前回の記事:
「【家族信託】受託者ってどんな人①」
受託者にはどのような権限と義務があるのでしょうか。
受託者には「信託の目的達成のために必要な権限」という広範な権限が与えられています(信託法26条)。
信託財産の現状を維持したり、賃貸等の収益を得るために信託不動産を利用・運用したりするだけでなく、信託契約等に定めれば、新たな不動産を購入したり建物を建設したり、銀行からの借入をしたりすることも可能です。
一方で、信託契約で受託者の権限を制限することもできます。
例えば、信託された不動産の賃貸は認めるが、売却は認めないとすることができます。
次に、受託者の義務を見てみましょう。
受託者には、広い権限が認められていますが、次のような義務も課されています。
善良な管理者の注意義務の略称である「善管注意義務」は、管理をする人の地位・職業に応じて要求される義務の程度が異なるものです。
「家族信託」の場合、受託者は財産管理の専門家でないことが多いので、簡単に言えば、他人の財産を預かっていることで一般常識的に要求される注意を払う必要があると考えてもらえばよいでしょう。例えば、借りているアパートの窓ガラスに、家具をぶつけて割らないように注意しなさい、といえばわかりやすいでしょうか。
また、信託契約では、「自己の財産に対するのと同一の注意義務」という善管注意義務より軽い注意義務にすることもできます。「自己の財産に対するのと同一の注意義務」とは、単に「善管注意義務」より軽いことを意味する法律用語です。なお、注意義務を免除する条項は無効となりことがあります。
②忠実義務(信託法30条)
受託者は、法令と信託目的に従って、専ら受益者の利益のため忠実に信託事務を行わなければならないことが定められています。
簡単に言うと、受託者となった子供が親の財産を自分のために使ったり、自分の子にあげたりするなど受益者の利益にならないことはしてはいけないという義務をいいます。
③分別管理義務(信託法34条)
受託者は、信託財産と自分の財産を区別して管理する必要があります。
自分の預金口座に信託財産を預けることは許されません。
分別管理義務を守るため、受託者は、信託の登記または登録できる財産を登記・登録しなければなりません。
しかし、登記・登録する義務を完全に免除することはできませんが、信託契約に定めた分別管理の方法をすることができます。
受託者の義務はまだあるのですが、長くなったので、続きは次回に説明させて頂きます。
次の記事:
【家族信託】受託者ってどんな人③