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ロゴは商標登録しても安心できない?商標の出願前に知っておきたい著作権との関係と優位性を弁護士がわかりやすく解説

2026.04.05

自社のロゴマークを商標出願する際、「登録できれば問題ない」と考えていないでしょうか。実は、商標登録が認められても、他人の著作権との関係でロゴを自由に使えなくなるケースがあります。特に、外注デザインや既存ロゴとの類似がある場合には、権利関係の整理を誤ると後から修正や差止めが問題となる可能性もあります。本記事では、商標権と著作権の関係を踏まえ、商標の出願前に押さえておきたい実務ポイントを解説します。

もくじ

第1章 ロゴマークの商標出願で最初に整理したい前提

1-1 商標登録が認められても、それだけで安心とはいえない理由

ロゴマークを商標出願するとき、まず理解しておきたいのは、商標権と著作権は別の法律に基づく別の権利であるという点です。
商標権は、商品やサービスの出所を示す標識を保護し、ブランドとしての信用を守る制度です。他方、著作権は、創作的に表現されたデザインそのものを保護する制度です。したがって、あるロゴが商標登録されたとしても、そのロゴの使用が他人の著作権と抵触しないことまで、特許庁の商標審査が保証してくれるわけではありません。
商標法29条は、登録商標の使用が他人の著作権などを侵害する場合には、その抵触部分について商標権を行使できないとしています。つまり、登録を得た後でも、著作権の問題は別に残り得るということです。

1-2 ロゴには著作権が発生することがある

ロゴマークは、すべてが当然に著作物になるわけではありませんが、デザイナーの個性や工夫が表れた図形や構成であれば、著作物として保護される可能性があります。
そして、著作権は商標権とは異なり、特許庁への登録などの手続きを行わなくても、作品を創作した時点で著作者に成立する権利です。そのため、ロゴを商標出願する前提として、まずそのデザインに著作権が成立しているのか、成立している場合に誰に帰属しているのかを確認しておく必要があります。
特に外部に制作を依頼している場合には、著作権が自社ではなく制作者に帰属していることもあります。そのため、商標出願に進む前に、著作権が自社に帰属しているか、あるいは必要な利用権限を確保できているかを確認しておくことが重要です。(※外注制作の著作権については4章で詳しく解説します)

第2章 他人のデザインを無断でそのまま出願してはいけない理由

2-1 「登録できるか」ではなく「使い続けられるか」が重要

他人が作成した既存のデザインを、無断でそのまま、あるいは少し手を加えた程度で自社ロゴとして商標出願することは避けるべきです。仮に商標登録の手続が進んだとしても、そのロゴの使用自体が他人の著作権侵害になるおそれがあるためです。
商標法29条は、他人の著作権に抵触する登録商標については商標権を行使できないと定めています。
また、他人が作ったデザインを前提にして商標出願を行うような場合には、そもそも出願の仕方自体が問題になることがあります。見た目の印象だけでなく、図形の配置や構図、線の表現方法といった具体的なデザイン要素が共通しているか、あるいは既存のデザインを参考にして制作された経緯があるかといった点が考慮されます。その結果、他人の成果物を自分のものとして権利化しようとしていると判断されると、公正な取引秩序に反する出願として登録が認められない可能性があります。

2-2 著作権侵害は、依拠性と類似性の両面から問題になる

著作権侵害が問題になる場面では、一般に、既存作品を参考にして制作したといえるかという「依拠性」と、創作的な表現部分が似ているかという「類似性」が重要な判断要素になります。
ここでいう依拠性とは、既存のロゴやデザインを実際に見たうえで、それを参考にして制作したといえるかという観点です。他方、類似性とは、形の取り方や図形の配置、特徴的な線やバランスなど、表現上の重要部分が共通しているかを検討する考え方です。
よくあるケースとして、担当者が既存ロゴを参考資料として示し、「これに近い雰囲気で作ってほしい」と依頼した結果、程度によっては既存作品への依拠が疑われる状態になることもあります。つまり、著作権の判断では完成したデザインだけではなく、どのような経緯でそのデザインに至ったのかという制作プロセスも重要になります。

第3章 商標出願前に行いたい類似デザインの確認方法

3-1 まずは商標調査を行い、登録商標との類似性を確認する

ロゴを商標出願する前には、既に似た商標が出願・登録されていないかを確認しておく必要があります。この確認には、特許庁が提供している「J-PlatPat(特許情報プラットフォーム)」を利用するのが一般的です。
ロゴに文字要素が含まれている場合には、図形だけでなく、その文字の読み方や表記の違いも含めて確認が求められます。見た目が異なっていても、読み方が同じ、または似ている場合には、商標上は類似と判断されることがあるためです。

3-2 著作権の観点では、公的データベースだけで完結しない

商標調査と異なり、著作権については、世の中のすべてのロゴやデザインを網羅した公的データベースが存在するわけではありません。そのため、著作権の観点から類似性のあるデザインが存在するかを調査するには、複数の情報源を横断的に確認する必要があります。
具体的には、業界内の主要企業のロゴ、競合他社のウェブサイト、検索エンジンの画像検索、制作会社の実績、公表されているブランド素材などを組み合わせて確認していきますが、世の中のすべてのデザインを網羅的に確認することは現実的ではありません。重要なのは、調査を完璧に行うことではなく、明らかに似ているデザインや問題となり得る既存作品を見落とさないことです。

著作権の観点での確認手順

実務上は、一定の手順に沿って確認を進めると整理しやすくなります。

  1. 類似し得るロゴを、画像検索や参考デザインの周辺調査によって収集します。
  2. 類似性が高いものについて、図形、線、モチーフ、配置、配色などの共通点を整理します。
  3. それらの共通点が、創作的な表現に当たるかどうかを検討します。

社内で判断が難しい場合には、弁護士など専門家に確認することが望ましいといえます。

3-3 どこまで似ていると問題になるのか

著作権の類似性判断では、アイデアそのものではなく、創作的な表現がどこまで共通しているかが問題となります。
例えば、「山と太陽を組み合わせたロゴ」という発想自体は一般的であり、それだけで特定の者に独占されるものではありません。他方で、山の形状、太陽の配置、線の描き方、配色の組み合わせといった具体的な表現まで共通している場合には、単なる発想の一致を超えて、表現が類似していると評価される可能性があります。
そのため、「全体の印象が違えば問題ない」と考えるのは適切ではありません。他方で、「一部に共通点があれば直ちに侵害になる」と過度に考える必要もありません。重要なのは、一般的なモチーフと創作的な表現部分とを区別し、どの部分が共通しているのかを具体的に検討することです。

第4章 外注で制作したロゴの著作権について

4-1 ロゴの著作権は誰に帰属しているか

ロゴを外部のデザイナーや制作会社に依頼して作成している場合には、まず著作権の帰属を確認する必要があります。
先述の通り、著作権は原則として実際に創作を行った者に帰属するため、契約で明確に定めていなければ、著作権は制作者側に残っている可能性があります。商標出願に進む前に、そのロゴの著作権が自社に帰属しているのか、それとも制作者に残っているのか、必ず確認しておきましょう。

4-2 著作権が自社にない場合に生じる問題

著作権が制作者に帰属したままの場合、ロゴの使用や運用において制約が生じる可能性があります。なぜなら、著作権には「そのデザインをどのように利用できるか」をコントロールする権利があるためです。
この前提から、具体的には次のような制約の可能性が想定されます。

ロゴの修正やバリエーションに関する制限

ロゴの色違いやレイアウト変更、サイズ調整といったバリエーション展開について、制作者の許諾が必要となる場合があります。これらは軽微な変更に見えても、著作物の変更に当たる可能性があるためです。

使用範囲に関する制限

ロゴの利用が、広告、ウェブサイト、商品パッケージなど、契約で定められた範囲に限定される場合があります。当初想定していなかった媒体や用途で使用しようとすると、別途、著作権者の許諾が必要になることがあります。

第三者への利用許諾に関する制限

グループ会社や取引先にロゴの使用を認める場合でも、自社が自由に再許諾できないことがあります。著作権が自社にない場合には、第三者への利用許諾についても制作者の関与が必要となる可能性があります。

将来的なブランド展開に関する制限

新しいサービスや海外展開など、将来のブランド展開においてロゴを使用する際に、契約内容によっては利用が制限されることがあります。その結果、事業の拡大に応じた柔軟なロゴ運用ができなくなる可能性があります。

このように、著作権の帰属が整理されていない場合には、出願自体はできたとしても、その後の運用段階で支障が生じるリスクをはらみます。商標出願に進む前に、契約によって著作権を自社に帰属させる、または少なくとも自社が必要な範囲で自由に利用できる状態にしておくことが非常に重要です。

第5章 商標権と著作権はどちらが優先されるのか

5-1 法律上はどちらが常に優先されるという関係ではない

商標権と著作権は、それぞれ保護の対象や目的が異なる別の権利であり、どちらか一方が常に優先されるという関係にはありません。だからこそ、同一のロゴについて、商標権と著作権の両方が成立し得るのです。
ただし、「どちらが優先されるのか」という問いは、実務上は別の意味を持ちます。問題になるのは、権利の優劣ではなく、実際の使用場面でどちらの制約が強く働くかです。

5-2 著作権が外部にある場合、商標権があっても制約を受ける可能性は高い

先に触れた通り、外注によって制作したロゴについて著作権が制作者に残っている場合には、ロゴの使用や改変に制約が生じ得ます。この状態で、例えばロゴの修正や想定外の利用を著作権者の許可なく行った場合、著作権侵害や著作者人格権の侵害として、使用の差止めや損害賠償を求められるリスクを含みます。
たとえ商標登録を受けていても、その登録自体が直接的な防御にはなりません。著作権に抵触する範囲では、商標権があってもその使用が正当化されるわけではないからです。

5-3 「商標があっても使えない」という状態も起こり得る

以上を踏まえると、「商標権と著作権のどちらが優先されるのか」という問いに対する実務上の答えが見えてきます。
両者には法律上の優劣関係はないものの、著作権が外部にあるロゴについては、商標権があってもその使用が制限される可能性が高く、実際の運用場面では著作権の制約の方が強く問題となるケースが少なくありません。その結果、商標登録が認められているにもかかわらず、ロゴの修正や利用ができない、あるいは使用自体の見直しを迫られるといった状況が生じることもあります。
したがって、商標出願にあたっては、そのロゴを問題なく使い続けられる状態にあるかという観点から、著作権の帰属や利用範囲が整理されているかを必ず確認しておかなければなりません。

第6章 ロゴの商標出願を安心して進めるために

ロゴマークの商標出願では、「登録できるかどうか」だけに目を向けるのでは足りません。他人の既存デザインに依拠していないか、似たロゴが既に存在しないか、著作権の整理が済んでいるかという3つの観点を出願前に確認することが大切です。特に、商標権と著作権は別の制度であり、商標登録が認められても著作権の問題が消えるわけではない、という点は運用に関わる重要なポイントとして理解しておく必要があります。
ロゴは単なるデザインではなく、今後の営業、広告、採用、商品展開に長く関わるブランド資産です。最初の整理が甘いと、後から差替えや紛争対応が必要になり、事業への影響が広がるリスクをはらんでしまいます。
私たちNexill&Partners(ネクシル&パートナーズ)グループでは、弁護士を中心に、必要に応じて他士業とも連携しながら、商標出願前の権利確認、デザイン外注契約の整備、ブランド運用上の法的リスクの整理まで、実務に即してサポートしています。ロゴの商標出願や著作権との関係で判断に迷う場面があれば、お気軽にご相談ください。

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