労働力不足を背景に人材派遣業界でも外国人労働者の活用が進んでいます。しかし、外国人の派遣スキームは、在留資格やそれに整合する業務内容など、日本人を派遣する場合より複雑な法的リスクをはらんでいます。本記事では、人材派遣会社が外国人の人材派遣を行う場合の法務・労務のポイントについて、入管法や労働者派遣法の視点から弁護士がわかりやすく整理します。
もくじ
- 第1章 外国人を派遣する場合に最初に整理しておきたい考え方
- 第2章 在留資格ごとに考える「派遣できるかどうか」のポイント
- 第3章 派遣だからこそ問題になる違法リスクと見落としやすい場面
- 第4章 契約書の設計と派遣先との連携で適法性を確保する
- 第5章 【FAQ】外国人の人材派遣でよくある疑問
- 第6章 外国人派遣の法務リスクは専門家へ相談を
第1章 外国人を派遣する場合に最初に整理しておきたい考え方
1-1 外国人の直接雇用と人材派遣では管理の考え方が異なる
外国人を自社で直接雇用する場合、その管理責任はすべて自社内で完結します。しかし、人材派遣の場合、雇用関係は派遣元にあり、指揮命令権は派遣先に移転するという特殊な構造があります。
入管法上の在留資格は、原則として特定の活動内容に基づいて付与されるため、「誰の下で」「どのような業務を行うか」が重要です。派遣形態では、実際に就労する場所(派遣先)での業務内容が在留資格の範囲内であるかを、派遣元が継続的に把握し続けなければならないという、直接雇用以上の管理負担が生じます。
1-2 入管法・労働者派遣法・労基法が重なる場面とは
外国人の派遣事業を運営する際には、少なくとも三つの法律が関係してくることを前提に整理しておく必要があります。
まず、入管法(出入国管理及び難民認定法)により、外国人が従事できる業務の範囲が定められています。これに加えて、労働者派遣法により、二重派遣の禁止や派遣先の管理といった、派遣という就労形態に特有のルールが課されます。さらに、労働基準法により、国籍にかかわらず適切な労働条件を確保することや差別的取扱いを行わないことが求められます。
それぞれ個別に適用される法令ではありますが、実務上は相互に関連するものとして一体的に整理していく必要があります。いずれか一つを満たせばよいのではなく、すべてを同時に充足しなければ、適法な運営とは評価されません。
1-3 派遣会社が押さえるべき手続と在留資格管理(許可・届出・更新)
派遣会社が押さえるべき手続と在留資格管理(許可・届出・更新)
派遣会社が外国人を派遣社員として扱う場合に必要となる手続は、大きく3つのレイヤーに分けて整理することができます。いずれも単発の確認で足りるものではなく、運用の中で継続的に管理していくことが前提となります。
① 労働者派遣事業の許可
人材派遣事業を行うためには、労働者派遣法に基づく許可が必要です。この許可の範囲内で外国人を派遣することが前提となり、無許可での派遣は法令違反として事業運営に直接影響するリスクがあります。
② 外国人雇用に伴う届出
外国人を雇用した場合には、雇入れ時および離職時にハローワークへの届出が必要となります。形式的な手続ではありますが、継続的に発生するため、漏れが生じやすい点に注意が必要です。
③ 在留資格の更新・変更管理
在留資格については、在留期間の更新や業務内容の変更に伴う手続の要否を継続的に確認する必要があります。派遣先や業務内容が変わる場合には、当初の前提が維持されているかを見直すことが重要です。
また、派遣会社が登録支援機関として特定技能外国人の支援業務を行う場合には、別途、入管への登録申請および一定期間ごとの更新手続が必要となります。これらの更新を怠った場合には、支援業務を継続できなくなるほか、受入体制に問題があると評価され、外国人の受入れの継続に影響が及ぶ可能性があります。
登録支援機関とは
登録支援機関とは、特定技能(1号)の外国人を受け入れる場合に、日本語の説明や住居の手配、相談対応など生活面のサポートを行うために登録された機関のことです。特定技能の外国人を受け入れる場合、こうした生活支援が必須であり、本来は外国人を受け入れる企業(受入機関)が行います。派遣という形で関与する場合には、これらの支援を派遣会社・派遣先のどちらが担うのかをあらかじめ整理しておくことが重要です。
また、登録支援機関として支援業務を行う場合には、一定期間ごとの更新(継続手続)が必要です。これを怠ると登録が失効し、支援業務を継続できなくなるほか、受入れの継続や今後の受入れにも影響が及ぶ可能性があります。
1-4 派遣会社として押さえておくべき判断の軸(在留資格・業務内容・就労形態)
人材派遣会社が外国人を扱う際には、判断の軸を整理しておくことが重要です。実務上は、主に次の3つの観点から検討することになります。
第一に、その在留資格のもとで、派遣という形での就労が想定されているかという点です。第二に、派遣先で実際に従事する業務が、在留資格で許可された範囲に収まっているかという点です。第三に、契約の形式にかかわらず、実態として偽装請負などの違法な就労形態になっていないかという点です。
もっとも、実務で問題となりやすいのは、採用時点では適法に見えていたとしても、その後の運用の中で前提が崩れてしまうケースです。例えば、在留カードの内容を確認しただけで判断を終えてしまい、派遣先での業務内容の変化や実態を十分に把握できていないと、結果として在留資格との適合関係が失われてしまうおそれがあります。
派遣という形態である以上、派遣元には、派遣先における業務の実態も含めて適法性を維持していくための管理が求められます。そのことを前提に、採用段階から派遣後の運用まで一体として設計していく必要があるといえるでしょう。
第2章 在留資格ごとに考える「派遣できるかどうか」のポイント
2-1 身分に基づく在留資格は派遣という形でも柔軟に対応できる
「永住者」「日本人の配偶者等」「永住者の配偶者等」「定住者」といった身分に基づく在留資格については、就労内容に制限が設けられていません。そのため、業務内容との関係で在留資格違反となるリスクは比較的低く、派遣という形態であっても柔軟に活用することが可能です。
もっとも、就労内容に制限がないといっても、労働者派遣法上のルールや、偽装請負に該当しないかといった観点は当然に問題となります。さらに、派遣先での業務内容や就業環境について適切に把握していなければ、労務トラブルに発展する可能性もあります。在留資格の制約が少ない場合であっても、派遣元としての管理責任が軽減されるわけではない点には注意が必要です。
2-2 技術・人文知識・国際業務は派遣先での業務内容に注意が必要
「技術・人文知識・国際業務」の在留資格については、専門的・技術的な業務に従事することが前提とされています。そのため、派遣という形態自体が直ちに否定されるわけではありませんが、派遣先で実際に行う業務の内容には派遣会社としても留意する必要があります。
例えば、通訳や海外対応業務、マーケティングなどを前提とした派遣であれば問題となりにくいですが、そうした業務として契約しながら単純作業や補助業務を担い、だんだん単純作業の比重が大きくなっているような場合には、在留資格の範囲を逸脱していると評価される可能性が出てきます。
実務上は、契約書上の業務内容だけで判断するのではなく、派遣先での実際の業務の割合や内容を踏まえて検討する必要があります。実態として現場業務に多く従事している場合には、更新時の不許可や是正指導につながるリスクがあるためです。
2-3 資格外活動の範囲内で派遣する場合の実務上の注意点
留学生や家族滞在の在留資格を持つ外国人については、「資格外活動許可」を得ることで一定の範囲内で就労が認められます。この場合、派遣という形で就労させること自体は直ちに否定されるものではありませんが、いくつかの制約を踏まえた運用が必要となります。
まず、就労時間は原則として週28時間以内に制限されており、この上限は複数の勤務先を通算して判断されます。そのため、派遣先が複数にまたがる場合や、他社での就労がある場合には、実態として上限を超過していないかを把握する必要があります。
2-4 特定技能は原則として直接雇用
特定技能については、制度上、受入企業との直接雇用を前提として設計されており、人材派遣という形での活用は限定的です。農業や漁業のように例外的に派遣が認められている分野を除き、特定技能では派遣による就労は原則として想定されていません。
また、派遣が認められている分野であっても、通常の派遣とは異なり、支援計画の実施や各種届出など、受入機関としての義務が課されます。そのため、これらの義務を誰がどのように履行するのかを事前に整理しておく必要があります。さらに、実際の業務についても、分野ごとに定められた範囲内に収まっているかを個別に確認することが求められます。
第3章 派遣だからこそ問題になる違法リスクと見落としやすい場面
3-1 派遣先での業務内容が在留資格の範囲を逸脱するケース
例えば、「技術・人文知識・国際業務」の在留資格で専門的業務を前提に派遣していたにもかかわらず、繁忙時の対応として現場作業や補助業務が常態化しているような場合には、結果として在留資格との適合関係が崩れてしまうおそれがあります。
日本人派遣スタッフであれば契約違反の問題にとどまりますが、外国人の場合は入管法違反につながるリスクがあります。派遣元が知らない間に業務内容が変容し、結果として在留資格に適合しない活動をさせていた場合でも、派遣元が知らなかったという理由だけで直ちに問題がなくなるわけではありません。派遣元としては、業務内容が当初の想定から逸脱していないかを定期的に確認する仕組みを設けておくことが求められます。
3-2 複数の派遣先や業務変更が重なることで判断が難しくなるケース
外国人を複数の派遣先に配置する場合や、同一の派遣先であっても業務内容が頻繁に変更される場合には、在留資格との適合性の判断が複雑になりやすい傾向があります。
例えば、通訳やマーケティング業務を前提として派遣していたとしても、複数の派遣先での業務の中で、補助的な作業や現場対応の割合が徐々に増えていくことがあります。この場合、個々の業務だけを見れば直ちに問題がないように見えることもありますが、全体としてみたときに専門性が薄れ、在留資格の趣旨に合致しないと評価される可能性があります。
このようなケースでは、単発の判断ではなく、配置全体を通じて整合性が取れているかを確認する視点が重要になります。派遣元として、配置の組み合わせや業務の変更履歴を把握できる体制を整えておくことが求められます。
3-3 結果として不法就労助長と評価されるリスク
これまで見てきたような問題が積み重なると、最終的には不法就労助長と評価されるリスクにつながります。不法就労助長罪は、故意に限らず、必要な確認を怠った場合でも成立する可能性があるため、必要な確認を怠らないことが重要です。
在留資格の範囲外の業務に従事していることを把握しながら是正を行わなかった場合はもちろん、そもそも業務実態を十分に確認していない場合も、派遣元として管理体制を問題視されることがあります。
第4章 契約書の設計と派遣先との連携で適法性を確保する
4-1 契約書は業務内容を具体的に特定して作成する
外国人を派遣する場合、労働者派遣契約書における業務内容の記載は、日本人の場合以上に重要となります。抽象的な表現にとどめてしまうと、派遣先での運用の中で業務が拡張されやすくなり、結果として在留資格の範囲を逸脱してしまうおそれがあるためです。
例えば、事務補助や現場サポートといった広い概念で契約していると、実際にはどこまでの業務が許されるのか判断が曖昧になり、現場判断で業務が広がってしまう傾向があります。しかし、外国人の場合には、そのような業務の広がりがそのまま入管法上の問題につながるリスクを含んでいます。
派遣契約においては、想定している業務の内容や範囲を、派遣会社ができる限り具体的に整理し、在留資格との適合関係が明確になるようにしておくことが求められます。
4-2 派遣先とは業務範囲を事前に共有しておく必要がある
外国人派遣においては、派遣先との情報共有の内容と範囲も重要となります。派遣先が在留資格の制約を十分に理解していない場合、善意であっても業務内容を変更してしまい、結果として違法な就労状態に至ることがあるためです。
例えば、「この業務は対応可能か」「どこまでの業務が許されるのか」といった点について、派遣先と認識がずれていると、現場の判断で業務が追加されてしまうことがあります。特に、繁忙時の応援対応や一時的な配置転換は、トラブルの発端となりやすい場面です。
そのため、派遣開始前の段階で、当該外国人の在留資格の内容と、それに基づいて従事できる業務の範囲を整理し、派遣先と共有しておくことが不可欠です。また、運用開始後も、業務内容に変更が生じた場合には速やかに情報共有を行う体制を整えておく必要があります。
第5章 【FAQ】外国人の人材派遣でよくある疑問
Q1. 実際の業務内容が在留資格と違っていた場合、どのように発覚するのでしょうか?
A1. 更新手続や通報などを契機に発覚することがあります。
在留資格との不適合は、必ずしも日常的に監視されているわけではありませんが、在留期間の更新手続の際に提出する書類や、入管による調査、あるいは関係者からの通報などを契機に発覚することがあります。特に、業務内容と在留資格の整合性は更新審査の要点となるため、実態と乖離がある場合にはその段階で問題となるケースが少なくありません。
Q2. 適法でない実態がどの程度の期間続くと悪質と判断されるのでしょうか?
A2. 期間だけでなく認識や是正対応も含めて判断されます。
違法性の評価は、単に期間の長短だけで決まるものではなく、在留資格との不適合を認識していたか、是正の機会があったにもかかわらず対応していなかったかといった事情も含めて判断されます。短期間であっても問題となる場合はありますし、逆に是正対応が速やかに行われている場合には評価が変わることもあります。
Q3. 派遣先が在留資格の内容を理解していない場合、どのように対応すべきですか?
A3. 派遣先についても責任を問われる可能性があります。
例えば、派遣契約の文言が抽象的で形式上は有効に成立している場合でも、実際の業務が在留資格の範囲を超えていれば、その就労は適法とは評価されません。そのため、派遣契約上は問題ないという理由だけで運用を続けた場合、派遣元だけでなく、業務を指示している派遣先についても不法就労助長と評価される可能性があります。派遣会社としては、契約ではなく実態で判断されること、また派遣先にもリスクが及ぶ可能性があることを説明したうえで、業務内容の見直しや配置変更を協議していくことになります。
Q4. 派遣労働者の外国人が強制送還となった場合、派遣元や派遣先にどのような影響があるのでしょうか?
A4. 受入制限や信用低下などの影響が生じる可能性があります。
外国人本人が入管法違反により退去強制となった場合には、派遣元や派遣先についても、関与の内容によっては影響が及ぶ可能性があります。不法就労助長と評価された場合には、刑事罰の対象となるリスクに加え、一定期間の外国人受入れ制限や、入管手続における審査の厳格化といった影響が生じることがあります。また、こうした事案は取引先や派遣先との関係にも影響を及ぼし得るため、単に個別の人材の問題にとどまらず、事業運営全体に影響することを認識しておく必要があります。
Q5. 外国人派遣で問題が発生した場合、どの段階で専門家に相談すべきですか?
A5. 疑義が生じた段階で早期に相談することが望ましいです。
在留資格との適合性や派遣形態の適法性については、個別事情によって判断が分かれることがあります。問題が顕在化してからでは対応が難しくなる場合もあるため、業務内容に違和感がある段階や、契約・配置の見直しを検討する段階で弁護士などの専門家に相談することが、リスクの拡大を防ぐうえで有効といえます。
第6章 外国人派遣の法務リスクは専門家へ相談を
外国人労働者の人材派遣は、人手不足に悩む企業にとって有力な解決策となりますが、その一方で派遣元企業が背負う法的な責任は、日本人を派遣する場合以上に重いものです。入管法と労働者派遣法の双方に精通し、現場の実態を法的な枠組みに当てはめて判断しなければ、意図せずとも重大な法令違反を招くことになりかねません。
適法な派遣スキームを構築するためには、単なる書類上の確認にとどまらず、派遣契約の条文構成から現場での運用ルール作りまで、専門的な知見に基づいたリスクヘッジが不可欠です。万が一の不法就労リスクを回避し、持続可能な事業運営を目指すためにも、実務に即したアドバイスが可能なプロフェッショナルの活用を検討ください。
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