言にあたらないよう留意しなければなりません。結局のところ、1つの証書に複数人で遺言書を書いても何のメリットもありませんね。遺言書である以上、ご本人がお亡くなりになったときに、その効果を発揮することが期待されるものですが、複数人で書いても、その方々が同時にお亡くなりになることなんて天文学的確率になってしまいます。やはり面倒ではあっても、遺言書はそれぞれがそれぞれの遺産について、それぞれの希望を明記し、互いに独立したものとして保管方法も決めて作成すべきでしょう。遺言についてわからないことがあれば専門家に相談することをおすすめします。
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監修 菰田泰隆

KOMODA LAW OFFICE(弁護士法人菰田総合法律事務所)

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