遺言書の保管はさまざまな方法があります。今回は、それぞれの遺言書の保管方法についてご説明いたします。
※自筆証書遺言と公正証書遺言がどういうものかについては、別の記事で説明しておりますので、宜しければ併せてご確認ください。
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もくじ
1.自筆証書遺言の保管方法について
自筆証書遺言の保管方法については、法律で定められているわけではございませんので、どのような方法で保管をされても結構です。一般的にはご自宅で保管されていたり、第三者に保管してもらったりしている方が多いです。それぞれの場合について見てみましょう。
(1)自宅で保管する
一般的に、タンスや棚の引き出しなど、自宅の中で保管します。遺言書は大切なものなので、金庫や仏壇などで保管される方も多いです。
(2)第三者に預ける
自宅で保管していても法律上問題はありませんが、自宅での保管だと、紛失してしまったり、相続人が勝手に中身を見て、自分にとって納得のいかない内容だった場合処分したりしてしまうことも考えられます。また、遺言書を作っていることをご家族に伝えていても、遺言書を見つけてもらえないリスクもあります。そのようなリスクを避けるためにも、第三者に預けるということを検討される方がいいかもしれません。「では、誰に預ければいいのか」と悩まれる方もいらっしゃるかもしれません。もちろん、親族の方やご友人に預けてもいいのですが、「遺言書が本物なのか」などあらぬ疑いをかけられてしまい、後々にトラブルになってしまう可能性もあります。そのため、弁護士事務所(弁護士事務所によって対応の可否は異なります。)や法務局(2020年から法務局での保管が可能になりました。)などの専門家に預けるのが紛失やトラブルのリスクを回避することができるかと思います(※法務局の保管については詳しく後記いたします。)。
2.公正証書遺言の保管方法
公正証書遺言は、公証役場で遺言書を作成し、公証役場の耐火金庫で原本が厳重に保管されます。公証役場で保管されている公正証書遺言は、相続人の方であれば、全国どこの公証役場でも写しを交付してもらうことができるので、紛失のリスクは一切ありません。
3.2020年から実施!新しい保管方法について
今まで、自筆証書遺言はご自宅や専門家に預けるしかありませんでした。また、ご自宅などで保存していた自筆証書遺言の場合は、遺言書の内容を確定させるために、遺言者が亡くなった後、裁判所で検認の手続きを行わなければなりません。この検認手続きを経て初めて預貯金の解約や相続登記ができるようになります。そのため、手続きに一手間かかったり、弁護士に依頼する場合は弁護士費用がかかったりとデメリットがありました。2020年に法務局における自筆証書遺言の保管制度では、遺言者が、遺言書を作成後、法務局に持参し、法務局の担当者と面談と手続きを行い、遺言書の原本は法務局で保管されます。法務局で保管された遺言書は、法務局で内容を確認し、原本を保管していることもあり、検認の手続きは必要ありません。また、法務局での保管制度の特徴として、「通知」というものがあります。法務局は、法定相続人の一人に遺言書情報証明書を交付したり、遺言書の閲覧をさせたりした場合、他の相続人に遺言書が保管されていることを通知しなければならないという決まりになっています。この通知により、遺言者が亡くなられた後に、他の相続人も、遺言書が存在することを把握することができます。
【法務局での保管制度の詳細】
管轄(どこの法務局で預かってもらうか)
①住所地、②本籍地、③所有する不動産の所在地、のいずれかの法務局
手数料
3900円
必要書類
①遺言書、②保管申請書、③本籍地及び戸籍の筆頭者の記載がある住民票の写し、④顔写真付きの官公署から発行された本人確認書類、⑤手数料(3900円)
※法務局での手続きは事前の予約が必要で、所要時間は約1時間です。
4.まとめ
今回は遺言書の保管方法について説明いたしました。遺言書の保管方法にも色々あるのだと興味を持っていただき、遺言書を作成される際、検討材料にしていただければと思います。
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