養子縁組とは、法律上親子関係のない者同士に親子関係を成立させるための制度です。
養子縁組をした場合、養子と養親は実の親子関係と同様に、法律上も親子としての権利と義務を取得します。養子は実子と同様に、養親の第1順位の法定相続人となり、財産を相続することができるようになります。
しかし、相続において、「代襲相続」が発生した場合、養子は場合によっては実子と全く同じ扱いを受けないことがあります。
「代襲相続」とは、亡くなった方(被相続人)の子や兄弟姉妹が相続人となる場合に、相続人となるべきだった子や兄弟姉妹が既に被相続人より先に亡くなっていて、相続人となるべき者の子が代わりに相続人となることをいいます。
このような場合に、本来相続人となるべきだった者のことを「被代襲者」といい、相続人となるべきだった者の代わりに相続人となった者のことを「代襲相続人」といいます。
被相続人の子に実子と養子がいる場合、通常であれば養子は実子と同じ法定相続人として扱われます。
しかし、実子と養子が既に被相続人よりも先に亡くなっていて、実子の子と養子の子が相続をする「代襲相続」となってしまった場合、実子の子と養子の子は同じ扱いを受けることができない場合があるのです。
「代襲相続」が発生した場合に「代襲相続人」となることができるのは、民法で「被代襲者の子であっても、被相続人の直系卑属である者」と定められています。「直系卑属」とは、子・孫等の自分より後の世代で、直通する系統の親族のことをいい、養子も含まれます。兄弟・姉妹、甥・姪、子の配偶者は含まれません。
民法において、養子は「養子縁組の日から養親の嫡出子の身分を取得する」と定められています(第809条)。このため、養子縁組の日以前に生まれた養子の子は、養親から見ると養親の直系卑属にはなりません。
一方、養子縁組の日以降に生まれた養子の子は、養親から見ると直系卑属になります。養子の子が養親の代襲相続人になるかどうかは、養子の子の出生が養子縁組の前か後かということだけで、大きく変わってしまいます。
以下の関係図のように、養子縁組の後に生まれた養子の長女は代襲相続人となることができますが、養子縁組の前に生まれた長男は代襲相続人となることができません。実子の子はどのような場合でも代襲相続人となることができるのに対して、養子の子は養子縁組の後に生まれた子しか代襲相続人になることができないのです。
このように、代襲相続の場合養子縁組の前に生まれた養子の子と縁組後に生まれた養子の子との間で異なった結論になってしまうことがあるため、お孫さんの間で不公平な結果になってしまう事態を防ぐため、養子縁組を検討されている方は遺言書を作成し、養子縁組前に生まれたお孫さんに平等に財産を取得(遺贈)することができるよう対策をしておいた方がよいでしょう。