はじめに
今回は遺留分対策の2つの方法である生前贈与と遺留分放棄をテーマに遺留分対策の重要性と具体的な方法について、詳しく説明いたします。
1.遺留分対策とは
遺留分とは、法律上、相続人に保証されている一定の割合の相続財産のことをいいます。
本来、相続財産をどう分配するかの決定権は財産の所有者である被相続人にあるため、被相続人は遺言によって「一部または全部の相続人に遺産の相続を認めない」とすることができます。しかし、被相続人の一存で相続人が全く相続できない場合、相続人の生活が立ちいかなくなる等の問題が生じることもあります。また、他の共同相続人や遺産取得者との関係で不公平な結果も生じます。そこで民法では遺言書があっても相続人に一定の範囲で遺産の取得を認めており、これを遺留分といいます。
ご自身の財産を、相続人の一部の人に対して集中的に渡したい場合に、他の相続人が遺留分を請求してくること自体を防ぐことはできませんが、請求することができる遺留分の金額をできる限り減額するためにすべきことが遺留分対策ということになります。
2.遺留分対策①生前贈与
遺留分対策の1つ目が生前贈与です。
生前贈与とは、亡くなる前に財産をどなたかに贈与することです。生前贈与は基本的に遺留分の中に含めなければなりません。遺留分の計算に含まれないためには、贈与から10年以上経過する必要があります。例えば、亡くなる15年前に行われた生前贈与は、遺留分の計算には含まれません。したがって、遺留分の対策を考えられている方は早めに生前贈与の手続きを行う必要があります。ここで、遺留分対策のために多額の金銭を一度に贈与しようと考えられる方がいらっしゃるかもしれません。しかし、生前贈与には贈与税がかかるため、注意が必要です。年間110万円以下の贈与であれば非課税ですが、それを超えると高額な贈与税が発生します。相続時精算課税制度を利用すれば、2500万円まで非課税で贈与できますが、相続時精算課税制度で生前贈与を行った金額については、相続時に相続税の計算で考慮されることになります。
3.遺留分対策②遺留分放棄
遺留分対策の2つ目は、遺留分放棄です。遺留分放棄は、相続人が自ら遺留分を放棄することです。被相続人が亡くなった後に遺留分を放棄する場合は、意思表示だけで足りますが、被相続人が亡くなる前に遺留分を放棄してもらう場合、家庭裁判所の許可が必要となります。家庭裁判所は、放棄が自由な意思に基づくものであることや合理的な理由があることを確認します。この生前の遺留分放棄については、そもそも相続人自身が放棄することを承諾しないと認められないこと、家庭裁判所の許可が出るための合理的理由として、遺留分相当額の金銭を事前に贈与している事情が必要であるなど、遺留分対策としてはあまり実効性があるとはいえません。遺留分放棄は相続放棄とは異なり、最低限の権利のみを放棄するもので、相続自体を放棄するわけではありません。
4.おわりに
遺留分対策は、特定の相続人に財産を集中させるために重要です。しかし、遺留分の放棄や生前贈与には法的な手続きや税金の問題が伴います。専門的な知識が必要なため、弁護士に相談することをお勧めします。相続に関するご相談は、ぜひ当事務所までお気軽にお問い合わせください。
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