今回は「家族信託」と「成年後見制度」では行為の制約と報告義務にどのような違いがあるのかご紹介いたします。
1.成年後見制度の場合
成年後見人は、家庭裁判所(後見監督人が就けば後見監督人)に定期的に収支報告をする必要があります。後見監督人が就任すると、3~6か月に1回のペースで報告する必要があるので、法律の専門家でない親族が後見人に就任した場合は大きな負担です。
また、成年後見人には、被後見人にとって最善の財産・管理をするという制限があるため、被後見人にとってメリットや必要性がないと判断される行為はできなくなります。
例えば、在宅介護のためにバリアフリー住宅へのリフォームや建替えは被後見人にメリットや必要性があるといえるため、可能です。
しかし、被後見人の預金を元手に賃貸アパートを建替えることは、被後見人にメリットや必要性があると合理的に説明するのがなかなか困難ですので、できないと判断されることもあります。他には、ダウン症で縮毛を気にしている女の子が、週に1度の楽しみであるストレートパーマをかけるようなことも不必要で贅沢なこととしてできないこともあったようです。
上記のように、「成年後見制度」は堅実な財産管理ができる反面、本人が望んでいるであろうことが必ずしも実行できないことがあります。
2.家族信託の場合
家族信託は、当事者が自由に契約を締結できます。
そのため、税務申告を除けば、裁判所などの公的な機関への報告義務はありません。
家族信託契約は、判断能力が万全なときに締結されているので、正常な判断や意思表示が困難になった場合でも、契約当時の委託者の意思・希望に基づいて受託者は信託事務を遂行できるのです(信託の持つ「意思凍結機能」と呼ばれます。)。
判断能力が万全な内に、賃貸アパートの建て替えを含む財産管理を託してさえおけば、受託者は委託者から託された資産を使って建て替えが可能です。