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外国人労働者を派遣社員として受け入れる際の在留資格の注意点|業種・業務に応じたポイントを弁護士・社労士が解説

2026.06.11

人手不足を背景に、外国人派遣労働者の受け入れを検討する企業が増えています。
しかし、在留資格と実際の業務が合致していない場合、派遣先企業にも法的リスクが及ぶおそれがあります。本記事では、代表的な業種・業務に応じた在留資格のポイントや、派遣先企業として確認すべき事項を弁護士・社労士の視点で解説します。

もくじ

第1章 知らなかったでは済まない?在留資格の基本知識

1-1 在留資格とは何か

外国人派遣労働者が日本で就労するには、出入国管理及び難民認定法(入管法)に基づく在留資格が必須です。
在留資格は、外国人が従事できる業務の範囲を法的に定めており、学業、就労、家族滞在など活動区分に応じて種類が分かれています。
派遣先企業としては、資格の範囲外で業務に従事させると、外国人本人だけでなく、入管法第73条の2に定める不法就労助長罪に問われるおそれがあります。
違反した場合は、3年以下の懲役もしくは300万円以下の罰金、またはその両方が科される可能性があるため、重大なリスクがあります。
こうしたリスクを回避するには、派遣社員の在留資格の種類や範囲を正確に把握することが不可欠です。

1-2 派遣労働者に関わる代表的な在留資格

派遣先企業で就労する外国人に関係する代表的な在留資格は、以下の通りです。

永住者 / 定住者 / 日本人の配偶者等

就労制限がなく、原則としてどのような職種でも就労可能です。

技術・人文知識・国際業務

専門的・技術的な業務に限定されます。派遣で受け入れる場合、職務内容が資格要件に合致することを確認する必要があります。

特定技能

特定分野(農業、建設、介護等)に特化した業務に従事可能です。派遣での就労には制約があるため注意が必要です。

留学・家族滞在

資格外活動許可を得ることで一部就労可能ですが、許可範囲内での業務に限られます。

派遣会社から「問題なし」と説明を受けても、派遣先として自社で資格範囲を確認しておくことが、トラブル回避には不可欠です。

1-3 資格外活動・就労制限とは

在留資格によっては、就労時間や業務内容に制限があります。
たとえば、留学生は資格外活動許可がなければ業務に従事できません。
派遣社員の業務を割り振る前に、資格の種類、範囲、制限を確認し、業務内容が適法であることを把握してください(1-1参照)。

第2章 派遣先企業が押さえておきたい確認ポイント

2-1 在留カードの確認方法と重要項目

外国人派遣労働者には在留カードが交付され、業務上確認すべき情報が明示されています。派遣先企業は、派遣元から提供された情報だけでなく、自社でも以下の項目を確実に把握しておくことが望まれます。

  • 在留資格の名称
  • 在留期間の満了日
  • 就労制限の有無(資格外活動許可の有無)
  • 就労条件や指定された活動内容に関する記載

カードのコピー確認やデータ管理を徹底することで、資格範囲の逸脱によるトラブルを未然に防ぐことができます。情報共有が不十分なまま業務を指示すると、法的リスクが派遣先企業に及ぶ可能性があります。

2-2 有効期限と更新時の留意点

在留カードの有効期限切れでの就労は違法です。
派遣先企業は、在留期間が迫っている場合には、更新申請の有無や審査状況を派遣元に確認し、適法に就労できるかを判断したうえで、業務開始や割り振りを決定する必要があります。
また、更新手続きの進捗状況や資格内容の変更についても派遣元と情報共有し、適法な範囲で業務を実施する体制を整えておくことが重要です。

2-3 派遣会社が確認済でも企業が注意すべき理由

派遣元が資格確認を済ませている場合でも、派遣先が職務内容と資格範囲の整合性を把握していないと、入管法第73条の2に基づく責任や行政指導の対象となるおそれがあります。
たとえば、派遣先が自社内で単純作業に従事させる目的で派遣を希望しているところに、派遣会社が「技術・人文知識・国際業務」の在留資格を持つ外国人を紹介し、派遣先にて在留資格を特に確認することなく単純業務に従事させてしまうと、派遣先も不法就労助長罪に問われてしまいます。
こうしたリスクを低減するため、派遣契約書には以下の項目を明記しましょう。

  • 派遣労働者の業務範囲
  • 在留資格適合性に関する確認条項
  • 資格変更や更新時の報告義務

条項を明確化することで、派遣先企業としても法令遵守とトラブル回避の体制を整備できます。

2-4 情報共有・社内体制の重要性

社内での確認フローや情報共有体制を整えることも不可欠です。

  • 外国人労働者の同意を得て派遣元から提供される在留資格情報を定期的に確認
  • 更新手続きや業務内容の変更は社内で速やかに共有
  • 人事・総務・現場責任者間で確認ルールを文書化

こうした運用により、派遣社員が資格不適合となった場合の法的・労務リスクを低減できます。そのため、実務担当者が主体的に関与し、確認フローを運用することが、安定した外国人雇用環境の維持につながります。

第3章 現場で押さえておきたい業種別の在留資格適合例

3-1 製造ライン・倉庫作業のポイント

製造ラインや倉庫作業では、単純作業が中心となる場合があります。在留資格「技術・人文知識・国際業務」は、専門的または技術的な業務への従事が前提です。
そのため、単純作業に従事させると資格要件に適合せず、不法就労助長罪の責任を派遣先企業が負うリスクがあります。
一方、永住者や定住者は就労制限がありません。
ただし、業務の割り振りや労働条件のミスマッチを防ぐため、作業内容の整理や社内ルールの整備は依然として必要です。派遣契約上の責任分担を明確にしておくことで、資格範囲内での適正な業務運用が可能になります。

3-2 接客・飲食・宿泊業務の注意点

接客や飲食、宿泊業務では、業務内容によって資格適合の可否が分かれます。
ホテルフロントやレストランの受付業務など、一定の専門知識や対応力を要する職務であれば「技術・人文知識・国際業務」に適合するケースがあります。
しかし、清掃や配膳など単純作業主体の場合は、資格要件に合致しないことが多く、派遣先企業として注意が必要です。派遣社員に指示する前に職務内容を整理し、派遣元と合意したうえで受け入れることで、業務の法的整合性を確保できます。また、派遣契約の法的性質に沿って、指揮命令権は派遣先が有しつつ、責任範囲も明確にしておくことが後のトラブル回避につながります。

3-3 介護・福祉業務に必要な資格

介護・福祉分野では、在留資格「介護」、身分系在留資格、特定技能1号(介護分野)など、在留資格の種類によって従事できる業務範囲や受け入れ方法が異なります。
特に特定技能1号(介護分野)については、直接雇用は可能ですが派遣形態で雇うことができないため、注意が必要です。
資格範囲外の業務を担当させると、派遣先企業も不法就労助長罪や行政指導のリスクを負うおそれがあります。受け入れ前に、資格の種類と業務内容が一致しているかを必ず確認することが求められます。

3-4 事務・IT関連業務での確認事項

事務やIT関連業務では、「技術・人文知識・国際業務」が適用されることが多く、専門知識や技能が前提となります。派遣先企業は、業務内容が資格要件に合致しているかを精査し、派遣契約書に業務範囲を明記することが望まれます。業務内容が変更される場合は、資格範囲内であるかを再確認し、必要に応じて派遣元と情報を共有する運用を構築することが推奨されます。

第4章 確認を怠るとどうなる?派遣先企業が直面するリスク

4-1 法的リスク(不法就労助長罪)

派遣先企業が外国人派遣労働者に資格外の業務を従事させると、不法就労助長罪に問われる場合があります。違反した場合は、3年以下の懲役または300万円以下の罰金、またはその両方が科されることもあり、派遣先企業にとって重大なリスクです。
たとえば、「技術・人文知識・国際業務」の在留資格を持つ社員を、単純作業中心の製造ラインで従事させた場合、資格要件に適合せず法的責任が派遣先にも及ぶ可能性があります。このため、派遣先企業は資格の範囲と業務内容の整合性を確認することが、法務リスクを避けるうえで重要です。

4-2 行政上のリスクと指導可能性

厚生労働省や入管当局は、外国人雇用における法令遵守状況を監督しています。資格外業務を行わせると、労働局や入管当局による調査・行政指導等の対象となる場合があります。
重大な違反があれば、企業名公表や行政罰のリスクもあるため、派遣先企業は事前の確認と社内体制の整備を徹底すべきです。事後対応だけでなく、日頃から資格確認と情報共有のルールを運用することが、行政リスクを抑えるポイントです。

4-3 派遣先企業が注意すべき点の整理

派遣先企業においては、以下のポイントが押さえられているか、一度現状を確認してみましょう。

  • 派遣元任せにせず、自社でも業務内容と資格範囲を照合していますか?
  • 在留カードの内容、資格外活動の有無、有効期限を把握していますか?
  • 派遣契約書に業務範囲、資格適合、情報共有義務を明記していますか?
  • 業務内容変更や資格更新時に、派遣元との情報連携を必ず実施していますか?
  • 社内チェック体制を整備し、人事・総務・現場責任者が上記確認フローに関与していますか?

もし、不十分な箇所がある場合は、リスクやトラブルを予防するためにも、次章の内容も参考に社内での対応フローを検討されることをお勧めします。

第5章 現場で実践!失敗を防ぐ確認・社内体制づくり

5-1 派遣会社への確認事項リスト

外国人派遣労働者を受け入れる際、派遣先企業は派遣元に対して以下の項目を確認することが推奨されます。

  • 派遣労働者の在留資格名称と、その資格で従事可能な業務範囲
  • 在留期間の満了日および更新予定の有無
  • 派遣契約書に明記された業務内容の範囲と、在留資格適合性に関する確認条項
  • 在留資格に変更が生じた場合の報告・連絡フロー

契約書や確認書面にこれらを明文化しておくことで、万一のトラブル発生時にも迅速に対応できます。派遣元が資格内容や業務範囲の変更に気付かないケースもあるため、派遣先として確認体制を自社で持つことが法的リスク低減につながります。

5-2 社内チェック体制の構築ポイント

社内でも情報共有と確認フローを整えることが不可欠です。
具体的な運用例は以下の通りです。

  • 派遣元から提供される在留資格情報を定期的に確認
  • 業務内容に変更がある場合の社内連絡・報告体制を明確化
  • 派遣社員の業務内容が資格範囲に適合しているかを定期確認
  • 人事・総務・現場責任者間でチェックフローを運用

このような体制を整備することで、業務指示や資格確認の抜け漏れを防ぎ、派遣社員が資格外業務に従事するリスクを軽減できます。
そして、文書化しておくと、監督官庁の調査時にも説明しやすくなります。

5-3 弁護士・社労士に相談すべきタイミング

派遣先企業が専門家に相談すると効果的なタイミングは以下です。

新たな在留資格を持つ外国人を受け入れる前

資格の適法性や業務範囲の整合性を事前確認する

業務内容に大幅な変更がある場合

資格範囲内で業務が行われるかチェックする

在留資格の範囲が不明瞭な場合

資格外活動許可や制限条件の確認を専門家に依頼する

派遣契約書作成・条項整備時

契約条項が資格確認、情報共有、責任分担を網羅しているかを確認

弁護士や社労士の助言により、契約条項の法的整合性を確保し、監督官庁対応の指針も得られます。専門家のサポートを活用することで、法的・行政的リスクを低減しつつ、派遣社員に安心して働いてもらえる環境を整えられます。

第6章 まとめと次のアクション

外国人派遣労働者を受け入れる際、派遣先企業が確認すべき事項は多岐にわたります。
まず、派遣社員の在留資格の種類、有効期限、就労制限の有無を把握し、業務内容が資格の範囲内であることを確認することが基本です。単純作業や資格外活動に従事させると、派遣先企業にも不法就労助長罪や行政指導のリスクが及ぶため、事前確認と契約書の条項整備が欠かせません。業種ごとに注意すべきポイントも整理しておくと、実務上のトラブルを防ぎやすくなります。
製造・物流など単純作業が中心の業務では、資格範囲との適合性を慎重に確認してください。また、接客・飲食・宿泊業務では、業務の専門性や対応範囲を把握することが重要です。
加えて、介護・福祉分野やIT・事務系業務でも、在留資格に応じた適合性を確認し、派遣契約書で業務範囲を明示することが、リスク回避につながります。
さらに、派遣元との情報共有や社内チェック体制を整備することで、資格変更や業務変更が発生した場合にも迅速に対応できます。
そして、人事・総務・現場責任者が連携して確認フローを運用することで、法的・労務的リスクを抑え、派遣社員が安心して働ける環境づくりに役立ちます。
派遣先企業が実務で迷う場合や契約条項の整備に不安がある場合には、弁護士・社労士による専門的な助言が有効です。
Nexill&Partners(ネクシル&パートナーズ)グループは、弁護士・社労士・司法書士・税理士・行政書士が連携するワンストップ体制を整えており、企業の外国人雇用に伴う法務・労務全般をサポートできます。
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