法定相続人とは、民法で定められた、被相続人の財産を相続できる人をいいます。
遺言書があれば相続できる人は法定相続人に限られませんが、遺言書がない場合には法定相続人が相続することになります。
法定相続人の順位
被相続人の配偶者は常に相続人となりますが、それ以外に法定相続人になる人(被相続人の血族)については、民法上順位が決まっており、以下のように定められています。
第2順位:親、又は祖父母等
第3順位:兄弟姉妹、又はその代襲相続人
※代襲相続人とは、分かりやすくいうと、法定相続人である親が死亡している場合等に、その子が親に代わって相続人となることをいいます。
ご相談事例
以下のようなご相談をお受けしたことがあります。
弁護士(以下:弁)「こんにちは。今日はどうしましたか。」
ご相談者様(以下:相)「実は、先月兄が病気でなくなりまして、それで少し迷っていることがありまして…」
弁「そうでしたか。それはご愁傷様です…」
相「ありがとうございます。私は兄を含めて4人兄弟の末っ子です。
兄はほかの兄弟3人より少し年が離れていて、成人後起業して会社を大きくし、それなりの資産を抱えるようになりました。
経済的余裕がない家庭だったのですが、両親に代わって私達兄弟の学費等の援助をしてくれました。」
弁「お兄様にとてもお世話になったのですね。」
相「はい。ただ、私達が成長してからは、逆に兄がお金で困っている時期に私が金銭的な援助をしたり、精神的な支えになったりと、お互い支えあってやって来ました。
そして、兄は亡くなる数週間前、『お前たち兄弟で俺の資産をしっかり引き継いて欲しい。』と言ってきました。」
弁「そうなんですね。」
相「私どもの両親は兄よりも早くに他界しており、兄は独身でこれまで結婚したこともありません。
ただ1つ気掛かりがありまして、実は、兄が昔若い頃に、子どもができたことがあったと言っていたのです。
兄もそれ以上は話しませんでした。
今回四十九日も終わり、そろそろ兄の会社や資産の引き継ぎについて兄弟で話し合おうとなったときに、兄の言葉を思い出しまして…。」
ご相談者は、お兄様にお子様がいるのではないかということを気にされていました。
他のご兄弟も何も知らないということですし、大丈夫かとは思うとのことでしたが、どうしても気になるとのことでしたので、まずは兄の戸籍を調べてみようということになりました。
法定相続人について
・配偶者は常に相続人
・その他の相続人については、
①子又は孫等(代襲相続人)
②(子がいなければ)両親又は祖父母等
③子も両親もいなければ兄弟(又はその代襲相続人:甥、姪)
予想外の結末
結局ご相談者は最終的に状況を受け入れ、お兄様のお子様に連絡することにしました。
お子様は最初驚いていたようですが、状況を理解し、考えますとのことで話は終わったようでした。
ところが数日後、お子様からご相談者に連絡があったとのことで、再度ご相談に来られました。
具体的には、お兄様のお子様は、これまで父である相談者のお兄様とは全くかかわってこなかったため、相続放棄をしようと思う、と言われたとのことでした。
そして結局、相続放棄の手続を取って頂けることになったそうです。
以上のような経緯で、今回は結局、お兄様のお子様は相続放棄をされることになり、家庭裁判所への相続放棄の申立て(正確には「相続放棄の申述」といいます。)が認められたと連絡があり、結果としてご相談者様を含むご兄弟が相続人となりました。
適用の時期
具体的な改正内容によって例外はありますが、原則として今後約2年以内、相続登記の申請義務化に関する点は約3年以内と定められています。
終わりに
今回のケースはお兄様が生前に認知をしていた例でしたが、今回と違って、亡くなられた後に、お子様の側から死後の認知の訴えを起こされることもあります(亡くなられてから3年以内であれば、このような訴えを起こすことも可能)。
その結果、認知が認められた場合には、その子が相続人になるため、亡くなられた方の想定外の相続人に財産が渡ってしまうことも十分あり得ます。
今回のケースでは、もしお兄様のお子様が相続放棄をしなかった場合、全財産はお子様が相続することになりますが、もし遺言書で全財産を兄弟に相続させる内容になっていれば、最初から兄弟に遺産が渡ることになっていました。
この場合、お兄様のお子様は、ご兄弟に対し、「遺留分」(簡単にいうと、最低限相続することができる割合のこと)を主張することができる可能性があるのですが、仮にその権利を主張してきたとしても、2分の1が限界ですので、少なくとも全財産の半分はご兄弟が相続する形をとれます。
このように、今回はたまたま上手くいったに過ぎないことが良く分かって頂けるかと思います。
ご自身の財産をどう遺すかを考えるにあたっては、まずは自分の相続人が誰になるのかについてよく考え、相続人以外の方に渡したいのであれば、遺言書を作成する等するしかありません。
今一度、ご自身に万一のことが起きた場合にどうなるのかについて考えてみた方が良いかもしれませんね。
記載内容は投稿日時点のものとなり、法改正等で内容に変更が生じる場合がございますので予めご了承ください。