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個人事業主が不動産事業を法人化する主な3つの方法|メリット・デメリットと手続きを弁護士・税理士が解説

2026.08.27

個人名義で不動産賃貸業を続ける中で、税負担の見直しや将来の事業承継を見据えて法人化を検討する方もいるでしょう。不動産事業の法人化には複数の方法があり、物件の帰属や賃料収入の取扱い、移転にかかるコストなどを踏まえて検討する必要があります。
本記事では、不動産事業を法人化する際に検討される代表的な3つの方法について、それぞれのメリット・デメリット、必要な手続き、法務・税務上の注意点を弁護士・税理士の視点から解説します。

もくじ

第1章 個人事業主が不動産事業を法人化する3つの方法

不動産事業の法人化を検討する場合、まず、個人と法人のどちらが不動産を所有し、賃料を受け取るのか、法人にどの業務を担わせるのかを検討する必要があります。
本コラムでは以下の3つの方法を整理します。

1-1 ①個人所有の不動産を法人へ売却する方法

1つ目は、現在個人で所有している不動産を、自身で設立した法人へ売却する方法です。
不動産オーナー個人が売主となり、新しく設立した法人が買主となって、所有している不動産の売買契約を締結します。不動産売買契約に基づいて所有権を法人へ移転し、所有権移転登記を行えば、原則として法人が賃貸人として賃料を受け取ります。
つまり、既存物件を含む不動産の所有と賃貸経営を法人へ集約する方法です。

1-2 ②不動産は個人で所有し、法人が管理業務を行う方法

2つ目は、不動産の所有者と賃貸人は個人のままとし、設立した法人で不動産の管理業務を行う方法です。
個人と法人との間で管理委託契約を締結し、法人が入居者対応や賃料管理、管理会社との連絡などの管理業務を担います。その対価として、個人から法人へ管理料を支払う仕組みです。

1-3 ③既存物件は個人に残し、今後取得する物件を法人名義にする方法

3つ目は、現在所有している物件は個人名義のまま残し、法人設立後に新しく購入する物件から法人名義とする方法です。
既存物件の賃料収入は引き続き個人に帰属します。一方、今後取得する新規物件については、法人が買主として売買契約を結び、融資を利用する場合には法人が借入人となり、賃料収入も法人が受け取ります。
現在の個人事業をすぐにすべて法人へ移すのではなく、新規取得分から段階的に法人化する方法です。

第2章 不動産事業を法人化すると税金はどう変わる?

個人と法人では課税の仕組みが異なります。また、3つの方法はそれぞれ法人に帰属する収入の範囲が異なるため、税負担への影響も変わります。

2-1 法人化すると、個人と法人に分けて税負担を考えることになる

個人名義で不動産賃貸業を行っている場合、賃料収入から必要経費を差し引いた不動産所得に対して、個人の所得税・住民税がかかります。所得税は、給与所得など他の所得と合算し、所得が増えるほど税率が高くなる累進課税です。

これに対して、不動産事業を法人化すると、法人に帰属する利益には法人税、法人住民税、法人事業税などがかかります。また、法人から代表者へ役員報酬を支払えば、その役員報酬については、代表者個人の給与所得として、個人に所得税・住民税がかかります。

そのため、法人化すると、これまで個人に集中していた不動産の収益を、法人に残す利益と代表者が受け取る役員報酬に分けて考えることができます。家族などが不動産の管理業務を担う場合には、法人の利益から給与として支払うことができるため、全体の税負担を下げられる可能性があります。

ただし、法人化した方が常に有利とは限りません。
法人に利益をどの程度残すか、役員報酬をいくらにするかなどによって、法人と個人にかかる税金は変わります。さらに、法人の申告手続きや、会社の維持にかかる費用も考慮する必要があります。

2-2 法人化の3つの方法では法人へ移る所得の範囲が異なる

法人化の方法の違いによって、法人に帰属する収入の範囲も変わります。この違いは、法人化によって税負担がどの程度変わるかを考えるうえで重要です。

①個人所有の不動産を法人へ売却すると、不動産の賃料収入が法人に移る

個人所有の不動産を法人へ売却する方法では、売却後の賃料収入は原則として法人に帰属します。今回の3つの方法の中では法人に移る所得の範囲が最も広くなりやすい方法です。
ただし、個人から法人へ不動産を移す際には、以下のような税金が発生する可能性があります。

  • 売却する個人側の譲渡所得税
  • 法人側の登録免許税
  • 法人側の不動産取得税 など

 

そのため、このケースを検討する場合、法人化後の税負担だけでなく、移転時にかかる税金や費用まで含めて比較する必要があります。

②管理業務のみを法人が行う場合、法人に移る収益は管理料の範囲に限られる

不動産を個人で所有したまま、管理業務のみを法人で行う方法では、賃料収入は引き続き個人に帰属します。
法人に入る収入は、法人が実際に行う管理業務に見合った管理料などに限られるため、不動産を法人へ売却する①の方法と比べると、法人へ移せる所得は限られます。

③既存物件は個人に残し、新規物件を法人名義にすると、新規物件の賃料収入が法人に入る

既存物件を個人に残し、法人化後に取得する不動産を法人名義にする方法では、不動産から生じる収益や所得の帰属が、個人と法人に分かれます。
既存物件から生じる不動産所得には引き続き個人の所得税・住民税がかかります。
一方で、法人化後、法人名義で新たに取得した物件の賃料収入については①と同様に、賃料収入から必要経費を差し引いた利益に対して、法人税、法人住民税、法人事業税などがかかります。
そのため、この方法では、既存物件の所得に対する個人課税を残しながら、新規物件から生じる利益については法人課税へ切り替えていくことになります。

第3章 3つの法人化のメリット・デメリット

3-1 ①個人所有の不動産を法人へ売却する方法のメリット・デメリット

メリット|不動産事業全体を一体的に管理しやすくなる

個人所有の不動産を法人へ売却すると、不動産の所有者と賃貸経営の主体を法人にまとめられます。特に、複数の物件を所有している場合には、すべての物件と賃料収入を法人の資産・収入として一元管理できるため、物件ごとの収益性や事業全体の財務状況なども把握しやすくなります。
また、将来の事業承継について、不動産を一件ずつ承継する方法だけでなく、不動産事業として後継者へ引き継ぐ方法を検討することもできます。

デメリット|移転時の税金と資金準備の負担が生じる

この方法で懸念されるのは、個人から法人へ不動産を移す時点でまとまった資金負担が生じる点です。
個人側には、不動産の売却価格から取得費などを差し引いた利益に譲渡所得税が課せられます。法人による取得に伴い、登録免許税や不動産取得税などが生じ、物件の評価額や物件数によっては数百万円単位の負担になることもあります。
また、売主が消費税の課税事業者である場合には、建物部分の消費税も確認が必要です。
さらに、税金や登記費用とは別に、法人側が個人へ支払う不動産の売買代金を準備しなければなりません。法人名義で融資を受けるのか、個人から法人へ資金を貸し付けるのかも含め、移転後の節税効果だけでなく、最初に必要となる資金まで試算することが重要です。

検討ポイント|既存物件の利益が大きく、長期的に法人へ事業を集約したい場合

個人所有の不動産を法人へ売却する方法は、既存物件から安定した利益が出ており、今後も長期保有しながら、不動産事業を安定的に運営したい場合に検討しやすい方法です。個人の所得税負担を見直したい、また、将来的に不動産事業を承継したいと考えている場合に検討される方法といえます。

3-2 ②管理業務のみ法人で行う方法のメリット・デメリット

メリット|家族や従業員に管理業務を分担し、所得の分散を検討できる

不動産を個人名義のまま残すため、①のように既存物件を個人から法人へ移す際の税金や手続きは発生しません。入居者対応や賃料の入金確認、管理会社との連絡などを法人の業務として整理することで、これまで個人で行っていた業務を家族などに分担しやすくなり、対価として法人から給与を支払うことで個人の所得を家族へ分散し、世帯全体での税負担を見直せる可能性があります。

デメリット|法人の収入は適正な管理料の範囲に限られる

法人が受け取れるのは、実際に行う管理業務に見合った管理料に限られます。賃料収入そのものは引き続き個人に帰属するため、①と比べると法人へ移せる収入が限られるため、個人・法人を合わせた税負担を見直せる範囲も限定されやすいといえます。また、すでに外部の管理会社がほとんどの業務を行っている場合には、新設法人が担当できる業務が少なく、期待するほどの管理料を設定できない可能性もあります。

検討ポイント|家族などで所有不動産の管理体制を作りたい場合

オーナーが自身で行っていた不動産管理を法人の業務として整理し、家族などで分担できる体制を作りたい場合に検討しやすい方法です。将来、オーナーに代わって家族などが管理業務を担えるよう、管理体制を整える方法としても検討されます。

3-3 ③新規物件のみ法人名義にする方法のメリット・デメリット

メリット|新規取得分から法人化するため移転コストが抑えられる

現在所有している物件は個人名義のまま残すため、既存物件については②と同様に、所有権移転に関する税金や手続きが発生しません。一方、今後購入する物件については、法人が買主として売買契約を締結し、融資や所有権登記、賃貸借契約などを法人名義で整えられます。
既存物件の移転にかかる初期費用を避け、物件の買い増しに合わせて法人の資産と賃料収入を増やしていける点がこの方法のメリットといえます。

デメリット|個人事業と法人事業に分かれ事務作業が煩雑になる

既存物件は個人、新規物件は法人が所有するため、個人事業と法人事業が並行して続くことになります。物件ごとに収支を区分し、個人と法人のどちらに帰属するものかを明確にしなければならず、事務作業が煩雑になりやすいといえます。

検討ポイント|初期費用を抑えながら法人化へ移行したい場合

既存物件を法人へ移す手続きや費用負担は避けたいものの、今後も収益物件を購入し、不動産事業を拡大したい場合に検討しやすい方法です。また、新設法人では、個人名義の既存融資より金利が高くなったり返済期間が短くなったりする可能性があるため、既存物件の融資条件が良い場合には、既存物件をそのまま個人に残し、新規物件だけを法人名義にする方法は現実的ともいえます。

第4章 3つの法人化それぞれに必要な手続き

4-1 ①個人所有の不動産を法人へ売却する場合の手続き

まず法人を設立し、借入れや抵当権がある場合には、物件を移す前に金融機関へ相談します。
その後、売買価格を検討し、個人を売主、法人を買主として不動産売買契約を締結します。同じ人が個人と法人の代表者を兼ねる場合でも、契約書の作成や、必要に応じた利益相反取引の承認が必要です。
売買代金の決済後は、賃貸人の地位、未収賃料、管理委託契約などの取扱いを整理します。

弁護士・税理士に事前に確認したいポイント

同じ人が売主個人と買主法人の代表者を兼ねる場合でも、売買価格や代金の支払方法などについて契約書で明確にしておく必要があります。内容が曖昧なまま進めると、税務処理や登記、金融機関への説明との間に不整合が生じる可能性があるため、売買条件を決める段階で弁護士のリーガルチェックを受けると安心です。
また、この方法では個人の譲渡所得税、法人側の登録免許税や不動産取得税などが移転時に生じます。個人の所得税の節税効果だけでなく、移転コストを含めた税額シミュレーションを税理士に確認したうえで進めることが望ましいでしょう。

4-2 ②不動産は個人で所有し、法人が管理業務を行う場合の手続き

法人に任せる管理業務を具体的に決めたうえで、個人を委託者、法人を受託者とする管理委託契約を締結します。外部の管理会社を利用している場合には、業務が重ならないよう役割を分ける必要があります。
契約書に定めた業務内容と実際の管理業務が一致していなければ、管理料の根拠を説明できず、税務調査で個人側の必要経費として認められない可能性があります。そのため、契約書の作成段階で、法人が実際に担える業務と、それに見合う管理料を設定することが大切です。

4-3 ③今後取得する物件を法人名義にする場合の手続き

この方法では、現在所有している不動産について、名義変更や借換えなどの手続きは行いません。今後取得する物件については、法人が買主となって売買契約を締結し、融資を利用する場合には法人名義で融資を受け、所有権移転登記を行います。

第5章 まとめ|法人化の方法は、将来の事業の形から逆算して決める

不動産事業の法人化では、目先の節税額だけを比べるのではなく、今後どのように物件を保有し、誰が管理し、将来誰へ引き継ぎたいのかを含めて考えることが重要です。
現在の不動産を法人へ移すのか、管理機能だけを法人化するのか、新規取得分から法人へ切り替えるのかによって、税負担だけでなく、初期費用や必要な手続きも変わります。先に会社だけを設立してしまうと、予定していた方法で不動産を移せなかったり、想定より移転コストがかかったりして期待した効果を得られないこともあります。
そのため、法人化を進める前に、税理士による税額や資金繰りの試算、弁護士による売買契約や管理委託契約などの法的な確認を行い、実行可能な方法を選ぶことが大切です。

私たちNexill&Partners(ネクシル&パートナーズ)グループでは、弁護士、税理士、司法書士などの士業が連携し、不動産事業の法人化に伴う法務・税務・登記などをワンストップでサポートしています。不動産業の法人化を検討している方は、会社を設立する前に、現在の所有物件や借入状況、将来の事業承継の希望などを含めてまずは一度ご相談ください。

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