人手不足が続く飲食業界でも、外国人従業員の採用を検討する場面が増えています。外国人雇用では、在留資格ごとにできる仕事の範囲が異なり、採用時の確認を誤ると不法就労の問題につながるおそれがあります。また、採用後もシフト管理や在留期限の管理など、継続的に注意すべき点があります。本記事では、飲食店で外国人を雇用する際の注意点について弁護士が実務の視点から整理します。
もくじ
第1章 飲食店における外国人雇用の判断枠組みと在留資格の基本整理
1-1 在留資格と業務内容から雇用可否を判断する
外国人を雇用する際、まず理解しておきたいのは、その外国人が持っている在留資格で自社の業務に従事させることが法律上可能かという適合性です。日本の入管制度では、原則として許可された範囲外の活動を行うことは禁じられています。
判断の軸となるのは、任せたい業務が「専門的・技術的な判断を要するもの」なのか、それとも「いわゆる単純労働を含む現場での実務」なのかという点です。
飲食店においては、この区分が厳格に運用されるため、個別の業務内容を細かく棚卸しした上で、在留資格と照らし合わせる必要があります。
1-2 飲食店で想定される主な在留資格とその特徴
飲食店で雇用が検討される在留資格は、大きく4つのグループに分けて整理できます。
身分に基づく在留資格(永住者、日本人の配偶者等)
「永住者」「日本人の配偶者等」「永住者の配偶者等」「定住者」の4つが該当します。これらの資格を持つ外国人は、日本人と同様に就労に関する制限が一切ありません。ホールでの接客、厨房での調理、店舗管理、デリバリー業務など、どのような業務にも時間制限なく従事させることが可能です。採用側にとっても制約が少なく、柔軟な配置ができるグループといえます。
特定技能1号(外食業)
外食業のために創設された、現場業務を主目的とする在留資格です。飲食物調理だけでなく、フロアでの接客サービス、店舗管理(清掃やレジ打ちを含む)など、飲食店における一連の業務に従事させることができます。一定の技能試験と日本語試験に合格した即戦力人材が対象となるため、長期的な戦力としても期待できるといえます。
資格外活動許可(留学生、家族滞在など)
本来は勉強や家族との同居が目的の在留資格ですが、入管庁から資格外活動許可を得ることで、アルバイトが可能になります。注意点は「週28時間以内」という時間制限が設けられている点です。ホールや厨房の補助としての業務も可能ですが、28時間を超えて働かせると不法就労となるため、シフト管理には注意が必要です。
技術・人文知識・国際業務(就労資格)
大学卒業程度の学歴や専門知識を持つ外国人を対象とした、いわゆる専門職の資格です。飲食店においては、本社でのマーケティング、海外展開の企画、通訳を介した高度な接客などが本来の活動範囲となります。現場での調理や接客をメインとする業務は原則認められていないため、採用時には任せる業務と本人の専門性が法的に適合するか、慎重な検討が必要です。
1-3 採用前に整理すべき業務内容とスタッフの配置計画
採用した後に、任せられない仕事だったという事態を避けるために、誰にどの業務を、どの程度の割合で任せるのかを明確にしておく必要があります。特に正社員として長期雇用を検討する場合には、将来も含めて、従事してもらいたい業務が法的に認められた範囲内に収まり続けるかを採用前に確認しておくことが重要です。
第2章 飲食店の現場業務における在留資格ごとの適法性判断
2-1 厨房業務・ホール業務に従事させる場合の判断基準
調理や接客といった飲食店の現場業務については、在留資格によって可否が分かれます。
留学生のアルバイトや特定技能1号であれば、調理、仕込み、皿洗い、配膳、レジ対応などの業務に従事させることに問題はありません。また、「技能」の資格を持つ外国人であれば、調理師として専門的な調理に従事することも可能です。
一方で、「技術・人文知識・国際業務」の資格者については注意が必要です。この資格は専門的・技術的な業務を前提としているため、現場での調理や接客を主たる業務とすることは原則認められていません。例えば、マーケティング職として採用しながら、実態として厨房やホール業務に大半の時間を充てさせる場合には、在留資格の範囲外と判断される可能性があります。
2-2 店舗管理・マネジメント業務を任せる場合の判断基準
売上管理やシフト作成、在庫管理などの店舗運営に関わる業務を任せる場合には、業務内容によっては「技術・人文知識・国際業務」の在留資格が検討されることがあります。
ただし重要なのは、業務の名目ではなく実態です。管理業務として採用していても、実際には接客や清掃などの現場業務に多くの時間を充てている場合には、専門的・技術的な業務とは評価されにくくなります。
この資格での就労が認められるためには、本人の学歴や職歴と業務内容との関連性があり、かつ管理業務が中心となっていることが必要です。業務内容と時間配分を整理し、在留資格の趣旨に沿った働き方となっているかを確認することが求められます。
2-3 複数の業務を兼務させる場合の判断のポイント
飲食店では一人の従業員が複数の業務を兼務することが一般的ですが、この点が在留資格との関係では問題となることがあります。
特定技能1号や資格外活動許可の場合は、調理と接客などの現場業務を組み合わせて従事させることに制限はありません。これらは外食業の通常業務として想定されています。
一方で、専門職の在留資格を持つ場合には、主たる業務が何であるかが重要になります。例えば、マーケティング業務を中心としつつ一時的に接客を行う程度であれば直ちに問題となるわけではありませんが、実態として現場業務が中心となっている場合には、在留資格の範囲を逸脱していると評価される可能性があります。
第3章 採用時に確認すべき事項と実務上の確認項目
3-1 採用時に必ず確認すべき事項の全体像
採用時には、在留資格の有無だけで判断するのではなく、就労の可否に関わる複数の事項を整理して確認する必要があります。少なくとも以下の3点は必ず確認すべき事項です。
- 在留カードの内容(在留期限・就労制限の有無)
- 資格外活動許可の有無および労働時間の制限
- 個別に付された条件(指定書の内容や転職に伴う手続の状況)
これらの確認を怠った場合には、不法就労と評価される可能性があるため、採用の段階で一定の確認手順を設けておくことが重要です。それぞれの内容について、以下で具体的に整理します。
3-2 ①在留カードで確認する事項(在留期限・就労制限)
採用時には、在留カードの原本を確認し、「在留期限」が有効か、「就労制限の有無」欄にどのような記載があるかを確認する必要があります。
在留期限が切れている場合には当然就労させることはできません。また、就労制限がある場合には、その記載内容に応じて従事可能な業務が限定されます。
なお、在留カードが提示されている場合でも、その記載内容だけで就労の可否がすべて判断できるわけではありません。続く3-3、3-4で述べる資格外活動許可の有無や個別条件の確認も必要となります。
3-3 ②資格外活動許可と労働時間制限の確認事項
留学生や家族滞在の在留資格を持つ外国人を雇用する場合には、在留カード裏面の「資格外活動許可」欄の記載を確認する必要があります。許可がある場合には、原則として週28時間以内の範囲で就労が認められます。
この労働時間の上限は、自社での勤務時間だけで判断されるものではなく、他の勤務先での労働時間と合算して判断されます。そのため、本人の申告だけに依拠していると、結果として上限を超過してしまう可能性があります。
採用時には他の勤務状況を確認するとともに、勤務開始後も労働時間の管理を継続することが求められます。
3-4 ③個別条件(指定書・転職手続)の確認事項
在留資格が「特定活動」となっている場合には、在留カードの記載だけでは就労可能な業務内容を判断することができません。この場合には、パスポートに添付されている指定書を確認し、どのような活動が許可されているかを把握する必要があります。
また、特定技能などで他社から転職してくる場合には、在留資格があることに加えて、受入機関の変更手続が完了しているかも確認しなければなりません。
第4章 飲食店で生じやすい外国人雇用のトラブルと実務上の留意点
4-1 在留資格と異なる業務に従事させてしまうケース
第2章で整理したとおり、在留資格によって従事できる業務の範囲は異なりますが、現場では人手不足を理由にその範囲を超えた業務を任せてしまうケースが見受けられます。
例えば、「技術・人文知識・国際業務」の資格で採用した外国人に対し、繁忙時間帯のみの対応として厨房業務や接客業務を繰り返し担当させるような運用です。このような場合、業務の一部として一時的に従事する範囲を超え、実態として現場業務が中心となっていると評価される可能性があります。
業務の割り振りは、採用時に想定した業務内容から逸脱していないかを定期的に確認し、在留資格との適合関係を維持することが必要です。
4-2 シフト管理の不備により労働時間制限を超過するケース
留学生アルバイトなどを雇用する場合、資格外活動許可に基づく労働時間の制限(週28時間以内)を遵守する必要があることは第3章で触れたとおりです。
もっとも、飲食店では繁忙時間帯に応じてシフトが変更されることが多く、労働時間が上限を超えてしまうケースがあります。
シフト作成時には、本人の勤務状況を確認したうえで余裕を持った設定とし、実際の労働時間についても継続的に把握する体制を整えることが重要です。
4-3 在留期限の管理不足による継続雇用リスク
在留資格には必ず期限が設定されており、期限を過ぎた後に就労させた場合には、不法就労と評価される可能性があります。
外国人本人が更新手続を行うことが前提となっていますが、実務上は更新の遅れや手続の不備により、期限切れのまま就労が継続されてしまうケースもあります。
このような事態を防ぐためには、雇用側でも在留期限を管理し、期限前に更新状況を在留カードの提示によって確認する仕組みを整えておくことが有効です。
4-4 現場判断に依存した運用により問題が発生するケース
外国人雇用に関するルールを現場任せにしている場合、法令上の制約が十分に理解されないまま運用されることがあります。
例えば、急な人手不足を理由に在留資格の確認を行わずに採用してしまう、あるいは業務内容の制限を考慮せずに配置してしまうといったケースです。これらは個々の判断としては小さな逸脱であっても、積み重なることで重大な法的リスクになり得ます。
採用時および配置時の判断基準を明確にし、現場でも同一のルールに基づいて運用できる体制を整備することが重要です。
第5章 【FAQ】飲食店の外国人雇用でよくある疑問
Q1. 外国人従業員をアルバイトから正社員に切り替える場合、どのような手続が必要ですか?
A1. 在留資格の変更が必要になる場合があります。
アルバイトとして働いている外国人が留学生などの場合、正社員としてフルタイムで働くには現在の在留資格のままでは対応できないことがあります。その場合には、業務内容に応じた就労資格(例えば「技術・人文知識・国際業務」や「特定技能」など)への変更手続が必要となります。単に雇用形態を変更するだけで就労が認められるわけではないため、予定している業務内容と在留資格の適合関係を事前に確認し、必要な手続を踏んだ上で配置することが重要です。
Q2. 外国人従業員が突然来なくなった場合、雇用側に法的なリスクはありますか?
A2. 直ちに違法とはなりませんが対応は必要です。
無断欠勤が続き、職場に来なくなった場合、それ自体が雇用側の法的責任につながるわけではありません。ただし、雇用関係が継続している以上、在留資格の状況や所在不明となっている理由によっては、適切な対応が求められる場合があります。例えば、雇用保険や社会保険の資格喪失手続、外国人雇用状況の届出など、一定の事務対応が必要となるため、放置はせずに社内ルールに従って雇用関係の整理や必要な手続を行っておく必要があります。
Q3. 外国人従業員との雇用契約書は日本語のみでも問題ありませんか?
A3. 法的には可能ですが労働条件の内容を理解してもらう必要があります。
雇用契約書を日本語のみで作成すること自体は違法となるものではありません。ただし、従業員本人が契約内容を十分に理解しないまま雇用関係が開始された場合、後に労働条件に関するトラブルに発展する可能性があります。特に賃金、労働時間、業務内容などの重要事項については、本人が理解できる形で説明することが求められます。必要に応じて母国語での補足資料を用意するなど、誤解が生じない環境を整えることが望ましいといえます。
Q4. 外国人従業員を解雇する場合、日本人と同じ基準で判断してよいのでしょうか?
A4. 基本的には同じ基準で判断されます。
解雇に関する法的な考え方は、外国人であることを理由に異なるものではありません。日本人と同様に、客観的に合理的な理由があり、社会通念上相当といえる場合でなければ、解雇は無効と判断される可能性があります。また、在留資格との関係で就労が継続できなくなる場合であっても、その事情だけで直ちに解雇が正当化されるとは限りません。個別の事情を踏まえて慎重に判断する必要があります。
第6章 飲食店の外国人雇用は採用時の判断と雇用後の管理が重要
飲食店における外国人雇用では、在留資格と業務内容の適合関係を正しく判断することに加え、採用時の確認と雇用後の運用を継続的に管理していくことが求められます。もっとも、在留資格の判断や各種手続は複雑であり、個別の事情によって結論が変わる場面も少なくありません。採用や配置に不安がある場合や、現在の運用が適切か確認したい場合には、専門家とともに体制を整えることも有効です。
私たちNexill&Partners(ネクシル&パートナーズ)グループでは、弁護士・社会保険労務士・行政書士が連携し、在留資格の判断から労務管理まで一体的にサポートしています。外国人雇用についてお悩みの際は、ぜひお気軽にご相談ください。
