成年後見人に推定相続人となる親族が選任されることは多々ありますが、推定相続人が選任されることに問題はないのでしょうか?
今回は、推定相続人が成年後見人となることの問題点について説明をします。
1 裁判所の運用
現在の家庭裁判所の運用としては、後見人候補者が推定相続人であるかは基本的に問題視されておりません。他の推定相続人の同意が取れており、その他の条件(経歴、成年被後見人の意向等)に問題がなければ選任されています。
2 推定相続人が成年後見人になることの問題点
推定相続人は成年被後見人の死後に相続人となります。そのため、本来の後見業務は本人のための財産管理事務を目的に遂行しますが、将来の相続に備えた節税対策のために後見業務を行ってしまう可能性があります。
また、成年被後見人が亡くなった時点での遺産が多いほど、成年後見人が相続する遺産も多くなるため、潜在的に利害関係があるとの考え方もあります。
加えて、後見業務に不透明な部分がある際、成年被後見人の死後に相続人間での紛争の原因になりやすいといったリスクもあります。
以上の事情から、一定以上の資産を有する成年被後見人について、家庭裁判所の裁量で推定相続人を成年後見人には選任しない傾向があります。その場合は専門家(弁護士、司法書士など)が選任されることが一般的です。一定以上の資産の金額は、法律では定められておらず、各家庭裁判所の内規によって運用されているため、推定相続人を後見人候補者とする予定の方は事前に裁判所や地域の専門家に見通しを確認した方が良いと思われます。
もし、成年後見人に専門家が就任する可能性が高いと事前に分かっている場合には、ご自身と相性の良い専門家を探し、その専門家を後見人候補者とすることも1つの選択肢でしょう。
3 まとめ
以上の通り、推定相続人が成年後見人になることには、適正な後見業務の遂行という観点から疑義が残り、成年被後見人の死後に他の相続人との紛争の原因にもなり得るリスクも含んでいます。
成年被後見人の資産、推定相続人同士の関係性などから、誰が成年後見人に就任することが最も良いのか、申立前に専門家へ相談することをお勧めします。