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採用時・退職後の個人情報はどう管理する?保存期間・廃棄・社内ルールを弁護士・社労士が解説

2026.11.05

採用時に取得した応募者の個人情報や、退職後も会社に残る従業員の個人情報は、その後どのように扱えばよいのでしょうか。また、不採用者の履歴書や応募データ、退職者の人事情報について、いつまで保存し、どのタイミングで削除・廃棄すべきか判断に迷っていませんか。
本記事では、採用時から退職後までの個人情報について、保存期間や廃棄・削除のタイミング、会社が定めておきたい管理ルールを弁護士・社労士が解説します。

もくじ

第1章 採用・退職に関する個人情報に一律の保存期間はない

個人情報保護法には、「採用に関する個人情報は取得後○年間保存すること」といった一律の保存期間が定められているわけではありません。
ただし、会社は取得した個人情報について適切に管理する必要があり、労働基準法など別の法令によって一定期間の保存が義務付けられている書類もあります。

第2章 【採用時】応募者の個人情報はどこまで取得し、いつまで保存する?

採用活動では、履歴書や職務経歴書だけでなく、採用管理システムへの登録情報や、面接記録、適性検査結果など、さまざまな個人情報を取り扱います。
採用時の情報管理では、まず「何を取得するか」を確認し、その後、不採用・辞退となった場合と採用した場合とで管理方法を分けて考えることが大切です。

2-1 採用時に取得できる個人情報はどこまで?

採用業務に必要な範囲で個人情報を取得する

採用時に取得する個人情報は、採用選考や応募者への連絡など、採用業務の目的を達成するために必要な範囲にとどめるのが基本です。職業安定法でも、求職者等の個人情報は、その業務の目的を明らかにしたうえで、目的の達成に必要な範囲で取り扱うことが求められています。
そのため、履歴書や職務経歴書に通常記載される情報など、採用業務に必要な情報を取得し、本人の適性や能力と関係しない事項を採否判断のために把握しないよう注意する必要があります。

主な情報の例
一般的に履歴書や職務経歴書に記載する情報 氏名、住所、電話番号、学歴、職歴、資格など
採用選考での取得に注意が必要な情報 本籍、出生地、家族の職業・収入、宗教、支持政党、思想・信条、労働組合への加入状況など

 
また、健康情報についても採用選考に必要な範囲に限定されます。合理的・客観的な必要性がない場合には、採用選考の段階で一律に健康診断を実施することなどは避けるべきです。

2-2 不採用者・辞退者の履歴書や応募データはいつまで保存する?

個人情報保護法には、不採用者・辞退者の履歴書を「採用活動終了後○か月以内に廃棄する」といった具体的な保存期間はありません。また、会社が受け取った履歴書について、個人情報保護法上、必ず本人へ返却しなければならないというルールもありません。
そのため、自社で合理的な保存期間を設定するのが一般的です。

たとえば、選考結果に関する問い合わせ対応や、一定期間内に再応募を受け付けない運用としており、応募歴確認のため、採用選考終了後もしばらく情報を残しておくことなどは合理性が認められる可能性があります。
一方で、「将来使うかもしれない」といった曖昧な理由だけで何年も保存し続けることは適切とはいえません。

2-3 採用した人の応募書類や選考データは入社後どう管理する?

応募者を採用した場合には、採用時に取得した情報の一部が、そのまま従業員の人事情報として引き継がれます。
労働基準法では、雇入れに関する重要な書類を保存することが義務付けられており、厚生労働省はその具体例として以下のような書類をあげています。

厚生労働省が例示する雇入れに関する重要な書類
  • 雇入決定関係書類
  • 雇用契約書などの契約書
  • 労働条件通知書
  • 履歴書
  • 身元引受書 など

 
現在は経過措置により、これらの書類は在職中は継続して保管し、退職または死亡の日から3年間保存する必要があります。経過措置の終了時期は現時点では決まっていませんが、労働基準法上の本来の保存期間は5年間とされているため、経過措置が終了した後は5年間の保存が必要になります。

「雇入決定関係書類」に含まれる可能性がある選考資料

雇入れに関する重要な書類のうち「雇入決定関係書類」について、厚生労働省は具体的にどの資料まで含まれるのかを細かく列挙しているわけではありません。実際に採否判断の根拠として使用した資料については、雇入決定関係書類に該当する可能性があるため、次のような資料も採用後すぐに削除せず、保存しておくことが考えられます。

  • 面接評価シート、面接官の評価表
  • 採用選考の採点表、選考結果一覧
  • 適性検査、性格検査などの結果
  • 筆記試験や実技試験の答案、評価表
  • 採用試験の総合評価表
  • 採否を決定するために作成した社内稟議書、採用決定書
  • リファレンスチェックの結果など、採否判断の資料として使用した記録 など
採用後に利用する必要がなくなれば削除・廃棄する情報

一方、採用判断の根拠となる資料ではなく、採用事務のためだけに一時的に作成・保存した情報については、採用後も保有する必要があるかを見直します。
たとえば、次のような情報です。

  • 面接や採用試験の日程調整のためのメモ
  • 受付や当日の出欠確認のためだけに作成した名簿
  • 会社として保存すべき応募書類を別途管理している場合の重複コピー
  • 採用手続が完了した後は使用しない作業用の一覧表や管理データ など

 
これらについては、採用後も利用する必要がない場合には削除・廃棄します。

従業員の個人情報はどこまで利用・共有できる?履歴書・健康診断結果などの管理ルールを弁護士・社労士が解説

第3章 【退職後】退職者の個人情報は何を残し、いつ削除する?

3-1 退職後も保存が必要な書類と保存期間を確認する

退職者に関する書類の中には、法律によって保存期間が定められているものがあります。
代表的なものは次のとおりです。

主な書類 保存期間 主な根拠
労働者名簿、賃金台帳、雇入れ・解雇その他労働関係に関する重要書類 法律上5年。ただし当分の間3年 労働基準法
一般健康診断の健康診断個人票 5年 労働安全衛生規則
雇用保険の被保険者に関する書類 4年 雇用保険法施行規則
その他の雇用保険に関する書類 2年 雇用保険法施行規則

 
いずれも単純に「退職日から○年」と数えればよいとは限らない点に注意が必要です。書類によって保存期間の起算点が異なるため、実際に廃棄時期を設定するときは、その書類に適用される法令の確認が必要です。

また、特殊な健康診断や助成金関係書類などについては、法令や制度によって、より長い保存期間が定められている場合があります。自社で扱っている書類を一度洗い出したうえで、それぞれの保存期間を確認するとよいでしょう。

3-2 法定保存期間のない人事データはいつまで残す?

退職者の人事評価や面談記録など、法令で保存期間が定められていない情報については、会社が保存期間を決めることになります。
このとき注意したいのが、退職後に元従業員から請求や訴訟を受けた場合に必要となる証拠です。早い段階ですべての人事データを削除してしまうと、会社側の対応が適切だったことを説明するための資料まで失われるおそれがあります。

賃金・労働時間に関係する情報は3年間を一つの目安にする

現在の経過措置では、未払残業代を含む賃金請求権の消滅時効は、原則として、それぞれの賃金の支払期日から3年間です。
そのため、労働時間や賃金に関係するメール、業務指示の記録、パソコンのログなど、退職後の請求に対する証拠となり得る情報については、少なくとも最終の給与支払期日から3年間を一つの目安として保存することが考えられます。

一方、退職後の紛争への対応にも必要なく、法令上の保存義務もない情報については、保存期間を決めて削除・廃棄します。

未払い残業代請求の時効は3年|使用者側が知っておくべき法的ポイントとリスク対策

第4章 採用・退職時の個人情報管理を社内ルールとして整備する

採用時や退職後の個人情報について保存期間や削除の基準を決めたら、担当者が変わっても同じ基準で運用できるよう、社内ルールとして整備することが重要です。
その際は、保存期間だけでなく、どこに保存するのか、誰が閲覧できるのか、保存期間が経過した後にどのように削除・廃棄するのかまで決めておく必要があります。

4-1 情報ごとに保存場所・閲覧範囲・保存期間・廃棄方法を社内ルールとして定める

社内ルールを整備する際には、採用や人事・労務管理で取り扱う個人情報について、少なくとも次の事項を定めておくとよいでしょう。

管理項目 定めておく内容
保存場所 採用管理システム、人事システム、指定した共有フォルダ、施錠できる書庫など、情報ごとの保存先を決める
閲覧範囲 採用情報は採用担当者、人事情報は必要な人事担当者など、業務上必要な人だけが閲覧できるようにする
保存期間 法定保存期間がある情報は法令に従い、それ以外は利用目的や退職後の紛争への対応などを踏まえて期間を定める
廃棄・削除方法 紙の資料はシュレッダー処理などで廃棄し、電子データも復元できない方法でシステムや共有フォルダ、メールなどから削除する
管理責任者 保存期間の確認や削除・廃棄を誰が管理するのかを決める

 
特に注意したいのが、個人情報の保存先を担当者ごとの判断に任せないことです。
たとえば、履歴書を採用管理システムで管理しているにもかかわらず、採用担当者が自分のパソコンにも保存していたり、メールで受け取った応募書類が受信箱に残り続けていたりすると、会社として保存期間を決めても、すべての情報を管理することが難しくなります。

個人情報を保存する場所をできる限り限定し、必要以上に複製しない運用にしておくことも大切です。

4-2 保存期限を管理し、削除・アクセス権の変更まで実行できる運用にする

保存期間を定めた情報については、保存期限の到来を把握し、削除・廃棄まで実行できる仕組みを設けておく必要があります。採用管理システムや人事システムに期限管理・通知機能がある場合はこれを利用し、そうした機能がない場合には人の手で保存期限を管理することになるため、担当者を明確にしたうえで、ダブルチェックや定期的な確認の機会を設けるなど、期限を過ぎた情報がそのまま放置されない運用にしておくことが重要です。

また、人事・採用担当者が異動・退職する場合には、採用管理システムや人事システム、共有フォルダ、クラウドサービスなどのアクセス権限を削除・変更します。あわせて、担当者のパソコンやメールなどに応募者や従業員の個人情報が残っていないかも確認します。

保存期間の設定だけでなく、保存期限の管理、期限経過後の削除・廃棄、担当者変更時のアクセス権限の見直しまでを一連の社内運用として定めておきましょう。

第5章 【FAQ】採用時・退職時の個人情報の取扱いでよくある疑問

Q1. 不採用者・辞退者から「応募情報を削除してほしい」と求められたら、保存期間中でも削除する必要がありますか?

A1. 合理的な保存目的が残っている間は、直ちに削除する必要はありません。

個人情報保護委員会は、不採用者の情報が保有個人データに該当する場合、再応募への対応等のための合理的な期間が経過した後は、本人から利用停止・消去を求められれば応じる義務があるとしています。反対にいえば、選考結果への問い合わせ対応や一定期間内の再応募確認など、合理的な保存目的が残っている期間中は、「削除してほしい」と求められたことだけで直ちに消去義務が生じるわけではありません。

ただし、保存期間は業務上の必要性等を踏まえて必要以上に長期とならないようにする必要があります。また、目的外利用や不適正利用があった、本人の権利・正当な利益を害するおそれがあるなど、個人情報保護法の別の要件に該当している場合には、保存期間中でも利用停止・消去に応じる必要が生じ得ます。

Q2. 退職者から「会社が保有している自分の情報を削除してほしい」を求められたら消去しなければいけませんか?

A2. 「将来紛争になるかもしれない」という理由だけで削除を拒めるとは限りません。

法令上の保存義務がある書類は、本人から削除を求められても保存する必要があります。一方、法定保存期間のない人事記録について、まだ紛争が生じておらず、紛争となる具体的な兆候もない場合に、「将来請求を受けるかもしれない」という理由だけで削除請求を拒めるかについて、一律の基準は示されていません。

個人情報保護法上、利用する必要がなくなった保有個人データについて本人から消去を求められた場合、原則として応じる必要がありますが、法的な権利行使や防御のために保存する事情も判断要素となります。自己判断で削除・保存を決めず、弁護士に確認することをおすすめします。

まとめ|個人情報は「残しすぎ」「消しすぎ」のどちらにも注意が必要

採用時や退職後の個人情報は、長く残しすぎれば情報漏えいのリスクが高まり、反対に早く削除しすぎると、後日の労務トラブルで必要な資料を失うおそれがあります。そのため、保存期間や削除の基準などについて一貫した社内ルールを整備しておくことが重要です。

もっとも、個人情報保護法ではすべての情報について具体的な保存期間が定められているわけではなく、実際には労働関係法令や紛争リスク、自社の運用状況も踏まえて判断する必要があります。そのため、社内だけで適切な基準を決めることが難しい場合もあります。

私たちNexill&Partners(ネクシル&パートナーズ)グループでは、弁護士と社会保険労務士が連携し、採用時から退職後までの個人情報管理について、社内ルールの整備や実際の運用までサポートしています。自社の管理方法を見直したい場合は、お気軽にご相談ください。

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