平成30年の民法改正で、遺言執行者の権限はこれまでと比べどのように変わったのでしょうか。実際に、改正によって変わったポイントをご説明致します。
遺言執行者の権利義務
改正民法 1012条1項(遺言執行者の権利義務)
遺言執行者は、遺言の内容を実現するため、相続財産の管理その他遺言の執行に必要な一切の行為をする権利義務を有する。
これまで、旧民法1012条1項は「遺言執行者は、相続財産の管理その他遺言の執行に必要な一切の行為をする権利義務を有する。」と定められていましたが、本改正により「遺言の内容を実現するため」という文言が追加されました。
これにより、遺言執行者の責務は遺言内容を実現することであり、遺言執行者はその実現のために必要な一切の行為をする権限を持っていることが明確になりました。
遺言執行者の行為の効果
改正民法 1015条(遺言執行者の行為の効果)
遺言執行者がその権限内において遺言執行者であることを示してした行為は、相続人に対して直接にその効力を生ずる。
これまで、旧民法1015条は「遺言執行者は、相続人の代理人とみなす。」と定められていましたが、上記条文の通り改正され、改正民法1012条1項(遺言執行者の権利義務)に照らして遺言執行者の行為の効果が相続人に直接帰属するということが明らかになりました。
旧民法において、遺言執行者は相続人の代理人という立場であるとみなされていたため、遺言書に相続人にとって不利益となる内容が含まれていた場合、遺言執行者と相続人との間でトラブルが発生することがありました。
しかし、本改正により遺言執行者の任務はあくまで遺言者のために遺言内容を実現することであり、遺言者の意思と相続人の利益が対立する場合にも、遺言執行者としては相続人の利益のために行動するのではなく、遺言者の意思を実現するために任務を遂行するべきであるということが明記されたのです。
遺言執行者の任務の開始
改正民法 1007条2項(遺言執行者の任務の開始)
2 遺言執行者は、その任務を開始したとき、遅滞なく、遺言の内容を相続人に通知しなければならない。
これまで、遺言執行者がその任務を開始するとき、遺言執行者に就任したことを相続人へ通知するべきという規定はありませんでした。そのため、遺言執行者と相続人の間で、その通知がないことに関して、トラブルが発生することが少なくありませんでした。
しかし、本改正により遺言執行者の権限が強化され、遺言執行者の有無は相続人に大きな利害関係を及ぼすこととなったため、遺言執行者はその任務を開始したとき、遺言の内容を全ての相続人に通知することが義務付けられるようになりました。
※③へ続く