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遺産相続コラム

遺言執行者の役割と重要性について

2024.07.26

監修 後藤祐太郎弁護士

今回は、「遺言執行者の役割と重要性」について詳しく解説していきたいと思います。
相続は、法的および感情的な問題が複雑に絡み合う事案です。特に遺言が存在する場合、その意思をどう実現するかが問題となります。本日は、この問題を解決するための方法をお伝えします。

1. 遺言執行者とは何か?

遺言執行とは、故人の遺言に従って行われる一連の手続きを指します。一連の手続きの具体的な内容については後述しますが、故人が指定した財産の分配、必要な法的手続きの実施、および個人の意向に基づいた特定の行動の実行などが含まれます。そして、上記の遺言執行を実際に行う人物のことを遺言執行者といいます。この遺言執行者は、故人の遺言に記載された指示に従って、遺産の管理や分配を行う役割を担います。この役割は、遺言がある場合にその内容を正確に実行するために非常に重要になるため、以下では遺言執行者の役割について具体的に説明させていただきます。

2. 遺言執行者の役割

遺言執行者は以下のような多岐にわたる活動を行います。

(1)財産目録の作成

まず初めに、故人が残したすべての財産を確認し、詳細なリストアップを行います。これは後の分配や手続きの基礎となる重要なステップであり、財産目録の作成については、民法1011条1項で「遅滞なく」作成することが義務付けられています。

(2)遺産の分配

故人の遺言に記載された指示に従い、具体的な財産分配を行います。例えば、「長男には不動産を相続させ、長女には私の預貯金を相続させる」と記載されていた場合には、その遺言の記載内容通りに、不動産については長男に名義変更を行い、預貯金については、解約し、現金を長女に相続させます。

(3)財産の管理

故人の死後、遺産が正式に相続人に渡るまでの間、遺言執行者は故人の財産を管理します。これには不動産の維持管理、投資資産の管理、負債の清算などが含まれます。

(4)法的手続きの実施

上記(2)で説明した通り、遺言の記載内容に従って、具体的に相続財産を分配する手続きを行います。不動産の名義変更、銀行口座の解約などを行います。株や投資信託の場合には、売却し、売却代金を相続人に渡すというような方法も考えられますが、いつ売却するかで金額が変動してしまうこともあるため、口座の名義を変更するというような方法もあります。

(5)特定の指示の実行

以上が、基本的な遺言執行者の役割になりますが、それ以外にも、財産の処分等遺言者の指示が記載されていれば、その内容を実行する必要があります。例えば、故人が「私の死後、私の日記を燃やして欲しい」と遺言していた場合、それを実行します。

財産の管理

3. 遺言執行者の選任方法

遺言執行者は、故人が生前に遺言にて指名する方法と、故人が指名していない場合には裁判所が指定する方法があります。遺言で指名していない場合、相続人自身で相続手続を行う必要がありますが、その手続を相続人自身で行うことが難しい場合や、不動産を相続人以外の人に取得させる(遺贈させる)内容が記載されていた場合には、遺言執行者を選任する必要があります。後でも説明しますが、残された遺族に相続に関する手間を少しでもなくすためにも遺言を作成する場合には、合わせて遺言執行者を選任しておくことをお勧めします。

4. 遺言執行者を選任する理由

(1)効率的な手続き

遺言執行者がいることで、全ての手続きが効率的に進行します。親族がお亡くなりになってしまった場合、死亡届の提出や葬儀など、遺族の方はお亡くなりになられたという悲しみの中いろいろな対応に追われることになります。そのような、対応と並行して、相続手続きを行うことは、戸籍を集めたり等とても大変です。そこで、遺言執行者をあらかじめ指定しておくことで、その遺言執行者が相続の開始とともに迅速に手続きを完了することができ、遺族の負担を減らすことができます。また、相続財産が高額であり、相続税の申告納税が必要になる場合、スムーズな相続手続きができれば、相続財産の預貯金や、不動産を売却したお金で相続税を支払うことができます。ですが、遺言執行者がいないケースでは、同様の手続きに何ヶ月もかかることもあり、納税資金を確保することが難しくなってしまうリスクもあります。

(2)争いの防止

遺言執行者は、故人の明確な意向に基づき手続きを行うため、相続時の家族間の争いを最小限に抑えることができます。遺言執行者は特定の相続人のために、活動を行う者ではなく、あくまでも遺言の内容に従って、職務を遂行することになります。このように、遺言執行者がついていれば、親族間で具体的な話し合いの機会を設ける必要もなく、財産の承継を行うことが可能です。このように、遺言執行者が選任されている場合には、相続を理由とする親族間の無用な争いが起きることを防ぐことができます。

(3)法的保護

遺言執行者が選任されることで、相続財産を適切に保護することができます。相続事案では、預金を管理していた親族が、被相続人が亡くなる直前や死後に多額の預金を無断で引き出してしまうようなことが頻繁にあり、そのような行為が原因で、相続人間で紛争が起きることが少なくありません。しかし、遺言執行者が選任されている場合には、就任後直ちに相続手続きを実施することにより口座が凍結され、親族による死後の預金の引き出しができなくなるなど、相続財産を適切に保護し、故人の意思をきちんと実現することが可能になります。

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おわりに

遺言執行者は、故人の意思を正確に反映させ、相続手続きを円滑に進め、争いのない相続を実現するために非常に重要です。そして、弁護士などの適切な遺言執行者を選ぶことで、故人の意思が尊重され、相続における多くの問題が解決されます。当事務所は遺言書作成だけでなく、遺言執行も多数行っており、そのノウハウを活かし、迅速に遺言執行手続きを行うことができるため、感情的な対立関係にある相続人間での相続であっても、無用な争いを防ぐことができます。遺言執行者の選任のみならず、遺言書の作成等について考えられている方は、専門家の弁護士がいる事務所へ是非ご相談ください。

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