相続人の中に行方不明者がいて、失踪宣告を受けて遺産分割の手続きを終えたあと、行方不明だった相続人が現れた場合はどうなるのでしょうか。
この場合、裁判所が下した「失踪宣告」は取り消されることになります。
また、他の相続人たちが既に分割してしまった財産に関しては、失踪宣告が取り消された時点で残っている財産を限度に、行方不明だった相続人に返還すれば良いとされています。
ですので、行方不明者が存命であることを知らずに行った財産処分などは有効とされ、取り消されることはありません。
失踪宣告はどのような時に取り消されるのか、その取消の要件と、それによる効果は以下の通りです。
【要件】
・失踪宣告を受けた者が生存していること、または失踪宣告による死亡時と、実際の死亡時と異なった時に死亡したことが証明されたこと
・本人または利害関係人から取消の請求があったこと
【効果】
家庭裁判所は執行宣告を取り消す。
=失踪宣告により発生した身分上・財産上の法律効果は消滅する。
ただし、
①取消前に善意でなした法律行為の効果は遡ってまで消滅しない。
②失踪宣告を原因として財産を取得した者は、現存利益の限度で返還義務を負うが、悪意者には適用されない。
つまり、行方不明者の生存を知らずに既に財産を処分したり使ったりしてしまった分に関しては過去にさかのぼってまで返還の義務がないという意味です。この時は失踪宣告取消の時点での財産に限って返還の義務があります。
しかし、行方不明者の生存を知りながら、その事実を隠し財産を処分したり使ったりしてしまった場合は「悪意者」とみなされ過去にさかのぼり返還を求められることがあります。