将来、認知症や病気で判断力が衰えたとき、大切な財産や生活を誰に託すか――任意後見契約はその備えとして有効ですが、「弁護士に頼むと費用はどれくらい?」と不安を抱く方は少なくありません。本コラムでは、契約書作成時の初期費用から後見開始後の月額報酬、監督人の報酬まで大体の費用の目安についてお伝えします。
もくじ
1.弁護士に依頼する任意後見契約とは
1-1.任意後見制度の概要と弁護士が担う役割
任意後見制度は、本人(委任者)が十分に判断能力を有しているうちに「判断能力が低下したときは、この人(受任者=将来の任意後見人)に財産管理や身上監護を任せる」と約束しておく仕組みです。将来、認知症などで判断能力が低下し、ご自身での意思決定が難しくなった場合は、この契約内容を軸に受任者が任意後見人として本人の生活と財産をサポートします。
任意後見契約の締結と、その後の後見業務を弁護士に依頼する最大のメリットは「法的リスクの最小化」があげられます。例えば、任意後見契約書を作成する際に、契約書の条項が抽象的すぎると、後見業務の開始後に「権限の範囲」や「費用負担」の部分でトラブルの原因になりがちです。後見契約は、契約書作成から実際の後見業務開始まで期間が空くことも多く、将来どこで問題が起こるかも予測がつきづらいことから、後見契約書の作成段階で法的に正確な契約書を作ること、実際の後見業務も専門家が滞りなく行うことが本人の財産管理を適切に実施するためには重要であるといえます。
2.弁護士費用の全体像と報酬体系
2-1.任意後見の報酬はどう設定される?
弁護士に任意後見を依頼する費用は、大きく「契約締結時の初期費用」と「後見開始後の月額報酬」に分かれます。前者は契約書案作成から実際の公正証書作成までの手数料として設定されることが一般的で、費用としては10万〜25万円程度になることが多いです。後者は後見業務が開始してから発生するもので、後見業務にかかる報酬が中心となります。財産規模と業務量に応じ、月額2万〜5万円程度が相場の目安となります。
なお、任意後見契約書を作成する場合は、契約書作成にかかる手数料のほかに、公証役場に支払う実費(公証人手数料)、公正証書作成時に使用する本人・受任者の戸籍・住民票、印鑑証明、診断書などの取得実費が別途かかってきます。(大体の目安は総額1万〜2万円程度)
2-2.後見報酬の目安と計算方法
任意後見の月額報酬は、基本報酬と特別報酬の大きく分けて2種類があります。
基本報酬は、日常的な財産管理や身上看護、定期報告などの後見業務に対する対価で、財産の規模や財産管理の手間によって報酬額を算定します。このほかに、施設等への定期訪問が多いなど、業務の頻度が増えるようなケースでは、報酬が加算される場合もあります。(大体の目安は月額2万~3万、財産や業務頻度が多くなると5万~6万円程度となります。)
特別報酬は、不動産売却・高額契約の締結など、通常業務以外のイレギュラーな業務が発生した場合に追加される報酬で、支給の可否や金額は家庭裁判所の承認を経て決定されます。
また、上記の報酬に加えて、実費精算として、交通費・郵送料・登記費用など後見人が立替えた経費は別途請求できます。
3.よくある質問Q&A
Q.弁護士費用はどの段階で支払うの?
任意後見契約書の作成手数料については、業務の着手前に支払うことが一般的です。(手数料の支払いを確認した後に、業務着手の事務所がほとんどですが、事務所によっては分割払い等を受け付けているところもあります。ここは依頼先の事務所に確認をされてください。)
後見業務が開始した後の月額報酬については、本人の預金口座から出金の上で支払いが必要となります。
Q.途中で契約内容を変更すると追加費用は?
本人に意思能力が残っている間は契約の変更・撤回が可能ですが、再度公証役場にて後見契約書の作成手続を行わなければならないため、再度契約書作成手数料と公証人手数料が掛かります。なお、後見開始後の権限拡大は家庭裁判所の許可が必要となり、報酬が増額されるケースもあります。
Q.弁護士法人を後見人にするメリットは?
弁護士個人を後見人にする場合、弁護士個人が病気等で業務が継続できなくなってしまう可能性がありますが、弁護士法人であれば法人として後見業務を受けているため法人内の別弁護士へと速やかに業務を引き継げるため、後見業務が途切れません。弁護士個人と比較して、組織的な対応ができる部分がメリットといえます。
Q.任意後見より家族信託の方が安い?
家族信託は公正証書作成費用・登記費用に加え、信託契約の組成費用が30万〜60万円程度かかるのが一般的です。家族信託を使っての資産の運用管理が家族の無償労務による場合は安く見えますが、専門家が受託者や信託監督人に就くと、任意後見と同じく、その分の報酬が発生します。目的や財産規模によってどちらを選択すべきかの最適解は異なるため、専門家に相談の上で双方を比較しベストな形での相続対策を取られることが望ましいでしょう。
4.まとめ—費用を理解して納得の任意後見契約を
任意後見を弁護士に依頼する際の費用としては、任意後見契約書の作成にかかる手数料に加えて、後見業務開始後の報酬があげられ、財産規模や業務範囲によって変動があります。
「まずはいくら掛かるのか知りたい」「家族信託と迷っている」といったお悩みをお持ちの方は、ぜひ初回無料相談をご利用ください。ご状況をお伺いの上で、任意後見契約が適切かどうかを含めて最適なご提案をさせていただきます。
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