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弁護士コラム

遺言の方式(緊急事態に遺言を作成する方法)

2020.04.08

遺言の方法は普通方式と特別方式の2つに分けられます。今回は特別方式の遺言についてご説明します。

特別法式の遺言には、①一般危急時遺言(民976条)②難船危急時遺言(民979条)③一般隔絶地遺言(民977条)④船舶隔絶地遺言(民978条)の4つがあります。
このうち、①一般危急時遺言と②難船危急時遺言は危急時遺言と呼ばれています。危急時遺言とは、緊急時だけ使用される遺言の方式で、口頭による遺言が認められています。
しかし、他の遺言と比べると要件が緩和されているため、遺言者の意思が反映された遺言であるか家庭裁判所の確認が必須とされています。
また、③一般隔絶地遺言と④船舶隔絶地遺言は隔絶地遺言と呼ばれ、陸地から離れている等の事情により普通方式の遺言が作成できない場合にも認められた遺言です。
なお、危急時遺言とは異なり、家庭裁判所による確認は必要ではありません。

それぞれの遺言の要件は次のように定められています。

【一般危急時遺言】
この遺言は、持病やその他の事由によって死亡の危急に迫った遺言者が使用することができますが、3人以上の証人の立会いが必要です。
遺言の方法は、まず遺言者が1人の証人に遺言の趣旨を口頭で伝えます。次に、口頭で趣旨を聞いた証人の1人がその内容を筆記します。
そして、それを遺言者と他の証人に読み聞かせ又は閲覧させ、筆記の内容が正確であることを確認した後、証人全員が各自署名・押印を行います。
なお、一般危急時遺言の場合は、遺言の日から20日以内に家庭裁判所に確認を得なければ、遺言の効力が発生しませんので気を付けましょう。

【難船危急時遺言】
船舶遭難者遺言ともいわれています。船舶が遭難したときに、船舶中に死亡の危急に迫った遺言者が使用する遺言で、証人は2人以上必要です。
遺言の方法は、証人たちの前で口頭により遺言をし、証人の1人が遺言の趣旨を筆記します。その後、証人全員が署名・押印を行いますが、こちらも遺言の日から遅滞なく家庭裁判所に確認を得なければ遺言の効力を発生しません。

【一般隔絶地遺言】
伝染病のため行政処分によって交通を断たれた場所にいる場合にこの方式の遺言を使用することが可能です。
この遺言を作成するときは、警察官1人と証人が1人以上の立会いが必要であり、立会人の全員の署名押印が必要となります。また、この遺言は他人に代筆させることも認められています。
なお、この規定は伝染病のためと定められていますが、社会との交通が事実上又は法的に難しいと解釈された場合は、伝染病に限らず災害などで交通が途絶えてしまった遺言者にも適用できます。
また、遺言者の死亡後には家庭裁判所で「検認」の手続きを行う必要があります。さらに、遺言者が普通方式の遺言を行えるようになってから6カ月間生存した場合は、当該遺言の効力は失われてしまいます。

【船舶隔絶地遺言】
船舶中にある遺言者が使用することができる遺言で、この遺言を作成するときは、立会人(船長又は事務員)1人と証人が2人以上の立会いが必要です。
なお、代筆は一般隔絶地遺言と同様に認められています。遺言を作成した後は、遺言者、証人が遺言書に署名・押印をしましょう。
また、遺言者の死亡後に「検認」の手続きが必要であること、及び遺言者が普通方式の遺言を行えるようになってから6カ月間生存した場合は、当該遺言の効力は失われることも、一般隔絶地遺言と同様です。
なお、船舶隔絶地遺言は、難船危急時遺言とは異なりますので、遺言者に死亡の危急が迫っている必要はありません。

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