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店舗の防犯カメラ映像は個人情報?開示を求められた場合の対応と管理ルールを弁護士が解説

2026.08.25

店舗の防犯カメラには、来店客や従業員の顔や行動が記録されます。人物を識別できる映像は個人情報にあたるため、保存や閲覧、外部への提供には注意が必要です。一方、本人から「映像を見せてほしい」と求められても、必ず開示義務があるとは限りません。
本記事では、店舗の防犯カメラ映像の取り扱いと、開示・提供を求められた場合の対応について弁護士が解説します。

もくじ

第1章 店舗の防犯カメラ映像は個人情報にあたる

1-1 顔などから特定の人物を識別できる映像は個人情報になる

個人情報保護法では、生存する個人に関する情報のうち、特定の個人を識別できる情報などを個人情報としています。
そのため、店舗の防犯カメラに来店客や従業員の顔が鮮明に映っており、誰であるかを識別できる場合、その映像は個人情報にあたります。

1-2 一般的な防犯カメラ映像は個人データにはあたらない場合がある

一般的な防犯カメラは、録画日時を指定して映像を検索することはできても、「Aさんが映っている映像」のように特定の人物について検索できる仕組みにはなっていません。このような場合、その映像は「個人情報」には該当しますが、個人情報保護法上の「個人データ」「保有個人データ」にはあたりません。

ただし、個人データ・保有個人データにあたらないからといって、防犯カメラ映像を店舗や会社が自由に取り扱ってよいわけではありません。人物を識別できる映像は個人情報であるため、撮影する目的を明確にし、必要以上に利用しないことや、映像を閲覧できる人を限定することなど、適切な管理が必要です。

※個人データ

個人情報のうち、検索できるよう体系的に整理された個人情報データベース等を構成する情報(氏名検索が可能な会員リストに登録された氏名・住所など)。そのうち、事業者が開示や訂正などを行う権限を持つものを保有個人データと呼びます。

第2章 客や従業員から防犯カメラ映像の開示を求められた場合の対応

店舗では、客から「財布をなくしたので映像を確認したい」「トラブルの状況が映っているはずなので見せてほしい」と求められることがあります。あるいは、従業員から「自分が映っている映像を確認したい」と申し出られるケースも考えられます。
しかし、本人が映っているからといって、必ず防犯カメラ映像を開示しなければならないわけではありません。

2-1 本人が映っていても必ず映像を開示する義務があるわけではない

映像に映っている本人が個人情報保護法に基づいて開示を請求できるのは、保有個人データに該当する映像です。
そのため、一般的な防犯カメラに「自分が映っているから」という理由だけで、個人情報保護法上の開示義務が生じるわけではありません。前述のとおり、特定の人物について検索できない一般的な防犯カメラの映像は個人データに該当しないからです。

2-2 現場の判断で安易に防犯カメラ映像を見せるべきではない

一般的な防犯カメラの映像は、個人データにはあたらないものの個人情報には該当するため、あらかじめ特定した利用目的の範囲内での取り扱いが求められます。「自分が映っているから見せてほしい」と言われた映像には、防犯カメラの特性上、ほかの来店客や従業員が映り込んでいる可能性が高く、それらの人のプライバシーにも配慮しなければなりません。
そのため、店長がその場でモニターを再生したり、客のスマートフォンで録画させたりすることは避けるべきでしょう。映像を見せたり提供したりする場合には、その必要性や範囲、ほかの人物の映り込みなどを確認したうえで判断することが適切です。

2-3 開示を求められた場合は対象映像を確認して社内で対応を検討する

客や従業員から映像を見せてほしいと求められた場合には、現場のスタッフだけで結論を出さない運用にしておくことが大切です。必要に応じて、対象となる日時や場所から映像を確認し、上書きされる前に保存する必要があるかも検討します。そのうえで、社内で対応を判断します。
開示や提供を求められた場合の社内ルールについては、第4章で解説します。

第3章 警察や被害者などから防犯カメラ映像の提供を求められた場合

3-1 警察から法令に基づく照会を受けた場合は本人の同意なく提供できる

警察から捜査関係事項照会(捜査のために警察が行う正式な照会)を受けた場合には、個人情報保護法上の法令に基づく場合にあたり、映っている本人の同意を得ずに情報を提供することができます。

3-2 被害者から直接求められた場合は警察への相談を案内する

たとえば、客から「店内で財布を盗まれたので犯人の映像をください」「駐車場で車をぶつけられたので相手が映っている映像を見せてください」と求められるケースがあります。
防犯カメラの映像には、本人以外の来店客などが映っている場合もあるため、被害者から求められたからといって安易に提供するのではなく、利用目的やほかの人物のプライバシーにも配慮して慎重に判断する必要があります。
特に、犯罪被害が疑われる場合には、申出者に警察への相談を案内し、店舗から被害者本人へ直接映像を渡すのではなく、警察からの照会等に応じて提供する方法を検討するとよいでしょう。

3-3 弁護士や保険会社からの依頼も根拠を確認してから対応する

交通事故や店舗内事故などでは、当事者の代理人である弁護士や、事故対応を行う保険会社から映像の提供を求められることもあります。
弁護士や保険会社から任意に依頼されたというだけで、店側が当然に映像を提供しなければならないわけではありません。求められた場合には、どの当事者の弁護士・保険会社なのか、どの事故について何のために映像を必要としているのか、当初特定した利用目的の範囲内といえるかを確認したうえで、提供するかを判断します。提供する場合にも、事故の確認に必要な範囲に限定し、ほかの来店客などのプライバシーに配慮することが重要です。

ただし、弁護士法に基づいて弁護士会から正式な照会が行われた場合には、法令に基づくものとして、個人情報保護法上は本人の同意なく個人データを提供することができます。弁護士会照会を受けた場合は、正当な理由がない限り報告すべき公法上の義務があると解されています。
もっともその場合も、照会内容によってはプライバシー等との利益衡量が必要となるため、回答の可否や範囲を個別に検討する必要があります。

第4章 店舗の防犯カメラ映像は社内ルールを決めて適切に管理する

防犯カメラ映像をめぐるトラブルを防ぐには、開示や提供を求められてから対応を考えるのではなく、あらかじめ店舗での取り扱いルールを決めておくことが重要です。

4-1 【撮影ルール】撮影する目的を明確にして来店客にも分かるようにする

まず、カメラを設置する目的と撮影範囲を明確にします。
店舗内に防犯カメラが設置されており、防犯目的で撮影していることが来店客などから見て明らかな場合には、個人情報保護法上、利用目的を別途通知・公表する必要がないことがあります。
一方、カメラが目立たない場所に設置されているなど、撮影されていることを来店客などが容易に認識できない場合には、「防犯カメラ作動中」と掲示するなど、撮影されていることを容易に認識できるようにする措置が必要です。
外観上カメラであることが明らかな場合でも、掲示によって撮影中であることを分かりやすくすることが望ましいとされています。

また、防犯目的で取得した映像を、後からマーケティングなど別の目的で利用することには注意が必要です。個人情報保護委員会は、防犯目的で取得したカメラ画像や顔特徴データを商業目的で利用する場合には、あらかじめ本人の同意が必要としています。

4-2 【閲覧ルール】防犯カメラ映像を閲覧できる担当者を限定する

防犯カメラ映像を社内の誰でも閲覧できる状態にするのは避け、店長や本部の管理責任者など、業務上必要な担当者に閲覧権限を限定しておきましょう。私物のスマートフォンで映像を撮影したり、無断でコピー・持ち出したりすることを禁止するなど、店舗内での取り扱いルールも定めておくことが重要です。

4-3 【保存ルール】防犯カメラ映像の保存期間と削除方法を決めておく

防犯カメラ映像の保存期間について、個人情報保護法で「○日以内」と一律に定められているわけではありません。
店舗側としても、必要以上に長期間保存すればその分だけ管理の負担や情報漏洩のリスクが高まるため、一定期間が経過すると映像が自動的に上書きされるようにするなど、業態や防犯上の必要性に応じて保存期間を決めておくとよいでしょう。
事件や事故などが発生した場合には、通常の保存期間が経過して映像が消えてしまわないよう、必要な映像だけを別途保存する運用も決めておくことが考えられます。

4-4 【開示・提供ルール】映像を求められた場合の社内対応を統一する

客や従業員、警察、弁護士などから映像の開示・提供を求められた場合に、社内の誰が対応を判断するのかも決めておきましょう。
特に多店舗を運営している企業では、店舗ごとに対応がばらつかないよう、「現場ではその場で映像を見せたり渡したりせず、本部の担当者へ確認する」など共通のルールを設けておく方法が考えられます。
また、映像を提供した場合には、誰に、いつ、どの範囲の映像を提供したのかを記録するルールも定めておくと、後から対応経緯を確認しやすくなります。

まとめ

防犯カメラ映像の取り扱いは、カメラの設置方法だけでなく、実際にどのような目的で利用しているか、誰からどのような理由で開示・提供を求められたかによって判断が変わります。
特に、複数店舗を運営している企業では、問題が起きるたびに個別対応するよりも、防犯カメラ映像の閲覧や保存、開示、外部提供について共通のルールをあらかじめ整備しておくことで、現場の負担や判断のばらつきを抑えやすくなるでしょう。
私たちNexill&Partners(ネクシル&パートナーズ)グループでは、企業法務を取り扱う弁護士が、防犯カメラを含む個人情報の取り扱いに関する社内ルールの整備から、実際に開示・提供を求められた際の対応まで支援しています。自社でどこまでルールを定めればよいか分からない場合や、具体的な対応に迷っている場合は、お気軽にご相談ください。

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