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事実婚のパートナーに確実に財産を残すために –事実婚の方の相続準備と対策について弁護士が解説

2015.08.31

弁護士法人Nexil&Partnersでは、さまざまな相続のご相談をいただきます。
昔も今も、いろいろなスタイルの相続がありますが近年、更にそのスタイルが多様化してきています。
その一つが「事実婚」です。

芸能人ですと、萬田久子さんなどが事実婚で有名です。
もうずいぶんと前の話になりましたが、内縁の夫であった佐々木力さんが亡くなり、やはりその時、萬田久子さんへの遺産相続に関する話題が絶えませんでした。
数年経過し、萬田さんご本人がトークショーで語っていらっしゃいましたが、やはり遺言などはなく、遺産は受け取っていらっしゃらないそうです。

萬田さんの場合、ご本人も遺産を受け取りたいとは考えていらっしゃらなかったらしいので、この場合は問題ないのかもしれません。
でも事実婚の場合でも、パートナーに遺産をと考える方も、少なくはありません。

どんなに長いこと、本当の夫婦同様に生活をしていても、事実婚の場合は、パートナーは法定相続人にはなれません。
つまり遺言を用意し、パートナーに遺産分割をしたい旨を記しておかなければならないのです。

もくじ

1.事実婚における相続上の位置づけ

1-1.事実婚と法律婚の大きな違い

事実婚とは、法律上の届出(婚姻届)を出さないまま、夫婦同然の共同生活を営んでいる状態を指します。近年はライフスタイルの多様化により、事実婚を選択する方も増えつつあります。しかし、民法上の「相続」に関しては、法律婚の夫婦とは大きく扱いが異なります。具体的には、法律婚の夫婦はお互いが法定相続人となり、配偶者として相続分が与えられますが、事実婚の場合は法定相続人になれません。そのため相続の際には、故人の配偶者としては扱われないのが現状です。

1-2.法定相続人になれない理由

日本の民法が規定する相続法では、「配偶者」とは婚姻関係を結び、戸籍上も夫婦として認められた当事者を意味します。つまり、戸籍に夫婦として記載されていない事実婚のパートナーは、たとえ長年連れ添っていたとしても、法律上の「配偶者」には該当しません。結果として、パートナーは相続権が発生しない立場に置かれます。

1-3.遺留分との関係

また、事実婚の配偶者には遺留分も認められません。遺留分は法定相続人に最低限保障される取り分を指すため、「法律上の配偶者」や子どもなどには請求権がありますが、内縁関係・事実婚のパートナーは該当しないため、遺留分権利者にもなれないのです。遺留分が期待できない以上、事実婚のパートナーに財産を残したいならば遺言書や生前贈与など、別の方法が必須になってきます。

2.事実婚カップルが相続対策を考える重要性

2-1.「遺言の必要性」を強く認識すべき理由

先述のとおり、法律上の夫婦と違い、事実婚のカップルは法定相続人ではありません。つまり、もしパートナーに何らかの財産を残したいのであれば、「遺言書」を作成しておく必要があります。
近年は多様な働き方や価値観の変化に伴い、あえて法律婚をしない選択を取る方も多くはなっていますが、法制度自体が大きく変わらない限り、「法律婚でなければ配偶者とは認められない」という原則が続きます。実務レベルでも、事実婚の方からのご相談は年々増えており、当事務所でも「パートナーにどうしても財産を残したいが、手続きが分からない」「相続権がないと聞いて焦っている」といったご相談が寄せられています。

2-2.相続税や贈与税への影響

また、事実婚のパートナーに財産を遺贈(遺言書による贈与)した場合、受け取った側の相続税負担は通常の「配偶者控除」が適用されません。法律婚の配偶者ならば、相続税を大幅に軽減できる「配偶者の税額軽減」という優遇措置があるのですが、内縁関係や事実婚には適用されないのです。そのため、実際に残る財産額にも大きな差が出るケースがあるので注意が必要です。

4.相続における「事実婚」の具体的なケース

4-1.長年連れ添い、子どももいる場合

事実婚の状態で子どもをもうけたカップルでは、子ども自身は法律上「非嫡出子」に該当していたとしても、認知などを経ていれば相続権を有します。しかし、パートナー(事実婚の配偶者)には相続権がありません。つまり親子間で相続は生じても、パートナーには一切財産が行き渡らない状態です。
仮に子どもが「お母さん(またはお父さん)に遺産を貰ってほしい」と願っても、法的には「相続権は子どもにのみある」状態なので、子どもが一旦相続した後に親へ贈与する形を取るような形となりますので、配偶者にも相続をさせたい場合は事前の遺言がなければスムーズに進みにくい面があります。

4-2.お互いに独立した収入があり、子どもがいない場合

子どもがいない事実婚カップルは、相続時には故人の血族(親・兄弟姉妹など)が法定相続人になります。何年一緒に暮らしてきても、戸籍上の配偶者でないパートナーが遺産を受け取れないまま、遠方の兄弟姉妹が突然相続人となる可能性がありますので、「長年支え合ってきたのに、何も残せない」事態を防ぎたいなら、やはり遺言書作成が不可欠です。

4-3.高齢になってから再婚的に事実婚を選んだケース

離婚や死別後などに新たなパートナーと暮らす場合、子どもが既に大人になって独立していることも多いです。こうしたケースでは、相続が発生すると、その子ども(前配偶者との子など)がすべてを相続する可能性があります。高齢になってから事実婚を選ぶときこそ、早めに遺言書や生前贈与、信託などを検討し、後々の相続トラブルを回避するのが望ましいです。

5.遺言書を作成する際の注意点

5-1.事実婚のパートナーに渡す財産割合の考慮

遺言書で「パートナーに○○の財産をすべて遺贈する」と定めれば、法的にはその通りに遺産が分配されます。しかし、ここで気を付けておかなければならないのが遺留分の問題です。
遺留分とは、一定の範囲の法定相続人に最低限認められている相続分のことで、遺言者があった場合でも決められた割合までは相続財産を受け取れるような制度になっています。
(関連記事として遺留分の記事を内部リンクで入れたらいいかもです)

兄弟姉妹のみが相続人なら遺留分は発生しないため、100%パートナーに遺贈しても問題は起きづらいでしょう。しかし、遺留分の請求権を持っている法定相続人(子、親などの直系尊属)がいる場合は遺留分を請求される可能性があるため、そこを考慮したうえでパートナーに渡す財産の割合を決める必要があります。

5-2.遺言書を作成したあとのフォロー

事実婚のパートナーは法律上の相続人ではないため、通常の相続手続(戸籍収集、相続税申告、遺産分割協議など)に直接参加できません。遺言書で遺贈の受取人に指定されていても、相続手続を相続人として進められる立場にはなれないので、実際に相続が発生した際に相手が困らないように以下のような点を考慮しておくと安心です。

1.遺言書のありか・保管方法を事前に伝えておく

相続発生後、遺言書が見つからない場合は遺産を受け取れないため、遺言書の保管場所はきちんと共有しておきましょう。また、自筆証書遺言を自宅で保管する場合は裁判所以外での開封は厳禁となるため、自分が亡くなった後にどのような手順を取ってほしいのかも含めて日ごろから伝えておくことが大事です。

2.相続人との連絡経路を確保する

自身の死後に、残されたパートナーが他の相続人ときちんとやり取りが行えるよう、相互の連絡方法を事前に話し合っておくことも大切です。
他の相続人に対しても、事前にパートナーとの関係性を含めて死後にどのようなやり取りをしてほしいのかを話しておくことで、その後のトラブルを避けることにもつながります。

3.相続税の申告が必要になるかもしれないことを認識しておく

大きな財産を遺贈された場合、相続税の支払い義務が発生することがありますので、納税に備えた準備も必要です。事実婚の場合は配偶者控除などの特例が使えないため、実際の税負担が予想より高くなる場合があるため、遺贈を受けたら税理士に相談に行ってねというように事前に伝えておくと安心です。

いずれにしても、残されたパートナーが困らないように日ごろから相続についての話をしておくことが大切になります。

6.事実婚の相続対策で活用される生前対策・契約

6-1.家族信託(民事信託)

近年、相続対策として「家族信託」を利用するケースが増えています。家族信託とは、委託者(財産を持つ人)が受託者(信頼できる人)に財産管理や運用を任せ、利益を受け取る受益者を指定する仕組みです。 家族信託における信託財産は相続発生時の遺産分割の対象から外れるので、事実婚のパートナーを「受益者」に設定することで、相続時にもパートナーの生活を守る計画を立てやすくなります。(法的に複雑な面がありため、信託契約書の作成含めて信託の組成には専門家のサポートが不可欠です。)

6-2.死因贈与契約

遺言書以外にも、死因贈与契約という方法があります。これは、贈与者(財産所有者)が死亡したときに、受贈者(贈与を受ける側)が財産を取得する贈与契約の一種です。内容としては遺贈に近いですが、贈与契約の性質を持つため、事実婚のパートナーに財産を残す一つの手段として活用される場合があります。

6-3.任意後見契約

相続対策とあわせて、将来的に認知症などで判断能力を失ったときに備える「任意後見契約」も検討される方が多いです。任意後見とは、自分の判断能力が無くなってしまった際には事前に指定した任意後見人に財産管理含めた法的行為を代理できる権限を与える契約となり、この任意後見の受任者として事実婚のパートナーを選ぶことは可能です。ただ、これは相続そのものを保証するものではなく、あくまで生前の財産管理や生活支援が目的である点に留意が必要です。

7.事実婚パートナーに対する生命保険の活用

7-1.受取人をパートナーにする利点

生命保険は受取人を自由に指定できるため、法定相続人以外の人が保険金を受け取ることができます。事実婚パートナーを受取人にすれば、保険金が直接そのパートナーに渡るので、死亡後の生活保障として役立ちます。 また、生命保険の死亡保険金は原則として「みなし相続財産」として扱われるため、相続税計算上の非課税枠(500万円×法定相続人の人数)を適用できる場合があります。ただし、厳密には受取人がパートナーの場合に非課税枠をどう扱うかは、法定相続人の人数に基づく計算など、税務上の複雑な判断が必要です。専門家への確認をおすすめします。

7-2.保険金受取後の税務とトラブル回避

仮に生命保険金が事実婚パートナーに支払われても、それだけでは他の法定相続人からの異議申し立てがないとは限りません。保険金自体は受取人固有の権利という考え方が一般的ですが、亡くなった人の総財産との関係、納税義務などをめぐり相続人との軋轢が生じるケースも。 事前に弁護士や税理士と相談し、ライフプランに合わせた保険金の額や契約内容を検討しておくと、リスク軽減につながります。

8.事実婚における相続対策の流れと当事務所のサポート

8-1.現状の整理から始める

事実婚を選択している方は、まず以下を整理するとよいでしょう。

1. 自分の法定相続人は誰なのか(子どもがいるか、親は存命か、兄弟姉妹はいるか)。
2. パートナーにどの程度の財産を残したいか。
3. すでに保険契約や住宅ローンなどがある場合、それらをどのように処理するか。

こうした情報をまとめたうえで弁護士に相談すれば、遺言書作成や生前贈与、保険活用などの具体案をスムーズに検討できます。

8-2.当事務所にご依頼いただくメリット

当事務所には、弁護士だけでなく税理士・司法書士・行政書士など各士業がそろっており、グループとしてワンストップで相続・生前対策をサポートしています。事実婚に特有の相続上の悩みについても、以下のような形で支援可能です。

  • 法律面:遺言書の種類、内容の検討、家族信託や死因贈与契約などのアドバイス。
  • 税務面:相続税・贈与税の試算、生命保険の活用に伴う税金シミュレーション。
  • 登記や書類作成:公正証書作成の補助、不動産名義変更や相続登記への対応。

おひとりおひとりのご事情・ご状況に沿った提案をさせていただきますので、まずは初回無料相談をご利用ください。

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9.本コラムのまとめ:事実婚でも「相続の準備」は早めに始めましょう

事実婚の方にとっては、法律上の相続の扱いはまだ厳しく、パートナーを「法定相続人」にできないのが現実です。だからこそ、財産を残したいという思いがあるならば、遺言書の作成を含めて早期に具体的な対策を始める必要があります。 また、相続発生時に万が一トラブルが起きた際には法的に対抗できる手段が限られるため、日頃から弁護士へ相談しながら準備を進めるのが望ましいでしょう。
当事務所では、法律婚・事実婚を問わず、相続対策に関する幅広いご相談を承っております。「パートナーに遺産を遺したいが、どこから手をつければよいか分からない」「遺言書を書きたいが、書き方や保管の仕方が不安」といったお悩みがありましたら、ぜひお気軽にご相談ください。

 

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