終活ノート(エンディングノート)とは、セカンドライフとしてやりたいことや楽しいと思えること、病気になった際の医療方針などをまとめておくノートのことをいいます。自分で行っていきたいこと等を整理することで生前対策に繋がるだけでなく、死後の相続の問題についても向き合うことができる良い機会です。
本コラムでは、終活ノート(エンディングノート)に書くべきことや遺言書とのすみ分けについて、弁護士の立場から解説いたします。
「遺言書を作成したいけど、どのような内容にすべきか分からない」「エンディングノートと取り扱いはどう違うの?」等、法的な側面も含めてお話いたしますので、今後の生前対策にお役立ていただけたらと思います。
もくじ
終活ノート(エンディングノート)で書いておくべきこと
エンディングノートを作りましょうとお話しすると、「何を書けばよいのでしょう」というご質問をいただきます。
当事務所では「これから先のこと、そしてなくなった後のこと、自分が希望することを何でも書いてよいのです」とお話しますが、そうすると「何でもといわれると余計に分からない」とおっしゃる方も多いです。
実際に何でも書いてよいのです。
内容も幅広くてかまいません。
それこそが、エンディングノートの良さなのです。
でも、このブログでは分かりやすいように、具体的な内容の例をご紹介しようと思います。
その前に一つだけ脇道にそれる話ですが、書かない方がよいと私どもが思うのは、「人の悪口」です。
何でも書いてよいものとはいえ、最終的には家族が目にするものです。
「人に見られるもの」という大前提を、念頭に置いた書き方がよろしいかと思います。
それ以外は、自由な文章でかまわないと思います。
エンディングノートに記載する項目例
これからの人生方針・介護の体制
最初に書くのが、人生の最終章であるこれからの人生についてです。
例えば、一番身近なものは介護についてでしょう。
どのようなスタイルの介護を希望するのかということを、認知症になって自分で伝えられなくなることを前提に、書いておくとよいと思います。
あと、重病になってしまった時のことを考えて、延命措置を希望するのかとか、臓器提供に対する気持ち、癌などの告知についてなども、記しておきたいものです。
お墓・葬儀の対応
お墓はどうするのか、自分で用意するにしても子どもに託すにしても、自分の希望を固めてノートに書き記しましょう。
墓地・墓石は相続税の非課税財産なので、当事務所では生前にご用意されることをおすすめしております。
あと、家族が一番迷ってしまうのが、葬儀についてです。お墓までは、生前に用意する方が多くなっているのですが、葬儀のことになるとまだ生前に用意する慣習が薄くて、そこまでされる方は少ないようです。
このような葬儀がよいとか、遺影はこの写真が希望とか、必ず連絡して欲しい人のリストや葬儀の予算希望などは、エンディングノートに書いておいてあげると、残された家族は葬儀の詳細を決める時に楽だと思います。
ご自身で、事前に葬儀社と契約されている場合には、どこのどの葬儀社にどのように契約しているのかをエンディングノートに残します。
ご自身が保有している資産
実は家族であっても意外と、総資産の詳細を知らないことが多いのです。
財産の所在と、どのように管理をしているのかについては、エンディングノートに記しておくとスムーズです。
いつも使う通帳に入っている現金や、住んでいる不動産はさすがに分かりますが、生命保険や株券、外貨預金や会員権など、家族にとっては分かりづらいのです。
それをまとめてその上で、遺言書の有無を記載しておきましょう。
相続に対する自身の考えも書いておくと、あなたの気持ちが伝わりやすくなります。
相談している弁護士がいるのであれば、その弁護士の連絡先も書いておきましょう。
残された家族へのメッセージ
遺言として残された家族に伝えたいことも、エンディングノートに書いておくと、言葉よりも伝わりやすいです。
財産とまではいえないような身のまわりのもの、例えば着物や楽器など、自分が大切にしているものを譲り渡したい方がいれば、それも書いておくと家族は分かりやすいです。
ただ相続に関することは、遺言書に残すようにし、遺言書があることをエンディングノートに書いておくようにします。
終活ノート(エンディングノート)と遺言書は何が違う?
法的な効力について
エンディングノートには遺言書としての効力は全くないということを、ここで理解し気をつけていただきたいと思います。
意外と知られていそうで知られていないのが、遺言書とは三種類あり、その全てが公的な文書として認められます。
それだけに、いろいろなルールがあり、それに則っていませんと、遺言書としては認められないのです。
財産分割や相続、事業継承のことなどの重要な内容に関しては、遺言書というきちんとした形で残していただく必要があります。
かろうじてエンディングノートに近いものが、自筆証書遺言書というものなのですが、これでさえも、遺言者が直筆で全文をつくり、日付、氏名も全て直筆、そして最後に押印がなければいけないというルールがありますので、エンディングノート=自筆証書遺言書とはならないのです。
記すことができる内容
遺言書に、書いてはいけない内容は決まっていません。そのため、何を書いても問題ありません。
しかし、遺言書に財産分割や事業継承等重要な項目とは異なるあまりにも細かいこと、例えばお墓のことや葬儀のこと、身のまわりのものの処分についてなど、書きすぎてしまいますと、本当に遺言書を通さなければならない重要な事柄が、それらに埋もれて煩雑で分かりづらくなってしまいます。
そのため、できれば法的にきちんと処理を行わなければならない内容を遺言書にはまとめ、それ以外の部分に関してはエンディングノートに記すというのが理想的です。
遺言書は亡くなった後の話しか書けませんが、エンディングノートであれば、自分が生きる老後のことについても書くことができます。
日本人は長生きです。
いわゆるシニアライフは、想像しているより長いのです。
自分の人生を自分らしく過ごすためにも、エンディングノートは重要なアイテムなのです。
まとめ
ここまで終活ノート(エンディングノート)の記載例と、遺言書の作成について整理いたしました。
上記の内容からもお分かりの通り、記しておくべき内容や効力も異なるため、ぜひ両方を整理していくことをおすすめします。
当事務所では「相続に関わる全てのお悩みを解決したい」という理念のもと、総合的なアドバイスをさせていただいております。
「どこまでを遺言書に記載すべきか分からない」等の生前対策に関するご相談にも対応しておりますので、ぜひお気軽にご相談ください。
記載内容は投稿日時点のものとなり、法改正等で内容に変更が生じる場合がございますので予めご了承ください。
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