ご相談内容
今回は、実際のご相談内容をもとに、「代襲相続」と「遺留分」についてご説明いたします。
80代女性のAさんからのご相談です。
10年前にご主人を病気で亡くされてからは、1人暮らしをしているとのことです。
最近になって、ご主人も子どももいないAさんは、ご自身が亡くなった時、財産がどうなるのかが気になってきたとのことで、今回ご相談に来られました。
Aさんのご両親は既に亡くなっており、Aさんには妹(Bさん)と弟(Cさん)がいましたが、うちBさんは既に亡くなっており、Bさんには1人娘(Dさん。Aさんの姪)がおられるとのことです。
Aさんの家族構成を図にすると、次のようになります。
代襲相続とは
Aさんの相続人は誰でしょうか。
Aさんに相続が発生した場合には、弟のCさんと、姪のDさんが相続人となります。
Dさんは、親であるBさんに代わって、Aさんの相続人になるというわけです。
このように、法定相続人が既に死亡しているなどの理由で相続できないとき、その子どもなどが代わりに相続する場合を「代襲相続」といいます。
Aさんの思い
Aさんは、ご主人を亡くされてから、Dさんに何かと身の回りの世話をしてもらっていました。
幼いときに母親であるBさんを亡くしたDさんは、Aさんを実の母親のように慕い、Aさんもまた、Dさんを実の娘のように大切に思っていました。
そこでAさんとしては、できれば全財産をDさんに引き継いで欲しいとの考えがありました。
他方、Aさんは弟であるCさんとはあまり良い関係性ではありません。
Cさんは若い頃、お金に困るたびにAさんに金の無心をしてきており、その際に貸したお金も返ってきていないとのことでした。
最近は法事等で数年に1度会うくらいですが、顔を合わせると喧嘩になるような状況でした。
そのため、Aさんとしては、Cさんには財産を渡したくないと思っていました。
Aさんの悩み
しかし、Aさんには心配なことがあるようです。
Cは昔から自己主張が強く、Dは大人しくてあまり反論などできないので…。
インターネットで調べて『遺留分』というものがあると知ったのですが、私がDに全てを渡してしまったら、Cが遺留分を主張することになるのでしょうか?」
遺留分とは?
「遺留分」とは、噛み砕いてご説明すると、民法上定められている、法定相続人の方が、最低限相続できると期待できる割合のことをいいます。
遺留分の事例
例えば、ある方(Xさん)が亡くなり、法定相続人がお子様2人(YさんとZさん)である場合、法定相続分はYさんとZさんとで2分の1ずつです。
この場合、XさんがYさんに全財産を相続させるという遺言書を書いていた場合、ZさんはYさんに対して何か主張できないのでしょうか?
この時に問題になるのが遺留分です。
子であるZさんは民法上、遺留分として、法定相続分の更に2分の1については取得する権利があるため、4分の1(2分の1の2分の1)の遺留分を有します。
つまり、ZさんはYさんに対し、Yさんが相続したXさんの全財産の価値の4分の1に相当する金額について、Zさんに金銭を支払うよう請求することができ、この請求を「遺留分侵害額請求」と言います。
きょうだいの遺留分
さて、AさんはCさんにこの「遺留分」があり、CさんがDさんに請求をした場合、Dさんは相続した財産のうちの一定割合について、金銭を支払わないとならないのではないか、と心配されています。
しかし、実はきょうだいには遺留分がありません。
そのため、Dさんが全財産を相続しても、Cさんには遺留分がない以上、DさんはCさんに対し何も支払う必要はないのです。
Cさんに遺留分がないことをお伝えすると、Aさんは安心されて、Dさんへ全財産を相続させるという内容の遺言書を作成されました。
最後に
今回の「代襲相続」や「遺留分」は、基本的な相続知識ではありますが、このような知識が不明確だと、それだけで不安の種になってしまいます。
今回は基礎的なお話でしたが、実際は個別ケースに応じて複雑になる場合もあります。代襲相続や遺留分でお困りの方は相続に強い福岡の法律事務所、弁護士法人菰田総合法律事務所までぜひご相談ください。
記載内容は投稿日時点のものとなり、法改正等で内容に変更が生じる場合がございますので予めご了承ください。