相続開始後に遺言の内容の通りに実現する人のことを遺言執行者と言います。
遺言の内容が「遺産分割の禁止」(自分の死亡後、遺産分割について相続人がもめると予想される場合に、遺言によって相続の開始から5年以内の範囲で遺産分割の禁止を指示することができます。)や「相続分の指定」(どの財産をどの相続人に相続させるかではなく、遺産の●%を誰々に相続させると指示することを言います。)などだけならば、遺言の内容を実現するための手続きは不要となります。
しかし、遺言の内容が「遺産分割の方法の指定」(どの財産をどの相続人に相続させるか指定することを言います。)であったり、「遺贈」(どの財産を誰に(相続人に限られません)相続させるか指定することを言います。)などであれば、これを実現するための手続き(執行)が必要です。
遺産分割方法の指定ならば、原則、受益の相続人が単独で手続きができますが、遺贈であれば相続人(遺贈義務者)全員の協力が必要です。そのため、相続人間で不平等な結果となる遺贈や、相続人以外への遺贈であれば、相続人全員が協力してくれるとは限りません。
そのような場合に備えて、遺贈を内容とする遺言なら、あらかじめ遺言執行者を指定し、遺言執行者が手続きを行うことをお勧めします。
遺言に従い、預金を受け取る相続人や受贈者は、それが「遺贈」であっても「遺産分割方法の指定」でも、銀行に対し、預金の解約払い戻しや名義変更を求めることになります。
遺言執行者を指定していない場合には、銀行からは事実上相続人全員の承諾を要求されることが多いため、相続人全員の協力が得られなければ、銀行に対して手続きを行うことはできません。この場合、銀行から遺言執行者の選任を求められることがあります。
そのため、遺言執行者をあらかじめ選任しておく方がいいでしょう。
不動産については、「遺贈する」という遺言では、移転登記手続きのために相続人全員もしくは遺言執行者の協力が必要となりますが、特定の不動産を「相続させる」とするなど「遺産分割方法の指定」として特定の相続人に不動産を取得させる内容の遺言なら、その相続人は単独で移転登記できるので、遺言執行者は必要ありません。