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契約社員を正社員登用する際の注意点|5年ルール・無期転換・キャリアアップ助成金を弁護士が解説

2026.07.06

契約社員の正社員登用は、人材の定着や組織力の強化につながる有効な施策です。一方で、有期契約の通算期間が5年に近づいている場合には、無期転換ルールとの関係の整理や、就業規則・雇用契約書など労務面の整備も必要となります。本記事では、契約社員を正社員登用する際の注意点、また、2026年4月に公表された令和8年度版の「キャリアアップ助成金」について弁護士が整理します。

第1章 契約社員を正社員にする前に整理すべき「5年ルール」と無期転換

1-1 まず確認すべきは契約社員の通算雇用期間

契約社員を正社員に登用する前に、まず確認すべきなのは、その従業員の通算雇用期間です。
特に、有期労働契約を更新して長く勤務している契約社員については、いわゆる「5年ルール」との関係を整理する必要があります。
対象者が有期契約社員なのか、無期転換申込権の発生前か後か、すでに無期転換権を行使して無期契約社員になっているのかによって、正社員転換の進め方だけでなく、後述のとおり助成金の対象となる要件や支給額が大きく異なります。
まずは現在の契約状況を正しく把握しましょう。

1-2 5年ルールは正社員化ではなく無期転換の制度

5年ルールとは、同一の使用者との間で有期労働契約が更新され、通算契約期間が5年を超えた場合に、労働者の申込みによって期間の定めのない労働契約に転換される制度です。
理解しておきたいのは、5年ルールによって会社が義務付けられるのは、あくまで契約期間の定めをなくすことであり、当然に賞与や退職金のある正社員への転換が必要なわけではないという点です。

そのため、正社員と同じ処遇までは予定していない場合には、契約社員時代の職務内容や賃金体系を基本としつつ、契約期間だけを無期にする「無期契約社員」という区分を設けることも考えられます。

一方、会社の制度としての正社員登用は、正社員就業規則や賃金規程、賞与、退職金、昇給、配置転換などの適用を伴うことが多いため、無期転換とは区別して考える必要があります。

1-3 キャリアアップ助成金を使うなら「5年超」のタイミングに注意

令和8年度のキャリアアップ助成金の正社員化コースでは、中小企業の場合、有期雇用労働者から正規雇用労働者へ転換する場合の助成額は、通常1人あたり40万円とされています。
これに対し、無期雇用労働者から正規雇用労働者へ転換する場合の助成額は、通常1人あたり20万円とされています。

このように、有期雇用労働者から正規雇用労働者へ転換する場合と、無期雇用労働者から正規雇用労働者へ転換する場合とでは、助成額に違いがあるため、キャリアアップ助成金の活用を検討している場合は、通算雇用期間の確認がさらに重要になります。

キャリアアップ支援金については、4章でさらに詳しく整理します。

「キャリアアップ助成金」について、申請方法や自社が対象となるかなど詳しく知りたい場合はお気軽にご相談ください。

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第2章 正社員登用前に確認すべき注意点

2-1 契約社員から正社員への転換制度が就業規則等に明記されているか

契約社員を正社員に登用する場合、就業規則や雇用管理規程に、正社員転換制度が明記されているかを確認する必要があります。
特に、キャリアアップ助成金を活用する場合には、単に「会社の判断で正社員にした」というだけでは足りません。就業規則等に、転換の対象者、申請方法、選考方法、転換時期などが定められ、その制度に基づいて転換していることが重要になります。

たとえば、「勤続6か月以上の契約社員で、本人が希望し、所属長の推薦を受けた者について、面接および筆記試験を実施し、合格した場合に正社員へ転換する」といった形で、手続と要件を明確にしておく必要があります。

2-2 正社員規程の適用により賞与・退職金・諸手当が発生しないか

契約社員を正社員に登用すると、基本給だけでなく、正社員に適用される各種規程の影響を受けます。
そのため、正社員就業規則や賃金規程に、賞与、退職金、家族手当、住宅手当、役職手当などの定めがある場合、正社員登用後の従業員にもそれらが適用されることとなります。

会社としては「月給を少し上げて正社員にする」という認識であっても、規程上は賞与や退職金の対象となり、長期的には想定以上の人件費増加につながることがあります。
正社員登用を行う前に、各種規程を確認の上で、おおよその人件費目途を試算しておきましょう。

2-3 正社員登用後の雇用契約書・労働条件通知書を整備しているか

正社員登用時には、雇用契約書や労働条件通知書も整備する必要があります。
特に、契約社員時代と正社員登用後で勤務条件や職務内容、責任範囲が変わる場合には、就業規則と矛盾しないよう注意の上でその違いを明確に記載し、本人にも十分説明しておく必要があります。

【不合格者対応】正社員登用の不合格と無期転換申込権は切り分けて考える

正社員登用制度を設ける以上、不合格となる従業員が出ることもあります。この場合、従業員側に不満が残り、労務トラブルにつながる可能性もあります。
もっとも、筆記試験の採点内容や面接評価などを詳細に開示しなければならないわけではありません。現時点では正社員登用に至らなかった理由や、今後改善が期待される点を、説明できる範囲で伝えることで本人の納得も得られやすいでしょう。

また、正社員登用に不合格であることと、労働契約法上の無期転換申込権(5年ルール)は別の問題です。
正社員登用試験に合格しなかったからといって、通算5年を超えた有期契約労働者の無期転換申込みを妨げることはできません。正社員登用制度と無期転換制度を混同せず、それぞれ別の制度として運用する必要があります。

第3章 契約社員の正社員化とキャリアアップ助成金の活用

3-1 令和8年度の正社員化コースでは有期・無期で支給額が異なる

契約社員を正社員に登用する際には、キャリアアップ助成金の正社員化コースを活用できる場合があります。

助成額は、有期雇用労働者から正規雇用労働者へ転換した場合と、無期雇用労働者から正規雇用労働者へ転換した場合で異なります。
令和8年度の正社員化コースでは、中小企業の場合、次のように定められています。

  • 有期雇用労働者から正規雇用労働者へ転換:通常1人あたり40万円
  • 無期雇用労働者から正規雇用労働者へ転換:通常1人あたり20万円

さらに、雇入れから3年以上の有期雇用労働者や、一定の要件を満たす正規雇用経験が少ない有期雇用労働者などは、「重点支援対象者」として、最大で通常額の2倍の助成額となる場合があります。

重点支援対象者を正規雇用労働者へ転換する場合の助成額
有期雇用労働者から正規雇用労働者へ転換

1人あたり最大80万円

無期雇用労働者から正規雇用労働者へ転換

1人あたり最大40万円
※いずれも重点支援対象者に該当する場合の最大額です

このように、有期雇用労働者から正規雇用労働者へ転換する場合と、無期雇用労働者から正規雇用労働者へ転換する場合とでは、助成額に違いがあります。
特に、注意が必要なのは、雇用された期間が通算5年を超える有期雇用労働者については、助成金上、無期雇用労働者とみなされる取り扱いがある点です。

助成金の活用を予定している場合は、対象者の雇用区分や通算雇用期間をよく確認したうえで、正社員登用を行うタイミングもあわせて検討しましょう。

3-2 賃金3%以上アップは一時的な負担ではなく固定費増として考える

正社員化コースでは、転換後6か月間の賃金を、転換前6か月間の賃金より3%以上増額させる必要があります。
ここでいう賃金には、基本給や定額で支給される諸手当が含まれますが、賞与や歩合給などは含まれません。また、毎月定額で支給している場合でも、通勤手当、時間外労働手当・固定残業代、家賃等を補填する目的の住宅手当なども、賃金3%増額の算定には含められません。

そのため、助成金の要件を満たすためには、基本給や固定的な手当を引き上げる形での設計が必要になる場合があります。

3-3 キャリアアップ計画書・6か月賃金支払いの流れを確認する

キャリアアップ助成金を申請するための事前準備として、正社員になる日の前日までに「キャリアアップ計画書」を作成し、事業所の所在地を管轄する都道府県労働局(都道府県によってはハローワーク)に提出する必要があります。

そのうえで、就業規則等に定めた転換制度に基づいて正社員転換を行い、転換後6か月分の賃金を支払った後、所定の期間内に支給申請を行う流れになります。

3-4 令和8年度新設「情報公表加算」の利用も検討してみる

令和8年度の正社員化コースでは、情報公表加算が新設されました。
これは、自社の非正規雇用から正社員への転換実績やルールについて、自社が管理するWebサイトや厚生労働省の職場情報総合サイト「しょくばらぼ」に公表することで、助成金が上乗せされる加算制度です。

要件を満たす場合、1事業所あたり20万円、大企業は15万円が加算されます。
公表が必要な情報としては、正社員転換制度の概要、直近3事業年度の転換実績、正社員転換までに要した平均期間や最短期間などがあります。

第4章 契約社員の正社員化を円滑に進めるために

契約社員の正社員登用は、長く働いてきた人材により安定した立場で活躍してもらうための重要な制度です。特に、有期契約の更新を重ねている場合は、5年ルールによる無期転換との関係を整理したうえで、正社員登用の時期や就業規則、雇用契約書の内容を確認しながら進めましょう。
キャリアアップ助成金を活用する場合は、対象者の雇用区分や通算雇用期間、賃金3%以上アップの要件などを事前に確認しておく必要があります。申請準備や正社員登用の進め方に不安がある場合は、弁護士・社会保険労務士が連携する私たちNexill&Partners(ネクシル&パートナーズ)へお気軽にご相談ください。

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