「家族信託」という相続の方法を書店やテレビで見かけたという方は多いのではないでしょうか?
民事信託という制度を利用した「家族信託」は、民法ではできない相続を実現できるものとして注目を浴びています。
ところで、遺言書作成のキットのように、家族信託のひな形があって自分で家族信託の契約書が作成できるのではないか、とお考えの方もいるのではないでしょうか?
結論から言いますと、家族信託の契約書にはひな形はなく、信託法の知識がない素人が作成することはほぼ不可能です。そもそも「家族信託」は最先端の手法であることから、法律家でも精通している者は少ないのです。
「家族信託」の契約書のひな形は本当にないのか?
書籍やインターネット等で公開されているのに、「家族信託」の信託契約書のひな形がないなんておかしいことを言うな、と思われる方もいらっしゃるでしょう。
確かに書籍やインターネット等で「家族信託」の信託契約書を見つけることはできます。
しかし、書籍やインターネットで公開されている信託契約書は、一つの事例を想定した場合の回答例に過ぎません。
家族信託の最大のメリットは、今までにない柔軟な相続を実現することにあります。つまり、「家族信託」の契約内容は、被相続人である親の保有資産の規模・内容、家族構成と家族の年齢・健康状態・居住地、財産を託す親の想い・財産を託される子側の想いによって当然のように変わることを前提にしています。
あなたの置かれている状況と違うものに対する回答に、あなたの情報を当てはめてもあなたの望む信託契約書はできません。残念ながら、法律家の中にも、回答例に当てはめて信託契約書ができると、勘違いしている方もいるようです。
「家族信託」の契約書を作成するためには、財産を託す親の想い・希望と、それを踏まえた子どもの希望・覚悟をすり合わせるなければなりません。
そのため、「家族信託」の契約書のひな形はないといえます。