アルバイトの勤怠管理では、シフト表による所定労働日・時間の事前設定、時間外労働(残業)の事前承認制、および休憩時間について一定時間の自動控除等により労働時間を把握・管理する手法が広く用いられています。
しかし、こうした仕組みを設けていても、実際に働いた時間を正確に把握できていなければ、未払賃金など思わぬ労務トラブルにつながることがあります。
本記事では、アルバイトの勤怠管理で企業が押さえておきたい労務上の注意点と、勤怠管理システムを選ぶ際のポイントを弁護士が解説します。
もくじ
- 第1章 アルバイトの勤怠管理で企業が把握すべき労働時間
- 第2章 アルバイトの勤怠管理で法的問題が生じやすい運用
- 第3章 労務管理のミスを防ぎやすい勤怠管理システムの5つの機能
- 第4章 アルバイトの勤怠問題を未払残業代などのトラブルに発展させないための早期対応
- 第5章 【FAQ】アルバイトの勤怠管理に関するよくある質問
- 第6章 アルバイトの勤怠管理・労務管理に不安がある場合は弁護士へ相談を
第1章 アルバイトの勤怠管理で企業が把握すべき労働時間
アルバイトの勤怠管理は、シフト上の勤務時間ではなく、実際に働いた時間を正確に把握するのが基本です。アルバイトにも労働時間や休憩、時間外・深夜労働などのルールが適用されるため、雇用形態を理由に簡易な勤怠管理でよいわけではありません。
1-1 アルバイトも始業・終業時刻を客観的な記録に基づいて管理する
アルバイトについても、実際に仕事を始めた時刻と終えた時刻を労働日ごとに把握し、記録しておく必要があります。
厚生労働省のガイドラインでは、使用者が自ら始業・終業時刻を確認するほか、タイムカードやICカードによる打刻、パソコンの使用時間など、実際の勤務状況を裏付ける客観的な記録をもとに労働時間を把握することが原則とされています。
1-2 シフト上の勤務時間ではなく実際の労働時間を把握する
予定していたシフトではなく、勤怠管理システムなどを利用して、実際に何時から何時まで働いたのかを日ごとに記録するのが勤怠管理の基本です。
たとえば、17時から22時までのシフトを組んでいたとしても、実際に16時55分から会社の指示で開店準備を行い、22時10分まで閉店作業をするなど、その時間が使用者の指揮命令下にあると認められる場合には、実際の労働時間として記録しなければなりません。
1-3 休憩・時間外労働・深夜労働まで勤怠情報として把握する
アルバイトについても、労働時間に応じた休憩を確保するとともに、時間外労働や深夜労働が発生した場合には、法律に従って割増賃金を支払わなければなりません。
具体的には、労働時間が6時間を超える場合は少なくとも45分、8時間を超える場合は少なくとも1時間の休憩を勤務の途中に確保します。
また、法律上の時間外労働に当たる時間や、午後10時から午前5時までの深夜労働については、原則として所定の割増率による割増賃金の対象となります。
第2章 アルバイトの勤怠管理で法的問題が生じやすい運用
勤怠管理をしていても、その方法によっては実際の労働時間が正しく記録されず、未払賃金などの問題につながることがあります。特に注意したいのは、社内ルールを優先して勤怠を処理しているケースです。
2-1 着替えや開店準備を打刻前に行わせると労働時間の未計上につながる
会社の指示で必要な準備や後片付けを行わせている場合、その時間も労働時間に当たることがあります。
たとえば、17時の始業時刻までに制服への着替えや開店準備を終えるよう求めている場合です。
使用者の指示による業務上必要な準備行為などは、その実態によって労働時間に該当します。
労働時間の未計上につながりやすい業務の例
- 会社から着用を義務付けられた制服や作業着への着替え
- 開店前後の清掃や店舗・売場の準備、片付け
- 商品の陳列や在庫の確認
- レジの立ち上げや締め作業
- 朝礼や業務上の申し送り
- 日報の作成や翌日の業務準備 など
2-2 未承認の残業代が当然に不要になるわけではない
残業の事前承認制は、従業員が自由に残業することを防ぎ、会社が労働時間を管理するためのルールとして設けることができます。しかし、事前承認を受けなかったことだけを理由に、実際に行われた残業について当然に賃金を支払わなくてよいわけではありません。
たとえば、店長がアルバイトの残業を認識しながら業務を続けさせるなど、黙示的に残業を指示していたと評価される場合には、残業申請が提出されていなくても、その時間が労働時間と判断される可能性があります。
未承認の残業が発生した場合は、勤怠から除外するのではなく、まず勤務実態を確認します。そのうえで、事前承認のルールに違反したことについては本人への注意・指導や業務の進め方の見直しなどを行い、勤怠処理とは分けて対応することが求められます。
※勤怠管理の不備によって未払残業代が発生するリスクや、企業側で行うべき予防策については、本サイト内の「残業代問題」でも詳しく解説しています。
残業代問題における企業経営のリスク
2-3 休憩時間を自動控除していても、業務から離れられなければ労働時間となる
勤怠管理システムで休憩時間を自動控除する場合、実際にその時間を休憩できていることが前提です。
休憩は、労働者が業務から離れることが保障され、自由に利用できる時間でなければなりません。そのため、休憩中であっても、来客や電話があれば対応することが職場の慣行となっているなど、実際には業務から離れられない状態にある場合には、その時間が労働時間に当たり、賃金の未払いが生じる可能性があります。
たとえば、次のようなケースでは、システム上の休憩時間と実態にズレがないか確認が必要です。
休憩中も業務から離れられないケース
- ワンオペのため、休憩中でも来客があれば接客する
- 休憩中も電話や業者からの連絡に対応する
- 店舗が混雑すると、休憩を中断して業務に戻る など
実際の休憩時間より長い時間を自動控除してしまうケース
- 休憩開始が遅れたにもかかわらず、予定どおり45分・60分を自動控除する
- 休憩を分割して取得した結果、実際に取得した休憩時間が所定の時間に満たないのに一律に控除する など
2-4 労働時間を日ごとに一定単位で切り捨てる処理は認められない
実際に働いた時間を毎日15分や30分単位で一律に切り捨てることは認められません。
たとえば、22時08分に退勤したアルバイトについて、15分未満を切り捨てて22時までの勤務として給与を計算するような処理です。
厚生労働省も、日々の労働時間について一定時間未満を一律に切り捨て、その分の賃金を支払わないことは労働基準法違反になると示しています。
第3章 労務管理のミスを防ぎやすい勤怠管理システムの5つの機能
勤怠管理システムを導入する際は、打刻のしやすさや給与計算との連携だけでなく、労働時間を正確に把握し、残業や休憩の管理漏れを防げるかという視点が重要です。
労務管理を適切に行うため、導入前に次の5つの機能を確認しておくとよいでしょう。
3-1 実際の始業・終業時刻を正確に記録できるか
勤怠管理システムを選ぶ際は、自社の勤務形態に合った方法で、実際の始業・終業時刻を正確に記録できる機能があるかを確認しましょう。
たとえば、店舗に設置した端末やICカードによる打刻、スマートフォンによる打刻などがあります。スマートフォンを利用する場合には、位置情報によって打刻場所を確認できる機能があれば、勤務場所以外からの打刻を防ぎやすくなります。また、本人認証や一人ひとりに紐づいたICカードなど、代理打刻を防止しやすい仕組みがあるかも確認したいポイントです。
3-2 シフトと実際の勤務時間のズレを自動で検知できるか
シフトと実際の打刻時間を比較し、そのズレを自動で検知できれば、予定外の早出や残業を会社側から発見できます。
たとえば、22時までのシフトに対して22時20分前後の退勤が繰り返されていれば、閉店作業などによる残業が常態化している可能性があります。アルバイト本人や店長から申告がなくても、このようなズレをシステム上で抽出できれば、会社側から勤務実態を確認しやすくなります。
3-3 休憩時間を実際の取得状況に合わせて記録・修正できるか
休憩時間を自動控除する場合は、実際の取得状況と異なったときに正しい時間へ修正できることが重要です。
具体的には、所定の休憩時間をシステム上で一律に差し引く「自動控除」を採用する場合であっても、業務上の都合等で予定どおり休憩を取得できなかった際に、労働者本人から「休憩未消化(または短縮)の申告」を行わせ、管理者が事実関係を確認・承認した上で、休憩の開始・終了時刻を実態に即して打刻するような機能が不可欠でしょう。
特に店舗型の事業では、混雑状況によって予定どおり休憩を取れないこともあるため、一律の自動控除だけでなく、実態とのズレを正しく勤怠へ反映できるかという点は重要といえます。
3-4 時間外労働や長時間勤務を早い段階で把握できるか
時間外労働が一定時間に達した場合にアラートを出すなど、労働時間の増加を早い段階で把握できる機能も確認しておきたいポイントです。
特にアルバイトの人数や店舗数が多い企業では、本部や人事担当者が一人ひとりの勤務時間を日々確認することは現実的ではありません。
月の途中でも時間外労働の累積状況を確認できたり、設定した時間に近づいた段階でアラートを出せたりすれば、長時間勤務になる前にシフトや業務量を見直すことができます。
3-5 打刻を修正しても元の記録と変更履歴が残るか
打刻を修正する場合に、元の記録を上書きせず、変更履歴を残せる機能があるかも確認しておきましょう。
打刻忘れや入力ミスがあれば勤怠の修正が必要ですが、その際、修正前後の時刻だけでなく、誰が、いつ、どのような理由で修正したのかまで記録できれば、後から変更の経緯を確認できます。
こうした記録は未払残業代などをめぐって労働時間が争われた場合にも重要です。元の打刻と修正履歴が残っていれば、当初どのような記録があり、なぜ修正したのかをたどることができ、会社が把握していた勤務実態や修正の合理性を検証しやすくなるためです。
第4章 アルバイトの勤怠問題を未払残業代などのトラブルに発展させないための早期対応
アルバイトの勤怠に不自然な点が見つかった場合は、なぜその問題が起きているのかを確認し、早い段階で原因を取り除くことも大切です。特にシフト制で働くアルバイトの場合、本人の働き方だけでなく、店長の指示や人員配置、シフトの組み方が原因となっていることもあります。原因を把握し、本人への指導、現場責任者への注意、勤務体制の見直しなどを使い分けることが、労務トラブルの予防につながります。
4-1 シフトと打刻のズレが続く場合は、本人と店長の双方に原因を確認する
シフトと実際の勤務時間のズレが繰り返されている場合は、アルバイト本人だけを注意するのではなく、なぜ予定外の勤務が発生しているのかを確認しましょう。
たとえば、22時までのシフトなのに22時20分前後の退勤が続いている場合、本人が自己判断で残っているのであれば、残業が必要なときは事前に店長へ確認するよう指導することが考えられます。
一方、店長が閉店作業を指示している、そもそも22時までに業務を終えられないといった事情があるなら、店長への指導や人員配置、業務量の見直しなど、原因に応じた対応が必要です。
4-2 休憩を取れていない場合は、本人への注意だけでなく勤務体制を見直す
アルバイトが予定どおり休憩を取れていない場合は、本人に休憩を取るよう伝えるだけではなく、実際に休める勤務体制になっているかを確認しましょう。
たとえば、ワンオペの時間帯に休憩を設定していても、来客があれば本人が対応せざるを得ないのであれば、アルバイト側の意識だけでは改善できません。
休憩時間に別の従業員や店長が交代する、休憩を確保できる時間帯にシフトを組み直すなど、業務から離れられる状態を会社側で整える必要があります。
4-3 打刻漏れによる修正が多い場合は運用上の原因を確認する
打刻漏れによる勤怠修正が繰り返されている場合は、アルバイト本人への注意だけでなく、打刻方法や店舗の運用に原因がないかも確認しましょう。
たとえば、打刻端末がアルバイトの動線から離れている、閉店作業と退勤打刻の順序が曖昧になっているなど、注意を繰り返すだけでは改善しないケースもあります。
打刻漏れが多いと、始業・終業時刻を本人や店長の記憶などに基づいて事後的に確認・修正する機会が増えます。このような運用が続くと、後に未払残業代などをめぐる労務トラブルが発生した際、当時の実際の始業・終業時刻を会社側で立証することが難しくなる可能性があります。
第5章 【FAQ】アルバイトの勤怠管理に関するよくある質問
Q1. アルバイトが自ら始業時刻より早く出勤して仕事を始めた場合も労働時間になりますか?
A1. 本人の判断による早出が、直ちに労働時間になるわけではありません
会社から求められていないのに早く出勤し、自分の判断で仕事を始めたからといって、その時間が当然に労働時間になるわけではありません。始業前に打刻したというだけで、その時刻からの賃金を必ず支払わなければならないわけでもありません。
ただし、早出して仕事をしていることを店長が把握しながら日常的にそのまま働かせている場合などは、会社の指揮命令下で働いていたと評価される可能性があります。
自主的な早出を認めないのであれば、始業時刻までは業務を開始しないよう明確に伝え、実際に早出勤務が行われていないか確認することが重要です。
Q2. アルバイト同士でシフトを交代した場合、実際に勤務した従業員の勤怠はどう処理すればいいですか?
A2. 実際に勤務した従業員の労働時間として記録します
シフト表に当初記載されていた従業員ではなく、実際に交代して勤務したアルバイトの勤怠として記録する必要があります。
ただし、アルバイト同士で自由にシフトを交換すると、交代した従業員の勤務が増え、時間外労働や休憩に加え、18歳未満のアルバイトであれば原則として深夜に働かせることができないといった問題を会社が把握できないおそれがあります。アルバイトのシフト交代は店長等の事前承認制とし、交代後の従業員の勤務状況まで確認してから承認する運用などが望ましいといえます。
Q3. 同じ会社の複数店舗で働く場合、労働時間は店舗ごとに管理すればよいですか?
A3. 店舗ごとではなく、会社全体で労働時間を管理します
同じ会社のA店とB店で勤務する場合、店舗が異なっていても、それぞれの労働時間を合計して管理します。たとえば、他店舗の応援勤務が増えた結果、そのアルバイトの労働時間を合計すると法定労働時間を超えているケースも考えられます。そのため、店舗ごとのシフトだけで管理せず、他店舗での勤務を含めた労働時間を会社側で把握できる仕組みにしておく必要があります。
Q4. 他社と掛け持ちで働いている場合、勤務先でも労働時間を確認する必要がありますか?
A4. 本人からの申告などにより、他社での勤務状況を確認して管理します
他社でも雇用されている場合、労働基準法上、法定労働時間を超えているかを判断する際には、原則として勤務先が異なっていても労働時間を通算します。そのため、本人からの申告などにより他社での労働時間を把握した場合には、自社の勤務時間とあわせて管理します。副業・兼業の有無や内容を確認できるよう、採用時や副業開始時に申告してもらう仕組みを設けておくとよいでしょう。
Q5. 確定したシフトを会社の都合で急に減らした場合、賃金を支払わなくてもよいですか?
A5. 休業手当のほか、労働契約等に基づく賃金の支払いが問題になることがあります
一度確定したシフトについて、来客が少ない、人員が余ったなど会社側の事情で勤務日を取り消した場合、実際に働いていないから当然に支払いが不要になるとは限りません。
使用者の責に帰すべき事由による休業に当たれば、労働基準法上の休業手当の支払いが必要になり、シフトを減らした理由によっては、労働契約や就業規則等の内容次第ですが賃金の支払いが必要となる場合もあります。
第6章 アルバイトの勤怠管理・労務管理に不安がある場合は弁護士へ相談を
アルバイトの勤怠管理では、実際の労働時間を正確に記録するだけでなく、シフトとのズレや休憩の未取得、打刻漏れなどの問題を早期に把握し、原因に応じて改善していくことが重要です。
特にアルバイトを多く雇用する企業や複数店舗を運営する企業では、個々の店舗や店長に勤怠管理を任せきりにすると、会社が把握しないまま未払賃金などの問題が積み重なることがあります。問題が表面化してから対応するのではなく、現在の勤怠管理やシステムの設定、現場での運用に問題がないかを定期的に確認しておくことが大切です。
私たちNexill&Partners(ネクシル&パートナーズ)グループでは、弁護士法人と社会保険労務士法人など5つの士業法人が連携し、企業の労務管理をサポートしています。アルバイトの勤怠管理や労務管理に不安がある場合は、Nexill&Partnersグループへお気軽にご相談ください。
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