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弁護士コラム

贈与税~未成年者への贈与~

2020.04.30

子供や孫のためにお金を援助してあげている方はたくさんいらっしゃると思いますが、贈与税について考えたことはありますか?お小遣い程度なら問題はありませんが、車の購入費用など高額な援助となると当然贈与税がかかってきます。
今回は、贈与税がかかるときはどんなときか、また未成年の子供や孫にも贈与することはできるのかを学んでいきましょう。

 扶養義務者から援助を受ける場合の贈与税

扶養義務に基づいて扶養義務者が子供や孫の養育費や生活費を支払っても、養育費や生活費を受け取った子供や孫に贈与税はかかりません。
そうでなければ、祖父母や親が子や孫に対し何か援助をするときに毎回贈与税が課税されることになってしまいます。

つまり、孫が通っている習い事の月謝や学校の入学金などは直接祖父母から支払ってもらったとしても贈与税はかからないということです。習い事だけでなく、家族全員が使う消耗品や食料を祖父母に直接支払ってもらっても同じことが言えます。

ただし、「収入のない人」への援助を「扶養義務」と言いますので、例えば、高収入の子供の口座に孫の養育費を振り込んでしまうとその場合は非課税とはならず、単純に「贈与」であると認識されてしまいます。

このような場合は、「収入がない家族への援助」であることをきちんと証明しなければなりませんので、孫の口座へ直接入金し通帳へ記録を残す形が良いでしょう。
また、生活費や養育費も「必要なものに限る」とされていますので、養育上最低限必要だと認められる文房具や学費、教材などが対象となります。さらに、海外への留学費用については、費用が高額になることが予想されますが、教育上必要なお金であれば問題ありませんので、課税の対象にはならないでしょう。

 養育費でも課税対象になる場合

養育費や生活費を「贈与」として受け取っても、課税の対象であるとみなされてしまう場合があります。
例えば、仕送りとして子供に渡していたお金を、きちんと養育費や生活費として本来の使い方をしていたときは課税の対象にはなりませんが、養育費として渡していたお金の一部を子供が自分名義の通帳に貯金していたり、車などを購入したときには、養育上必ず必要ではないものの購入費用としてみなされ、その部分について贈与税が課税される可能性がありますので十分に気を付けましょう。

また、現金以外で不動産や株式等を譲渡した場合も、仕送りではなく単純に贈与であると認識されてしまうため、贈与税が課税されるでしょう。基本的には仕送りに贈与税はかからないため課税されることはないですが、限度を超えた仕送りには贈与税が発生することがありますので、金額が適正か確認しておくと安心でしょう。

子供が結婚するときに、親から新しく住む家の購入費を援助してもらった場合は贈与税が課税されます(なお、一定の場合は「直系尊属からの住宅取得資金贈与の非課税特例」を利用することによって贈与税を非課税とすることも可能です。)。

しかし、日常生活のために必要な家電や家具の購入費用を援助した場合は課税の対象にはなりません。
さらに、結婚式や披露宴などは地域の慣習によって様々ですが、その費用を本来負担するべきであるとされている人が支払った場合は贈与に当たらないため課税の対象にはなりません。

つまり、新郎の両親が結婚式の費用を負担する慣習である地域では、新郎の両親が負担すれば課税対象にはならないということです。
出産の際に検診や入院にかかる費用を親に援助してもらった場合も、「治療に準ずるものである」として課税の対象にはなりません。
生まれてくる子供のために生活用品を親から買ってもらった場合も同じことが言えます。
贈与税の対象であるかどうかはそのときのケースによって様々で、一律に定められているものでもありません。
この場合はどうなのかな?と疑問に思ったら、まずは専門家に相談するのが良いでしょう。

 未成年者への「贈与」

民法では、「当事者の一方が、自己の財産を無償で相手方に与える意思を表示し、相手方が受諾をすることによって、その効力を生ずる行為」を贈与とされています。つまり、贈与を受ける人と、贈与する人の両方の意思を確認できなければ贈与は成立しません。
しかし、贈与を受ける人(「受贈者」といいます。)が未成年であるときは、親権者が法定代理人として法律行為を代理することになります。
そのため、意思表示をすることができない未成年者へ贈与をしたいときは親権者が承諾すれば贈与ができるのです。
また、婚姻していれば未成年者も成年者とみなしますので、この場合、婚姻した未成年者の承諾の意思表示によって、贈与は成立します。
そして、「贈与」の際に気を付けなければならないのが、「いつ、だれに、何を」贈与したかきちんと記録しておくことです。
贈与は口約束でも成立しますが、贈与契約書を作成し、未成年者に代わって親権者が法定代理人として署名捺印をしておくと良いでしょう。
また、贈与を確実にしたことを証明するために、現金をそのまま手渡しするなどは避け、口座へ入金し、通帳や取引履歴を見れば贈与した日や金額が分かるようにしましょう。
もう一つ注意が必要なのが、未成年者へ贈与された現金等を親権者が使用してしまうと贈与が認められません。
贈与された財産は、受贈者である未成年者のものです。親権者が管理をしてるからという理由であっても、親権者が使用することはできませんので注意して下さい。

 Q&A

Q1. 孫が海外留学をしたいと言っているので留学費用を援助してあげたいのですが、高額なお金を孫へ贈与する場合は贈与税がかかってしまうのでしょうか?

A1. 海外留学は高額な費用になることが予想されますが、文房具や教材などと同じように教育上必要なお金なのであれば、贈与税はかかりませんよ。

Q2. 子供が大学に進学し、一人暮らしを始めたので毎月仕送りをしています。これも贈与とみなされ、贈与税の課税対象になるのでしょうか?

A2. お子さんが養育費や生活費として使用していたときは課税の対象にはなりませんが、車などの養育上必ず必要ではないものを購入した場合は、課税対象となる可能性があります。

Q3. 孫へ贈与をしたいと考えています。贈与の場合は贈与契約書を作成しておいた方が良いと聞きましたが未成年の孫でも贈与契約書を作成することはできますか?

A3. 未成年の場合は、親権者が法定代理人として法律行為を行うことができます。意思表示をすることができない未成年者へ贈与をしたいときは親権者が承諾すれば贈与が可能です。

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