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医療法人の持分とは?持分がある場合の相続の問題について

2024.01.23


相続が発生した際に、お亡くなりになられた方が医療法人の持分をお持ちの場合、どのような問題が起こり得るのでしょうか?
医療法人を運営されるうえで、気にしておきたい点を弁護士が解説します。

1. 医療法人の持分とは何か?

医療法人の持分というものは、出資持分とも呼ばれ、とある医療法人に対して現金だったり、不動産だったり、何かしらの財産的価値があるものを出資した人が有する権利のことを指します。
株式会社の場合であれば、資本金を入れて、そのお金から事業立ち上げにかかる費用を出していくというのと同じように、医療法人の場合もクリニックを運営する上で治療に必要な機材を買ったり、場所を借りたり、人を雇ったりと初期費用が必要なので、医療法人を立ち上げる際にはみんなで財産を出し合いましょう、その際に財産を出した人は医療法人に対して出資持分を取得し、最終的に財産の分配を受けられる形にしましょうという制度です。

この権利があると、医療法人が解散した場合など一定の場合に限り、自分が出した財産の割合に対して払い戻しを請求できます。

2.医療法人の持分の有無はどうやって判断するのか

さて、医療法人に持分があるかどうかという点をどこで確認するかという所ですが、大きく分けて以下の2つの方法で把握することができます。

①医療法人の定款の記載
②医療法人の設立時期
①医療法人の定款の記載

まず、一つ目の方法としては、医療法人の定款を確認することです。
これが持分のあり・なしを確認する一番確実な方法となります。
定款とは、法人の基本的なルール、運営の仕方、社員の権利や資格など、法人に係る様々な決まりごとが記されていますが、その中に出資持分の払戻しに関する記載がある場合は、持分ありの医療法人ということになります。

具体的にどのような形で記載がされているかの例をあげると、「社員資格を喪失した者は、その出資額に応じて払戻しを請求することができる。」「本社団が解散した場合の残余財産は、払込済出資額に応じて分配するものとする。」というような記載がある場合です。

②医療法人の設立時期

定款が手元にない、あるいは見ることができないなどの事情がある場合は、もう1つの確認方法として「医療法人の設立時期」が平成19年4月より前か後かというところから推測することができます。
というのも、平成19年に医療法が改正され、平成19年4月以降は持分あり医療法人というものを新しく作ることができなくなったため、平成19年4月以降に作られた医療法人については全て持分なし医療法人というように考えていただいて大丈夫です。

病院

3.医療法人の相続の際の取扱いと問題点

①持分あり医療法人の場合

医療法人の持分というのは、財産的価値のある権利のため、持分を持っている方が亡くなられた場合は、その権利を相続人が相続することになります。
ここで、問題になってくるのが相続税の部分です。
医療法人の定款に、出資した金額を限度として払い戻しができるというような上限の記載が書いてある場合はそこが限度になりますが、「出資した割合に応じて」「出資持分に応じて」といったような定め方をされている場合は、払い戻し請求をする時点での医療法人の価値に対する権利の割合で相続財産の評価をしていくことになります。

その場合、設立時に出資した金額の10倍、100倍といった金額を相続したものとして相続税が計算され、非常に高額な相続税を支払わなければならなくなった結果、医療法人自体を解散させなければならなくなってしまい、病院自体を運営できなくなってしまうということもあります。
そのような問題が現実的に起こり得る状況だったことからも、医療法人の経営が安定しないという理由で今後は持分なしの医療法人しか作れないという法改正がされたという背景もあります。

②持分なし医療法人の場合

持分なしの医療法人の場合、残った財産は国庫に帰属されます。
そのため、出資した方には払い戻しがされません。

なにも貰えないなら持分ありの方がいいじゃないかと逆に思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、先ほどお伝えした通り、持分が相続財産の対象になると相続税が高額になりすぎて、結局医療法人が解散せざるを得ないという問題が出てきてしまいます。
その点、持分なしの場合は医療法人をそのまま運営し続けられるというメリットがあります。

持分ありの医療法人を持分なしに変更する手続や移行する制度もありますので、持分ありの医療法人を運営されておられる方は、今後の相続の事を考慮した対策を今のうちから実施しておかれるのもいいかもしれません。

まとめ

今回は、医療法人の持分について、その概要と持分の有無の確認方法、そして持分がある場合の相続に関連する問題についてお話しました。
医療法人の経営においては、相続の部分も考慮することも大事になりますので、福岡で医療法人の経営、相続についてのお悩みがある方は、まずは一度ご相談ください。

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