遺産分割

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遺産分割における弁護士費用はいくら?手続きの流れと弁護士費用目安を解説

2025.02.28

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遺産分割を弁護士に依頼する際、費用がどのくらいかかるのか気になる方は多いでしょう。
本記事では、弁護士費用の目安や依頼時のポイント、トラブルを避けるための注意点について詳しく解説します。
適切な弁護士選びのポイントを押さえ、スムーズな遺産分割を実現しましょう。

1.遺産分割に弁護士は必要?まずは依頼すべきケースを確認

相続が発生すると、遺産分割の手続きが必要になります。
「うちは揉めていないから大丈夫」と思っている方も多いですが、遺産分割の話し合いは相続人間の認識のズレや、法的知識の不足からトラブルに発展しやすい分野です。
弁護士に依頼することで、適切な法的アドバイスを受けながら、スムーズな遺産分割を進めることができます。

1-1.遺産分割で弁護士を依頼するメリットとは?

遺産分割を弁護士に依頼する主なメリットは、法的なリスクの回避と、相続人間の公平な協議の実現にあります。

法的知識が必要な手続きをすべて任せられる

相続には、遺産分割協議書の作成、不動産の名義変更、預貯金の解約手続きなど、多くの手続きが伴います。
特に、遺産分割協議書に不備があると、後から無効になるリスクもあるため、専門家のチェックが重要です。

感情的な対立を回避できる

相続人同士の話し合いは、感情的な対立が生じやすく、スムーズに進まないこともあります。
特に、兄弟間の関係が悪化している場合や、特定の相続人が強い主張をする場合には、感情的なもつれから解決が難しくなることが多いです。
弁護士が間に入ることで、冷静かつ客観的な視点から話し合いを進めることができます。

調停や審判になった場合もスムーズに対応できる

万が一、協議がまとまらず調停や審判に進んだ場合でも、弁護士が最初から関わっていれば、スムーズに裁判所の手続きを進められます

1-2.弁護士を依頼すべき主なケース(揉めそうな場合・すでに争いになっている場合など)

実際に弁護士へ相談されるケースとして、以下のような例が多く見られます。
・相続人同士で話し合いがまとまらない
・遺産に不動産が含まれており、分け方が決まらない
・相続財産を特定の相続人が独占しようとしている
・遺言書の内容に納得がいかず、遺留分侵害額請求を検討している
・過去に特定の相続人だけが多額の生前贈与を受けており、不公平感がある

こうした場合、早めに弁護士に相談することで、トラブルが深刻化する前に適切な対応を取ることができます。

1-3.揉めていなくても弁護士を依頼すべき理由(相続手続きの負担軽減・遺産分割の適正化)

遺産分割が円満に進んでいる場合でも、弁護士に相談するメリットは大きいです。

遺産分割協議書の作成サポート

遺産分割協議書には、法律的に有効な記載が必要です。
不備があると、後々トラブルの原因になるほか、相続税の申告で問題が生じる可能性もあります。

手続きの負担を軽減

相続手続きには、金融機関の手続きや不動産の名義変更など、多くの作業が発生するほか、平日しか役所や金融機関が営業していないこともあり、休みを取って手続をしないといけないなど、手間と時間がかかるものです。
弁護士に依頼すれば、金融機関や役所での手続きも代行できるため、大幅に負担を軽減できます。

二次相続を見据えた遺産分割

親の相続が終わっても、次に発生する「二次相続」を考慮しなければなりません。
弁護士は、将来の相続税負担を減らすための遺産分割方法をアドバイスできます。

2.遺産分割における弁護士費用の種類と相場

弁護士に依頼する場合、どのような費用が発生するのかを事前に把握しておくことが大切です。

2-1.弁護士費用の内訳

弁護士に依頼をする際には、以下のような費用が発生します。

・相談料:初回の法律相談にかかる費用。無料相談を実施している事務所もある。
・着手金:弁護士に正式に依頼する際にかかる費用。案件の規模によって異なる。
・報酬金:遺産分割が成立した場合に発生する報酬。
・実費:裁判所への申立費用、郵送費、交通費など。

そのほか、裁判所への期日出廷の際には、日当が発生することが一般的です。
遺産分割の調停・訴訟については、亡くなった人の最後の住所地を管轄する裁判所に提起することになるため、ご自身のお住まいの地域と被相続人の住所が離れている場合は、日当についても留意しておきましょう。
なお、一定の出廷回数までは日当が発生しない(着手金に含まれている)料金体系を取っている法律事務所もありますので、ご依頼の前に確認をされてみてください。

2-2.遺産分割の弁護士費用はどのように決まるのか?

弁護士費用は、案件の難易度や経済的利益の額に応じて決まるのが一般的です。
日弁連の旧報酬規程を参考にすると、次のような基準が目安となります。

・着手金:経済的利益の5~8%程度(最低額は30万円前後)
・報酬金(成功報酬):経済的利益の10~16%程度

たとえば、1,000万円の遺産分割をめぐる争いで弁護士を依頼した場合、
着手金:50万円前後
報酬金(成功報酬):100万円前後

が弁護士費用の目安となります。

2-3.遺産分割に関する弁護士費用の注意点
交渉段階と裁判段階で費用が異なる

交渉のみで解決する場合と、裁判所を利用する場合では費用が大きく異なります。
調停や訴訟になると、弁護士の業務量が増えるため、費用が加算されるのが一般的です。

相続財産から弁護士費用を引き出すことはできない

遺産分割が完了し、相続財産を取得した後であれば、その財産の中から弁護士費用を支払うことは可能です。
ただし、遺産分割が未了の段階では、相続財産を自由に使うことはできないため、弁護士費用は依頼者自身が用意する必要があります

分割払いや成功報酬型の支払いに対応している事務所もある

費用の支払い方法については、事務所によって異なりますが、分割払いに対応している場合や、成功報酬型の料金体系を採用している事務所もあります
費用面に不安がある場合は、事前に弁護士へ相談することをおすすめします。

3.遺産分割の解決方法ごとの弁護士費用の目安

遺産分割は、相続人間での話し合い(協議)で解決できる場合もあれば、裁判所を利用する必要がある場合もあります。
どの方法を選択するかによって、必要となる手続きや弁護士費用が大きく変わり、段階が進むほど費用も増加する傾向にあります
ここでは、それぞれの解決方法ごとに、必要となる費用の目安を解説します。

3-1.遺産分割協議を弁護士に依頼する場合の費用

裁判所を利用せず、相続人間での話し合いによる遺産分割は、最も費用を抑えつつ、迅速な解決が可能な方法です。
弁護士が代理人として相手方と交渉することで、依頼者側に一方的に不利な条件での遺産分割がなされることを防ぐことができます。
📌弁護士による協議・交渉のメリット

  • ・相続人間の感情的対立を抑え、客観的な立場で合理的な交渉を進められる
  • ・依頼者側に一方的に不利な遺産分割内容になっていないかを法的観点より検討できる

📌弁護士費用の目安

  • ・着手金:30万円前後
  • ・報酬金:獲得した経済的利益の10%~16%

協議段階で解決できれば、裁判所を利用する場合と比べて費用負担が軽減されるため、可能な限りこの段階での解決を目指すことが望ましい。

3-2.遺産分割調停を弁護士に依頼する場合の費用

協議がまとまらない場合、裁判所を利用した遺産分割を行うことになります。
調停委員が相続人の主張を聞き、法律的観点から調整を試みるため、協議では解決が困難なケースでも合意に至る可能性があります

📌弁護士に調停の代理人を依頼するメリット

  • ・調停委員に対して主張を法的観点から正しく伝えられる
  • ・証拠や論点を整理・提示し、調停の流れを適切にコントロールできる
  • ・依頼者にとって不利益な合意を避けることができる(調停委員が示す和解案が必ずしも公平とは限らないので、合意前に精査が必要)

📌弁護士費用の目安

  • ・着手金:40万円前後
  • ・報酬金:獲得した経済的利益の10%~16%

 

3-3.遺産分割審判を弁護士に依頼する場合の費用

調停でも遺産分割内容の合意が成立しなかった場合、家庭裁判所による遺産分割審判に移行します。
審判は、裁判所が双方の主張をもとに遺産分割方法を決定する手続となり、相続人間の話し合いの余地はなくなります。
📌審判の特徴と弁護士に審判の代理人を依頼する理由

  • ・法律に則って遺産分割内容を裁判所が決める手続のため、相続人の意向とは違った遺産分割内容になる可能性がある
  • ・遺産分割調停と同じく、論点や証拠を法的観点から適切に整理して主張しなければならず、専門知識が必要となる

📌弁護士費用の目安

  • ・着手金:50万円前後
  • ・報酬金:獲得した経済的利益の10%~16%

 

3-4.調停・審判以外の訴訟提起が必要な場合

例えば、「相続人の一人が不当に財産を取得していた」「遺言の内容に疑義がある」というように、相続財産の帰属や権利関係自体に争いがある場合は、そこを明確にするために遺産分割と並行して別途訴訟提起のうえで手続を進める必要があります。

📌訴訟の一例

  • ・遺言無効確認訴訟(遺言書の有効性を争う)
  • ・遺留分侵害額請求訴訟(法定相続人の遺留分を侵害された場合の請求)
  • ・不当利得返還請求訴訟(預貯金の使い込みなど、特定の相続人が不当に財産を取得した場合)

※なお、遺留分の請求や不当利得の請求については、協議で解決ができる場合もありますので、あくまで協議で解決が難しい場合には訴訟提起というイメージとなります。

📌弁護士費用の目安(訴訟手続)

  • ・着手金:訴額によって異なる
  • ・報酬金:獲得した経済的利益の10%~16%

 

4.遺産分割の弁護士費用は「安さ」だけで選んではいけない!依頼時に重視すべきポイントとは?

遺産分割を弁護士に依頼する際、費用の安さだけを基準に選んでしまうと、適切なサポートを受けられず、かえって問題が長期化するリスクがあります。
弁護士に依頼するというのは安いことではありませんので、専門性・弁護士との相性を加味してご自身が信頼して任せられる弁護士を選ぶことが重要です。
ここでは、弁護士を選ぶ際に重視すべきポイントと、それをどこで判断できるのかについて解説します。

①相続案件に精通し、税務面まで対応できるか

遺産分割の問題は、財産の種類や相続人の関係によってご家庭ごとに注意すべき点が異なるほか、特に相続税が発生する場合や不動産を含む遺産分割では、以下のような観点で税務面の知識も重要になります

不動産を相続する場合→相続税申告の特例を考慮した遺産分割が必要
相続財産の分割方法によって相続税額が変わる→節税対策を考慮した分割案を提案できる弁護士が望ましい

税理士と連携して相続全体をサポートできる弁護士を選ぶことが、スムーズな解決につながります。
そのため、相続案件の対応実績件数が多い、かつ相続税に関する知識があり税理士とスムーズに連携できる弁護士を選ぶことが重要です。

事務所のホームページなどを事前に確認し、「相続専門」など相続に強い事務所であることが記載されている、相続案件の相談事例や解決事例が記載されている、税理士と連携していることが記載されているなど、税務面までサポートができそうかは1つの選択基準になります。

②ご自身と弁護士との相性

弁護士はご自身の代理人として遺産分割を進めてくれる役割ですので、自分に代わって対応を任せられそうか?という点は依頼時に特に重視していただきたいです。
知人に紹介されたのでという理由だけで弁護士を決められる方もいらっしゃいますが、知人の方とご自身では感覚や考え方が違う部分もあるかと思いますので、そこだけで決めるのではなく、実際に会って相談をしてから判断をされた方がよいかと思います。

・弁護士への相談時に気にしておきたいポイント
説明が分かりやすく、専門用語を噛み砕いて伝えてくれるか
相談者の話をしっかり聞き、親身に対応してくれるか
強引に契約を進めるような姿勢ではないか
ご自身が話しやすいかきちんと自分の要望を伝えられそうか
受付の対応、事務所の雰囲気はどうか

「実績が豊富=自分との相性が良い」とは限りません。
どれだけ優秀な弁護士でも、自分に合わないとストレスを感じてしまい、スムーズな意思疎通が難しくなることがあります。
一度依頼をした後では、費用面からも弁護士を変えるという選択肢が取りづらくなってしまうため、料金や実績だけでなく、ご自身との相性も意識して依頼先を選ぶことが大切です。

③事務所のサポート体制が万全か(相続登記・相続税申告まで対応できるか)

遺産分割の手続きでは、弁護士だけでなく、司法書士や税理士のサポートが必要になる場面も多くあります。
例えば・・・
不動産を相続する場合→司法書士による相続登記が必要
相続税の申告が必要な場合→税理士による申告が必須
金融機関での名義変更が必要な場合→各種手続きを一括で対応できる事務所が望ましい

そのため、弁護士・司法書士・税理士が連携し、ワンストップで対応できる事務所を選ぶことで、手続きをスムーズに進めることができます

📌ワンストップ対応のメリット

  • ・相続全体を一括でサポートしてもらえるため、手間が減る
  • ・税申告・登記の手続きを別々に依頼するよりもスムーズに進む
  • ・弁護士と他の専門家が連携することで、抜け漏れのない相続手続きを実現できる

弁護士のみの事務所では、相続税申告や登記についてはご自身で別途税理士や司法書士を探してくださいと言われる場合もあります。
可能であれば、ワンストップで対応できる事務所を選ぶことで、相続全体の手続きがスムーズに進むでしょう

5.Q&A|遺産分割の弁護士費用に関するよくある質問

Q.弁護士に依頼した場合、相手方(他の相続人)に弁護士費用を請求できますか? A.基本的に、弁護士費用は各相続人が自己負担するものであり、他の相続人に請求することはできません
ただし、相手方が明らかに不当な理由で遺産分割を妨害し、訴訟で争うことになった場合などは、例外的に弁護士費用の一部を損害賠償として請求できる可能性があります。
また、調停や審判の中で、弁護士費用を考慮した分割案を提案することも一つの方法です。

Q.弁護士に依頼せずに遺産分割を進めることは可能ですか?

A.相続人同士で協議を行い、全員の合意が得られる場合は弁護士を依頼せずに遺産分割を進めることも可能です
ただし、財産に不動産が含まれる場合や、相続人間で意見の対立がある場合は、後々トラブルが発生するリスクが高くなります。
遺産分割協議書の作成や相続税の申告を適切に行うためにも、弁護士や税理士のサポートを受けることをおすすめします

Q.すでに他の弁護士に依頼している場合でも、別の弁護士に変更することはできますか?

A.はい、弁護士の変更は可能です
ただし、契約内容によっては、すでに支払った着手金が返還されない場合や、途中解約に伴う違約金が発生する可能性があるため、事前に契約内容を確認することが重要です。
また、新しい弁護士に引き継ぐ際、すでに進行している手続きをスムーズに継続できるかも考慮しましょう。

Q.相手側(他の相続人)が弁護士をつけた場合、自分も弁護士を依頼したほうがいいですか?

A.はい、相手側に弁護士がついた場合は、ご自身も弁護士に依頼されることを強く推奨します
相手側の弁護士が自分にとって適正な条件を提示しているかどうかという部分の判断や、法的なやり取りに慣れていない状態でご自身が弁護士を相手に協議をするというのはやはり難しいため、可能な限り弁護士を依頼し、対等な立場で協議を進めるほうがよいでしょう。

6.まとめ|遺産分割の弁護士費用について理解を深め、適切な依頼を

・弁護士費用は手続きの内容によって変わるため、事前に見積もりを確認することが大切
・費用だけでなく、弁護士の経験・相性・事務所のサポート体制を重視して選ぶ
・調停・審判になると追加費用が発生するため、早めに相談することでスムーズな解決につながる

遺産分割は、一度トラブルが発生すると長期間解決できないケースも少なくありません
調停や審判まで進むと数年単位で問題が継続してしまいますので、問題の早期解決の実現のためにも、早めに弁護士のサポートを受けることで、将来的なトラブルも防ぐことができます。

「弁護士に依頼すべきか迷っている」「費用が気になる」という方は、まずは無料相談を活用し、専門家の意見を聞いてみることをおすすめします。

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