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元請が工事代金を払ってくれない場合はどうする?工事を止められるケースと未払い代金の回収方法を弁護士が解説

2026.09.08

元請から出来高払や中間金が支払われないまま、工事を予定どおり続けるよう求められることがあります。未払いの状態で工事を続ければ、人件費や材料費の持ち出しが増え、未回収額がさらに膨らむおそれがあります。一方で、代金が支払われないことを理由に一方的に工事を止めると、契約違反を主張される可能性もあります。
本記事では、元請から工事代金を支払ってもらえない場合に、工事を続けるか中断するかの判断、未払い代金を回収する流れについて弁護士が解説します。

第1章 工事代金が支払われない場合はどうする?

1-1 まず工事代金の支払サイクルと未払いの範囲を確認する

下請工事では、工事完成時に代金全額が支払われるとは限らず、月ごとの出来高に応じて支払われたり、工事の進捗にあわせて複数回に分けて支払われたりすることがあります。
工事途中で未払いが発生した場合には、まず契約書や注文書、請書などから、どの段階で、どの工事について、いくら支払われる契約になっているのかを確認しましょう。そのうえで、すでに施工した部分に対する未払い額と、今後施工する残工事を整理します。

この整理をしておくことで、未払いのまま工事を続けた場合にどこまで未回収額が増えるのかを把握し、工事を継続するか、中断を検討するかの判断につなげることができます。

1-2 未払いがあっても一方的に工事を止めるのは危険

国土交通省の現行の建設工事標準下請契約約款では、元請が前払金や部分払金の支払いを遅延し、下請が相当の期間を定めて支払いを求めても支払われない場合には、工事の全部または一部を一時中止できるとされています。

ただし、実際に工事を中断できるかは、契約書の内容や未払いとなっている代金、元請への催告の状況などによって判断が異なります。支払期日を過ぎているというだけで、施工義務が残っている工事を一方的に止めると、反対に元請から工期遅延や損害賠償などを主張される可能性があります。

1-3 工事を中断する前に元請の対応を確認し、今後の方針を決める

未払いのまま工事を続ければ、人件費や材料費などの負担が増え、未回収額がさらに膨らむおそれがあります。元請から「来月には払う」「施主から入ったら支払う」と言われても、口頭の約束だけで工事を継続するのは避けた方がよいでしょう。

まずは元請に対して未払いとなっている工事代金の支払いを求め、その対応を確認したうえで、契約内容や残工事の状況を踏まえ、工事を継続するのか、一時中断や契約解除を検討するのかを判断します。
特に未払い額が大きい場合や、工事を続けることで材料費・外注費などの負担がさらに増える場合には、一方的に工事を止める前に弁護士へ相談して対応を検討するとよいでしょう。

未払いとなっている工事代金の具体的な回収方法については、第4章で詳しく解説します。

第2章 元請が施主から払われていなくても下請への支払期限が延びるわけではない

下請会社が工事代金を請求する相手は、原則として元請会社

下請会社が元請会社から工事を請け負っている場合、工事代金を支払う義務を負うのは、原則として契約相手である元請会社です。
施主と元請の請負契約と、元請と下請の請負契約は別のものです。そのため、元請が施主から工事代金を受け取っていないという事情だけで、元請・下請間で定めた支払期限を延ばせるわけではありません。

一方、元請から支払いを受けられないからといって、下請会社が施主に対して代金を直接請求できるとは限りません。前述のとおり、下請会社の工事代金債権は、通常、元請との請負契約に基づいて発生するためです。
元請から「施主から入金されていないので支払えない」と言われた場合も、まずは元請との契約で定められた支払条件を確認し、元請に対して支払いを求めることになります。

第3章 工事代金を回収するために確保しておくべき証拠

3-1 契約内容と出来高を証明できる資料を集める

工事代金を回収するには、単に「工事をした」と示すだけではなく、どのような内容・金額で工事を請け負い、実際にどこまで施工したのかを確認できる資料が重要になります。
まず、契約書や注文書・請書から請負金額や施工範囲、支払条件を確認します。そのうえで、見積書や請求書、工程表、出来高を確認できる資料や現場写真などをもとに、実際の施工内容と請求額が対応していることを整理しておきましょう。

実務では、基本契約書はあるものの個別工事の発注内容が曖昧であったり、注文書だけで現場が進んでいたりすることもあります。書類が十分でない場合には、メールやチャットなど、元請とのやり取りも含めて状況を整理しておく必要があります。

3-2 追加工事・変更工事は特に証拠を残しておく

建設工事で争いになりやすいのが、追加工事や変更工事です。
現場では、「ここも一緒にやっておいて」と口頭で指示され、そのまま施工することもあります。しかし、代金を請求した段階で、元請から「当初の請負代金に含まれている」「その金額では発注していない」と主張されることがあります。

書面を作成していなかった場合でも、追加工事を指示したメールやチャット、施工前後の写真、見積書の送付履歴などがあれば、追加工事の発注経緯や施工内容、代金についてのやり取りを確認する資料になり得るため、あわせて保存しておきましょう。

3-3 遅延損害金を請求する場合は利率と遅延期間を確認する

工事代金の支払期日を過ぎても支払いがない場合には、未払いとなっている工事代金に加えて、遅延損害金を請求できる場合があります。
まず、契約書に遅延損害金の利率について定めがあるかを確認しましょう。定めがない場合でも、民法上の法定利率に基づいて遅延損害金を請求できることがあります。
遅延損害金を請求する場合には、支払期日を起点として遅延期間を計算するため、いつ支払期日を迎えたのかを確認できる資料が必要です。
また、支払期日が明確に定められていない場合、少なくとも工事の完成、引渡しをした日以降は代金を請求できると考えられるため、完成日及び引渡日がいつか特定できるよう、記録を残しておいたり、元請から引渡確認書に記名押印をもらったりしておくことが望ましいです。

第4章 工事代金・売掛金を払ってくれない場合の回収方法

4-1 まずは記録が残る方法で支払いを催告する

支払期限を過ぎても工事代金が入金されない場合は、まず元請に対して、未払いとなっている工事代金の金額と支払期限を明らかにして支払いを求めます。
電話や対面だけで催促すると、後から「いつ、いくらを請求したのか」が確認しにくくなります。そのため、メールや書面など、請求した内容と日時が記録に残る方法で催告しておくことが大切です。元請から支払時期について回答があった場合も、できるだけ記録を残しておきましょう。

それでも支払われない場合には、期限を定めて改めて支払いを求めるとともに、内容証明郵便による催告を検討します。内容証明郵便を利用すれば、いつ、どのような内容の文書を差し出したのかを証拠として残すことができます。
特に、支払期限を何度も延期されている場合や、元請の資金繰りに不安がある場合には、催告を繰り返すだけでなく、弁護士への依頼や法的手続きを検討する必要があります。

4-2 自社での催告でも支払われない場合は弁護士による交渉を検討する

メールや書面、内容証明郵便などで支払いを求めても元請が応じない場合には、弁護士に依頼して交渉することを検討します。
弁護士が代理人として請求することで、未払いとなっている工事代金や支払期限をあらためて明確にしたうえで、元請と支払いについて交渉できます。元請から一括での支払いが難しいとの回答があれば、回収可能性を踏まえて分割払いなどの条件を検討することもあります。

特に、工事途中で未払いが発生している場合、残りの工事を続けるのか、中断や契約解除を検討するのかという問題も含まれるため、弁護士に相談することで、契約内容や未払いの状況を確認しながら、債権回収と今後の施工をあわせて整理することができます。

4-3 弁護士による交渉でも回収できなければ法的手続きを検討する

弁護士が交渉しても元請が支払いに応じない場合には、支払督促や訴訟などの法的手続きを検討します。
たとえば、元請が工事代金の存在や金額自体は争っておらず、単に支払いをしない場合には、支払督促を利用できることがあります。支払督促は、裁判所から元請に金銭の支払いを求める手続で、元請から異議が出ると訴訟へ移行します。

一方、追加工事を発注したかどうか、出来高がどこまで認められるか、施工不良があるかなど、工事内容そのものに争いがある場合には、訴訟や建設工事紛争審査会の利用を検討します。建設工事紛争審査会では、建設工事の請負契約をめぐる紛争について、あっせん・調停・仲裁の手続を利用できる場合があります。

また、元請の資金繰りが悪化し、訴訟中に財産がなくなるおそれがある場合には、預金などを仮に差し押さえる仮差押えを検討することもあります。判決や和解調書などを得ても支払われない場合には、預金等の財産に対する強制執行によって回収を図ります。

どの手続が適しているかは、元請が何を争っているのか、未払い額、相手方の資金状況などによって異なるため、回収可能性も踏まえて選択することが重要です。

まとめ|工事途中の未払いは早い段階で専門家に相談を

工事途中で代金の未払いが発生した場合、単に未払い代金を請求するだけではなく、残りの工事を続けるのか、中断や契約解除を検討するのかまで判断しなければなりません。特に未払い額が大きい場合や、元請の支払いが繰り返し遅れている場合には、対応が遅れるほど自社の負担が増える可能性があります。

私たちNexill&Partners(ネクシル&パートナーズ)では、契約内容やこれまでの支払状況を確認したうえで、工事継続の判断から元請との交渉、必要に応じた法的手続きまで一貫して対応しています。グループ内には税理士法人などもあり、未払いが自社の資金繰りに影響する場合も含めて、必要に応じて連携できる体制を整えています。
このまま工事を続けてよいのか、元請の支払いをどこまで待つべきかと迷っている段階でもご相談いただけます。まずはお気軽にご相談ください。

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