「家族信託」という相続の方法をお聞きになったことのある方は多いのではないでしょうか?
家族信託は、信託法を利用した制度です。
信託法は、大正時代にできた法律で歴史は古いものの、ほとんどの人にはなじみのないものでした。信託銀行等が取り扱う資産運用として活用されるに過ぎないものだったのです。
しかし、80年以上の年月を経て、一般の人も使える財産運用の手法に利用しやすい大改正が行われたことで「家族信託」が注目されるようになりました。。
私たちはどのように「家族信託」を活用すればよいのでしょうか。
そもそも「家族信託」とはどのような制度なのでしょうか?
家族信託は、信託法を利用した財産管理の手法です。信託契約は、3人の登場人物が出てくるので、一見すると複雑そうです。でも、次の説明をお読みいただければ、実に単純な仕組みだと分かるはずです。
まず1人目に「委託者」という現在財産を持っていて財産の管理や処分を任せる主体となる人が登場します。
2人目は「受託者」という、委託者が信じて財産を託す相手である、実際に財産の管理処分を担う人が登場します。
最後は、「受益者」という、委託者が受託者に管理を託した財産から経済的な利益を受ける人が登場します。
この3人の信託の際の関係は、「信託とは、委託者が遺言や信託契約などによって、信頼できる受託者に対して、不動産・現金等の財産を託して、一定の目的に沿って、受託者が受益者のためにその財産を管理・処分する法律関係」となります。
受託者を家族や親族にする信託を特に「家族信託」といいます。
超高齢化社会のリスクとは、①認知症などの判断能力の低下・喪失によって本人の資産を家族だけでなく本人ですら自由に使えなくなる「資産凍結リスク」と、②医療技術・介護サービスの充実により、長寿化や様々な介護システム利用のために、老後の資金が予測できないという「長寿リスク」があります。
①については、本人の資産である以上、例え家族の意思確認が取れても、本人の意思表示がなければ法律行為を行うことはできません。そのため、本人の意思確認が出来ないと、成年後見制度を利用しなければ本人の財産が使えなくなるのです。
では成年後見制度を利用すればよいかというと、成年後見制度は本人の財産を減らさないようにすることに主眼があり、自由に本人の財産が使えるわけではありません。
本人の定期預金の解約や、本人の不動産を売って介護費用を捻出することは難しくなります(もちろん、本当に必要なお金であれば支出することはできます。しかし、本当に本人にとって必要不可欠な最低限の事柄しか対応することができません。)。
そこで、判断能力の低下・喪失前に成年後見に代わる財産管理の手段として家族信託を考える必要があります。
②については、長寿化自体は喜ばしい一方で、老後の入院費や介護費がいくら必要になるか分からないため、若く元気な内に思う存分使うことや、子や孫に財産をあげることが難しくなります。また、本人だけでなく子や孫が年をとった際に訪れる、「老々介護」・「老々後見」にも備えなければなりません。
自分が元気な内に老後の希望と現在の資産をなるべくオープンにし、老後の生活設計・収支を予測して、家族一人に負担させないために家族信託を考える必要があるのです。
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