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フレックスタイム制導入の注意点とは?社労士に相談する前に押さえておきたい制度設計・導入手続・勤怠管理のポイントを弁護士・社労士が解説【基本編】

2026.09.16

フレックスタイム制の導入にあたって社労士に制度設計や就業規則・労使協定の整備を依頼する場合でも、会社側として対象者や勤務時間の自由度、清算期間などの基本方針を整理しておくことは重要です。特に、導入後の労働時間管理や残業代計算にはフレックスタイム制特有の考え方があります。
本記事では、フレックスタイム制の導入にあたり、経営者・人事担当者が専門家への相談前に押さえておきたい注意点を弁護士・社労士が解説します。

第1章 誰に導入し、どこまで勤務時間を自由にする?フレックスの制度設計で会社が決める3つのこと

フレックスタイム制の導入を社労士に相談する場合、会社側で労使協定の細かな内容まで決めておく必要はありません。一方で、自社でどのような働き方を実現したいのかは明確にしておく必要があります。
導入を検討する段階では、①対象者、②勤務を必須とする時間帯、③勤務時間を調整する期間の3点について、会社としての基本的な考え方を整理しておくことが重要です。

1-1 全社員に導入する必要はない|対象部署・従業員の範囲を決める

最初に検討したいのは、フレックスタイム制をどの部署・従業員に適用するかです。
フレックスタイム制は、必ず全社員を対象にしなければならない制度ではありません。労使協定で対象となる労働者の範囲を定めるため、業務内容に応じて特定の部署や職種のみを対象とすることも可能です。

たとえば、企画・開発・管理部門など、各従業員が自ら業務の進め方や勤務時間を調整しやすい部門では、フレックスを導入しやすい場合があります。
一方で、店舗の営業時間中は一定人数を配置する必要がある、受付担当者には所定の時間帯に勤務してもらう必要がある、顧客からの問い合わせに常時対応する必要があるといった部署では、同じ制度をそのまま適用すると業務に支障が生じる可能性があります。

まずは、部署や職種ごとに、始業・終業時刻を従業員の判断に委ねても業務を継続できるかを確認することから始めましょう。

1-2 コアタイムは必要か|会議・顧客対応から勤務必須時間を整理する

次に検討するのが、従業員全員に勤務してもらう必要がある時間帯です。
フレックスタイム制では、従業員が必ず勤務しなければならない時間帯としてコアタイムを設けることができます。

たとえば、11時から15時をコアタイムとすれば、その時間帯は原則として勤務してもらい、それ以外の範囲で従業員自身が始業・終業時刻を調整する制度にできます。
もっとも、コアタイムは必須ではありません。業務上支障がなければコアタイムを設けず、始業・終業時刻をより広く従業員の判断に委ねるフルフレックスタイム制を採用することもできます。

会社として検討すべきなのは、コアタイムを何時にするかという数字そのものよりも、まず「業務上、従業員が同じ時間帯に勤務する必要があるか」という点です。
定例会議を行う時間、顧客からの問い合わせが集中する時間、部署内で共同作業が必要な時間などを整理すると、勤務を必須とすべき時間帯が見えてきます。

1-3 清算期間は1か月か3か月か|勤務時間を調整したい範囲から考える

もう一つ重要なのが、「清算期間」をどの程度にするかです。
清算期間とは、フレックスタイム制において、その期間中に働くべき総労働時間を設定する期間です。現在は最長3か月まで設定できます。

たとえば、清算期間を1か月とする場合には、基本的にその月の中で勤務時間を調整します。ある日は長く働き、別の日は早く退勤するといった働き方が代表的です。
一方、業務の繁閑が月をまたいで生じる会社では、2か月や3か月の清算期間を設定することで、より長い期間で勤務時間を調整できる場合があります。

ただし、1か月を超える清算期間を設定する場合には、時間外労働についても1か月ごとの労働時間を確認するルールが加わります。勤怠管理や給与計算も、1か月清算の場合と比べて複雑になります。
そのため、会社側では「月内で勤務時間を調整できれば十分なのか」「繁忙月と閑散月をまたいだ調整まで必要なのか」という業務上のニーズを整理し、それを踏まえて社労士と具体的な清算期間を検討するのがよいでしょう。

第2章 就業規則の変更だけでは足りない|フレックス導入に必要な労使協定と届出

フレックスタイム制を導入するには、労働基準法上、就業規則その他これに準ずるものへの規定に加え、労使協定の締結が必要です。また、清算期間が1か月を超える場合には、労働基準監督署への届出も必要になります。

2-1 就業規則はどこまで見直す?勤務時間・遅刻・賃金規程との整合性を確認する

フレックスタイム制を導入するには、就業規則その他これに準ずるものに、始業・終業時刻を従業員の決定に委ねる旨を定めます。
現在の就業規則に「始業午前9時、終業午後6時」などと固定した勤務時間を定めていたり、「午前9時を過ぎた場合には遅刻として扱う」といった規定があったりする場合には、フレックスの対象者について、新たな制度設計との整合性を確認し、必要に応じて見直す必要があります。
また、賃金規程についても、労働時間が不足した場合の取扱いや時間外労働に対する賃金の計算方法との整合性を確認しなければなりません。

2-2 労使協定では何を決める?会社の希望を具体的な制度へ落とし込む

就業規則等への規定とは別に、フレックスタイム制についての労使協定を締結します。
労使協定では、対象となる労働者の範囲、清算期間、清算期間における総労働時間、標準となる1日の労働時間などを定めます。
前述したコアタイムのほかに、フレキシブルタイム(従業員がその範囲内で自ら始業・終業時刻を選択できる時間帯)の時間帯もここで定めます。

ここで、第1章で整理した会社側の希望が具体的な制度につながります。
たとえば、「開発部門のみ対象にしたい」「11時から15時までは全員に勤務してもらいたい」「勤務時間の調整は1か月単位で十分」といった会社側の希望を、労使協定や就業規則の内容へ反映していきます。

なお、フレックスタイム制についての労使協定と、時間外労働・休日労働に関するいわゆる36協定は別の制度です。フレックスタイム制を導入しても、法定時間外労働や法定休日労働をさせる場合には、36協定について別途確認する必要があります。

2-3 労基署への届出はいつ必要?清算期間が1か月を超える場合は別途手続がある

フレックスタイム制について労使協定を締結しても、清算期間が1か月以内であれば、その労使協定自体を労働基準監督署へ届け出る必要はありません。
一方、清算期間が1か月を超える場合には、労使協定に有効期間を定めたうえで、所轄の労働基準監督署長へ届け出る必要があります。届出には厚生労働省の「清算期間が1箇月を超えるフレックスタイム制に関する協定届」を使います。
これは、就業規則を変更した場合に必要となる届出とは別の手続です。

第3章 フレックスでも残業代は発生する|導入前に確認すべき勤怠管理のポイント

フレックスタイム制を導入すると、従業員自身が始業・終業時刻を決定するようになります。しかし、会社による労働時間管理が不要になるわけではありません。
また、フレックスを導入したからといって、残業代が発生しなくなるものでもありません。通常の勤務制度とは時間外労働の判断方法が異なるため、導入前に勤怠管理や給与計算の方法まで確認しておくことが重要です。

3-1 始業・終業時刻は自由でも勤怠管理は必要|実労働時間を把握できる仕組みにする

フレックスタイム制では、従業員が自ら始業・終業時刻を決定しますが、会社は実際の労働時間を適切に把握する必要があります。
厚生労働省のガイドラインでは、使用者は労働日ごとの始業・終業時刻を確認して記録し、原則として、使用者による現認またはタイムカード、ICカード、パソコンの使用時間などの客観的な記録を基礎として把握する方法が示されています。

したがって、フレックスを導入したことを理由に勤怠の打刻自体をなくしたり、月末に合計労働時間だけを申告させたりする運用は適切ではありません。
また、従業員が自ら選択した勤務時間であっても、長時間労働が続いている場合には、会社としてその状況を把握し、必要に応じて業務量や働き方を確認する必要があります。

フレックスタイム制で従業員に委ねられるのは始業・終業時刻の決定であり、労働時間管理そのものを従業員へ委ねる制度ではないという点を押さえておきましょう。

3-2 1日8時間を超えても直ちに残業とは限らない|フレックス特有の時間外労働の考え方

フレックスタイム制でも、法定時間外労働が発生した場合には、割増賃金を支払う必要があります。
ただし、通常の固定的な勤務制度とは、時間外労働の判断方法が異なります。

フレックスタイム制では、原則として清算期間全体を単位として法定時間外労働を判断します。たとえば、1か月の清算期間における法定労働時間の総枠が170時間で、実際に働いた時間が180時間だった場合には、原則として10時間が法定時間外労働となります。
そのため、ある日に10時間働いたからといって、8時間を超えた2時間が直ちに法定時間外労働になるとは限りません。
一方で、清算期間における実労働時間が法定労働時間の総枠を超えた場合には、その超過時間について時間外労働として取り扱う必要があります。

さらに、清算期間が1か月を超える場合には、長い清算期間を利用して特定の月に労働時間が集中しないよう、清算期間を1か月ごとに区分した各期間について、平均して1週間当たり50時間を超えた時間を時間外労働として扱うルールがあります。

また、午後10時から午前5時までの深夜労働や法定休日の労働については、フレックスタイム制であっても、割増賃金の取扱いを別途確認する必要があります。
具体的な残業時間の計算や給与システムへの反映については、制度設計の段階で社労士や給与計算担当者と確認しておくとよいでしょう。

3-3 毎朝の会議や顧客対応はどうする?既存の働き方とフレックスの運用をすり合わせる

就業規則や労使協定を適切に整備しても、現場の働き方が従来のままであれば、フレックスタイム制を十分に活用できない場合があります。
たとえば、制度上は9時より後の始業も選択できる設計としているにもかかわらず、毎朝9時から全員参加の会議を設定しているのであれば、制度上認めている働き方と実際の運用が合わなくなります。

もちろん、フレックスタイム制を導入したことにより、業務上必要な会議や顧客対応ができなくなっては本末転倒ですので、どの時間帯に従業員の勤務が必要なのかを整理したうえで、それをコアタイムや業務運用へ適切に反映することが重要です。

また、時間外労働の申請方法、コアタイム中に勤務しなかった場合の取扱い、顧客対応の当番、長時間労働者を確認する担当者など、実際の運用ルールについても導入前に検討しておく必要があります。

第4章 フレックスタイム制の導入は会社側の希望を整理して社労士に相談する

フレックスタイム制は、会社の業務内容や勤務体制によって適した設計が異なります。対象者をどこまで広げるか、コアタイムを設けるか、清算期間を何か月にするかによって、必要な規程や勤怠管理、給与計算の方法も変わります。そのため、実際の制度設計や就業規則・労使協定の整備に不安がある場合には、社労士に相談しながら導入を進める方法も考えられます。
社労士に相談する場合にも、担当者がフレックスタイム制の基本的な仕組みを理解し、自社ではどの部署に導入したいのか、どの時間帯に従業員の勤務が必要なのか、どの程度柔軟な働き方を実現したいのかといった希望を整理しておくことは大切です。本記事はそのための「基本編」として、社労士との相談を進める前に経営者・人事担当者が押さえておきたい事項を中心に解説しました。

私たちNexill&Partners(ネクシル&パートナーズ)グループでは、社会保険労務士と弁護士が連携して企業の労務管理をサポートしています。給与計算など実際の労務運用から、就業規則などの規程整備、残業代をはじめとする法的な問題まで、必要に応じてグループ内の専門家が連携して対応できる体制を整えています。フレックスタイム制の導入を検討されている場合には、お気軽にご相談ください。

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