前回は、医療法人の持分について動画でも解説しました。
前回の記事はこちら:医療法人の持分とは?持分がある場合の相続の問題について
今回は、認定医療法人制度について、中山弁護士が解説いたします。
もくじ
1.認定医療法人制度とは
認定医療法人とは、持分あり医療法人から、持分なし医療法人への移行計画について、厚生労働大臣より認定を得た医療法人のことをいいます。
※認定を受けるメリット
認定を受けることにより、持分の相続・贈与に関して税制優遇が受けられます。
2.税制優遇とは
設立時:出資者A100万、出資者B100万
認定がない場合
出資者Aが死亡してCが出資持分を相続した場合
1億円×50%=5,000万の相続が発生
※Cに相続税の課税リスク、Xは相続税支払いのために払戻請求をされるリスク
出資者Aが生前に退社し、出資持分を放棄した場合
1億円×50%=5,000万の価値が、残された出資者Bに移転→Bに贈与税発生
出資者Aも出資者Bも持分放棄した場合
1億円分の出資持分が医療法人Xに贈与したとみなされ、Xにみなし贈与税発生
※認定を受けていれば、上記税金が発生しても、納税猶予を受けることができ、持分なし医療法人に移行した後も一定期間、申請要件を満たし続ければ、最終的に納税猶予額も免除されます。
※相続税の納税猶予は、相続税の申告期限までに認定を得ておく必要があります。
※放棄に伴う贈与税の納税猶予は、放棄時点で認定を得ておく必要があります。
※移行後も、認定が取り消された場合は、取消後2カ月以内に納税する必要があります。
3.手続きの流れ
(1)R8.12.31までに認定を受ける必要があります。
(第5次医療法改正でH29.10.1~R5.9.30→R8.12.31まで期限が伸長されたので、今後の法改正によりさらに延長される可能性もあるかもしれません。)
→具体的には、移行計画申請に関する社員総会決議を行い、厚労省へ移行計画について認定の申請を行います。
(2)認定を得た場合、認定の日から5年以内に「持分なし医療法人」へ移行します。
→具体的には、出資者全員に持分を放棄してもらい、定款の内容も変更します。
定款変更は、知事の認可を得る必要があるので時間がかかります。
(3)上記(2)による移行後6年間、運営状況を厚労省へ報告
※報告時に運営要件を満たしていない等が発覚した場合、認定取消しのリスクがあります。
4.要件
認定医療法人の要件としては、運営方法に関する要件と事業状況に関する要件があります。
運営方法
①法人関係者に対し、特別の利益を与えないこと(※1)
②役員に対する報酬等が不当に高額にならないような支給基準を定めていること
③株式会社等に対し、特別の利益を与えないこと
④遊休財産額が事業に係る費用の額を超えないこと
⑤法令に違反する事実、帳簿書類の隠ぺい等の事実その他公益に反する事実がないこと
事業状況
⑥社会保険診療等(介護、助産、予防接種等を含む)に係る収入金額が全収入金額の80%を超えること(※2)
⑦自費患者に対し請求する金額が、社会保険診療報酬と同一の基準によること
⑧医業収入が医業費用の150%以内であること
※1について
特別の利益供与に該当する行為の例
・医療法人の財産を居住、担保、その他の私事に利用させること
・医療法人の余裕金を法人関係者の行う事業に運用していること
・医療法人の他の従業員より有利な条件で金銭の貸付をすること
・医療法人の財産を無償又は著しく低い価額の対価で譲渡すること
・金銭等の財産を過大な利息又は賃貸料で借り受けること
・財産を過大な対価で譲り受ける又は事業目的とは認められない財産を取得すること
・医療法人の役員等の地位にあることのみに基づいて給与等を支払うこと、又は他の従業員より過大な給与等を支払うこと
・債務の保証、弁済、免除、引受けを行うこと
・入札等公正な方法によらないで、事業に係る契約の相手方となること(契約金額が少額なものを除く)
・事業により供与する利益を主として、又は不公正な方法で与えること
※過去に該当があっても、申請時点で解消されていればOKです。
※2について
介護老人保健施設等における居住費や食費は、利用者負担であり、介護保険給付とはみなされないため、社会保険診療等に係る収入金額には含まれません。
ただし、そのうち特定入所者介護サービス費(市町村民税が非課税の世帯の入居者について、居住費・食費等の自己負担額を軽減するもの)については、市町村から介護保険給付として支給されるものであるため、「社会保険診療等に係る収入金額」に含めてOKです。
記載内容は投稿日時点のものとなり、法改正等で内容に変更が生じる場合がございますので予めご了承ください。
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