相続人の廃除事由に該当するかどうかの判断は、当該行為が被相続人との家族的共同生活関係を破壊し、その修復が著しく困難なほどのものといえるか、という基準でなされます。
具体的には、被相続人の主観によるものではなく、その言動がなされた当時の社会的意識や倫理、問題となる言動の発生原因や責任の所在、及び言動の反復・継続性の有無などの諸事情も考慮され判断されます。
このような客観的な要素が重視される理由は、相続人の廃除が認められれば、相続人は法定相続分を失うだけでなく、遺留分(遺言書で全くもらえないとされている場合でも最低限相続できる割合のこと。)すら剥奪される強力な効力が発生してしまうからにほかなりません。
なお、上記のような基準で判断されますので、被相続人の態度に多くの原因があった場合であったり、双方に原因があった場合には、廃除要件に該当しないとした裁判所の審判例もあります。
以下、参考までにいくつか審判例をご紹介したいと思います。
⑴息子が母親に対して「病気になって早く死ね。」「80まで生きれば十分だ。だから、早く死んでしまえ。」「火事で死ねばいい。」等の言動をなしたことが、一過性のものではないとし、「重大な侮辱」があったと認めた例(東京高裁)。
⑵娘が暴力団と婚姻し、父母が婚姻に反対であったのに、父の名前で披露宴の招待状を出すなどした事例で、「虐待又は重大な侮辱」に当たるとし、廃除を認めた例(東京高裁)。
⑶長男が窃盗などにより何度も服役し、現在も刑事施設に服役中であり、窃盗などの被害弁済や借金返済を行わなかったことで、被害者らへの多大の精神的苦痛と多額の経済的負担を強いてきたことが明らかであることから、その長男に対して「著しい非行」があったと認めた例(京都家裁)。
⑷長男が、借金を重ね、父母に2,000万以上を返済させ、加えて、長男の債権者が、父母宅に押し掛けるといったことで、父母を約20年以上にわたり経済的、精神的に苦しめてきたりしたことを「著しい非行」に該当すると認めた例(神戸家裁)。